パッシブハウス

column050 パッシブハウスのデメリット

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パッシブハウスとは

パッシブハウスとは、環境先進国ドイツにあるパッシブハウス研究所で提唱している省エネ住宅の建築コンセプトです。

パッシブハウスは認定されて初めてパッシブハウスとなりますが、エネルギーコストと建築コストのバランスを考えて作られた厳しい基準をクリアする必要があります。

しかし、その基準を満たしてパッシブハウスとなれば、エネルギー効率の良い、快適で、経済的で、そして環境にやさしい建築にすることが可能となり、得られるメリットは多いと思います。

私としては、パッシブハウスを知れば知るほど、お勧めすべきコンセプトとの思いが強くなるのですが、「何も欠点・デメリットがないのは不自然だ」とか「騙されているのでは?」などと思われているエンドユーザーの声もちらほら耳にします。

また、設計に関わるプロの方からは「そこまでやる必要はない」とパッシブハウスの中身をきちんと理解もしていないのに言われることがあり、今までになかった良いモノ・コトをご提案することの難しさを感じています。

そこで、パッシブハウスのことをより知ってもらうために、あえて「欠点・デメリットがないのか?」を考えてみたいと思います。

 

イニシャルコストが高い

「イニシャルコストが高い」は良く言われることですが、高いとは何かと比較しそう評価されることの裏返しです。

では、その比較対象がどういった住宅かといえば、省エネ4等級程度の住宅になろうかと思いますが、そもそも、必要な性能を満たしていない(省エネ4等級程度の性能しかなく、暑くて寒い)住宅と比較されて、イニシャルコストが高いとの評価は少しおかしくないでしょうか。

ちなみに、パッシブハウスの基準を満たすためにパッシブハウスが原則としていることは、「断熱化、気密化、熱橋対策、高性能な窓の選択、換気による熱回収」の5つです。

これらはどれも不要な熱ロスをなくし、なるべく省エネで快適さを得るために必要なことだと私は理解しております。
しかし、日本で建築される多くの住宅には、これらの性能等が備わっていないのが現状です。

本来は、どの住宅にも備わっていないといけないこれらの基本的な性能等を満たした住宅の中でイニシャルコストが高い等の議論があるべきで、その土壌にない現状でパッシブハウスが高いという評価は見直されるべきです。

尚、念のため書かせて頂きますが、、
省エネ4等級程度の住宅と比較してパッシブハウスのイニシャルコストが高いことは、生活していく上で必要なランニングコストも踏まえれば、様々なシミュレーションによって30年程度でペイ出来ることが分かっていますので、費用対効果で比較しても決して高いとは言い切れません。

また、30年間エネルギーを使いながら快適でない家で暮らす方が良いのか、省エネで快適に過ごせるパッシブハウスの方が良いのか、という数字のみでは評価出来ない利点・メリットがあることを忘れてはいけないと思います。

 

里帰りや旅行が楽しくない

実家への里帰りや家族旅行が楽しくないは、ウソのようでホントに良く聞くお話しです。

一つ断っておきますと、私自身はパッシブハウスに住んでいないので、実体験ではありません。
しかし、パッシブハウスに住んでいる建築のプロ仲間や、弊社が設計した高性能住宅にお住まいの方から同じような話しをお聞きしますので、ほぼ間違いないと認識しています。

里帰りや旅行が楽しくない大きな理由は、実家やホテルが快適ではない、という屋内環境が原因です。

多くの皆さんが経験・体感してご存知のことだと思いますが、昔の家の冬は寒いのが当たり前です。
例えば、コタツで暖を取っているので、トイレに立つと寒い廊下を通り、寒いトイレで用を足します。
何をするにも、寒いこと無しではあり得ません。

これが、普段は何をするにも快適に過ごせている方には不快で仕方ないようで、「里帰りで実家に泊まる予定だったけど、結局は帰ることにした」はお聞きする話の1つです。

旅行が楽しくない、も基本は同じです。
ホテルで体感するエアコンで無理やり温度を保っているために起こる暴力的な風や過乾燥な空気感が不快なので、帰る時の感想として「やっぱり家が良いよね?」って皆さんなるようです。

結果、おじいちゃんおばあちゃんが孫に会えないとか、大きく捉えれば観光業界に影響が出るかもしれませんので、パッシブハウスにはしない方が良いかもしれません。笑

 

パッシブハウスのデメリットを考える

その他、欠点・デメリットでお話に上がることとして、基礎断熱のシロアリ被害が心配とか、ダクト式熱交換換気システムはダクトの掃除が心配などの話がありますが、そもそも家づくりにおいて、どんな性能の家を建築したところで良いトコ悪いトコは存在しており、パッシブハウスのみに欠点・デメリットが存在するわけではありません。

パッシブハウスのデメリットと言われる方法や機能を選択しないで起こることは、同じ快適性を得るためには増エネになることが殆どで、逆にパッシブハウスの考え方によって解決出来ることがたくさんあります。

「如何に省エネで快適性を得るか?」というコンセプトに真摯に立ち向かうことは、ダクトの汚れを心配してダクト式熱交換換気を選択しないことではなく、ダクト式を選択してもダクトを清潔に保てるように創意工夫することだと思います。

パッシブハウスのデメリットを把握しておくことは悪いことではないですが、暮らしに必要な様々なコト・モノをエンドユーザーと設計者でディスカッションしながら、パッシブハウスの考え方に沿って「如何に省エネで快適性を得るか?」を目指して設計することが大切なことだと思いますが、如何でしょうか。

 

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