column038 定常結露計算を考える

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結露とは

日常的に目にすることで言うと、冷えたグラスなどに起こっている結露を「表面結露」と言います。
建築的には、断熱性が悪く表面温度が他面より低下する外壁の隅角部や窓ガラスなどで起こります。

また、結露には外壁内部で生じる「内部結露」という現象もあり、状況が把握出来ないこちらの方が建築的には被害が大きくなり易いでしょうか。

そもそも何故「結露」が起こるかと言うと、空気が冷やされることが原因です。
夏で言えば、外気が冷房の効いた屋内の温度に触れることで、冬で言えば、温まった屋内空気が冷えた外気に触れることで結露が起こります。

では、空気が冷やされると結露が起こるのは何故かと言うと、空気は温度により保有出来る水蒸気量が異なりますが、温度が高いほど多くの水蒸気を保有出来ることに理由があります。

見方を変えると、温度が下がるほど保有出来る水蒸気量が減る為、とある温湿度の空気が冷やされると保有出来る水蒸気が限界に達し(飽和状態と言う)水蒸気として保有出来なくなり、一部の水蒸気が凝縮して結露となります。

その結露となる温度を元の空気の「露点温度」と言いますが、「絶対湿度」という指標も加えると多少分かり易いです。

例えば、「温度20℃・相対湿度50%」の空気は絶対湿度「0.007kg/kg」ですが、この絶対湿度で相対湿度が100%になる温度は「9.2℃」です。

要は「0.007kg/kg」の水蒸気しか保有出来ない「9.2℃」が、「温度20℃・相対湿度50%」の空気の露点温度となります。

これを分かり易い状況で説明しますと、冬などで「気温20℃・相対湿度50%」の居室で窓ガラスが外気により9.2℃以下に冷やされていると、結露を発生することになります。

如何でしょうか、多少は結露のメカニズムがご理解頂けたでしょうか。

ちなみに、相対湿度とは、現在の気温に対する飽和水蒸気分圧と現在の水蒸気分圧の割合で、絶対湿度とは、乾燥空気1kg当たりに含まれている水蒸気量のことを言います。

 

防露性能を考える

建築で使用される材料の多くは、内部に空隙を有する多孔質体であり、一般的に吸湿性を有しています。

要は、材料内を湿気が移動することになりますが、熱と同様に水蒸気圧の高い方から低い方へ移動します。
尚、グラスウールなどの吸湿性のない材料内では、結露が生じない限り水蒸気の拡散現象として移動します。

また、材料内の湿気の移動には、1)水蒸気の形で行われる場合、2)水分の形で行われる場合、3)水蒸気と水分が共存する場合がありますが、定常計算の場合は1)を対象とし、2)3)は非定常計算として扱われます。

さて、先にも書いた通り、結露は空気が冷やされることで起こります。
逆に、結露を防ぐには(水蒸気量の減少も有効ですが)、空気が冷やされないようにする必要があります。

先の窓ガラスで言えば、ガラスの表面温度が9.2℃以下にならないように、ガラスをLow-Eペアガラスやトリプルガラスにすることで、空気が冷やされることを防げます。

では、内部結露を防ぐ場合はどうでしょうか。

技術的なことでは、壁体内に水蒸気が侵入しないように「防湿シート」をきちんと施工したり、透過してしまった水蒸気を外気に素早く逃がすように透湿抵抗の低い材料を使うなどがあります。
しかし、それでも結露の有無が正確には分かりませんので、計算により防露性能を確認する必要があります。

主な計算方法には「定常計算」と「非定常計算」の2つがありますが、通常は非定常計算に比べて定常計算の方が安全側(この場合は結露が発生しやすい)の計算結果となります。

昨今、様々な形の高性能住宅が出てきていると思いますが、それに伴い外皮構成が複雑になっています。
そういったことを踏まえても、技術的な対応だけでなく計算により安全性を確認することが重要だと考えます。

定常計算では、主に「一次元」「二次元」モデルがありますが、弊社では二次元定常計算が可能なシミュレーションソフトにより物件毎に防露性能を確認しております。

次回は、ある外皮構成での防露性能をシミュレーションにより確認してみたいと思います。

(続き:column039 定常結露計算で比較する

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