冷房等需要の減少を検討
前回のシミュレーションで概ね基準をクリア出来ましたが、冷房等需要(以下、冷房)が基準の22kWhギリギリのため、不測の事態に備えてもう少し余裕を見ておきたいところです。
この冷房を減少させるには、現状は暖房需要(以下、暖房)に余裕があるので、南面の窓を小さくすることが有効ですが、ここでは窓を高性能な商品に変更する案を検討しました。
暖房が基準に足りていない時は特に有効で、海外製の窓はガラス性能が良くて、日本のガラスに比べて「日射取得量が増加し、熱損失量が減少する」という特徴があります。
これは、窓面積を減らしても同様の日射取得熱収支が得やすいとも言えますが、今回はこの特徴を踏まえながら、全ての窓を高性能木製窓Smartwin(スマートウィン、佐藤の窓)に変更してみました。
内容としては、窓面積(正確には、ガラス面積)が17.46㎡→12.76㎡と4.7㎡減少することになりましたが、日射取得熱収支は1170kWhプラスで前回と同等の値となりました。
結果は、下表の通り。
冷房がこの値なら大よそOKかと思いますが、今回の検討で暖房に関してはだいぶ余裕が出てきました。
暖房に余裕があるので「断熱材を薄く出来る?」と思われそうですが、基本的に断熱性能を悪くすると冷房も悪くなります。
よって、今回のこのギャップを埋める手法としては、窓に関わる部分を調整していくのが良いかと思います。
DesignPHでShadingを検討
ここで、ここまでの検討結果についてどう思っているのか、改めてクライアントである依田さんに確認したところ、実はもっと軒の深い家にしたい、というご希望を頂きました。
元々、現在の一般的な住宅に比べ軒の出のあるデザインでしたが、日射取得量が気になっていて少し遠慮していた、とのこと。
現状として、暖房に余裕があり冷房が厳しいので、軒が深くなることは有利側に働きます。
そこで、依田さんの希望するデザインとした場合に暖房と冷房がどのように変化するのか、DesignPHを使ってShading要素をシミュレーションすることにしました。
ちなみにDesignPHとは、、
SketchUpという3Dモデリングソフトのプラグインでパッシブハウスに必要な性能をシミュレーション出来るソフトです。
入力次第では外皮面積なども算出することが出来ますが、ここではShading要素のみのシミュレーションに使います。
解析結果である「Shading factor」は窓単体で確認しますが、「Shading mask Diagram」として隣地建物等による影の影響を視覚的に把握出来ますので、とても分かりやすいです。
参考までに、、
今回は、夏の日射遮蔽措置のための格子戸枠による影響と深くした軒の出の影響が考えられましたが、DesignPHを使用していなかった頃は、どちらかの影響しかPHPPには入力出来ませんでした。
しかし、DesignPHを利用すると2つの要素を同時に解析出来ますので、より現実に近いシミュレーションが可能になりました。
この後は、解析結果を参考にデザインや仕様を決定していく作業に入ります。