パッシブハウス

column051 パッシブハウスを知る-冷房編と検証

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Column047の続きです。

 

冷房基準とは

以前のおさらいも含まれますが、冷房基準の概要を書かせて頂きます。

冷房基準にも暖房基準と同じように、、
1) 冷房需要及び除湿需要:年間の冷房及び除湿用エネルギー消費量(kWh/㎡・a)
2) ピーク負荷(冷房負荷):最も条件が悪い時に必要な冷房能力(W/㎡)
の2つの基準が用意されています。

但し、暖房基準とは違いピーク負荷のみの条件はなく、「1)」もしくは「1)+2)」のいずれかの条件をクリアする必要がありまして、その計算上の屋内環境設定は「室温25℃」と「絶対湿度:12g/kg」となっています。

冷房需要及び除湿需要(以下、冷房需要等)の計算に必要な値は(基本的には)暖房需要と同じですが、冬に有利側に働いた要素は負荷として作用します。
例えば、室内取得熱(日射取得熱と内部発生熱)は、冷房需要を増加させる(屋内を温めてしまう)要素に変わります。

これが、前回書いたパッシブハウスの難しいところで、同じ要素でも季節によって有利不利が違うので、如何にバランスを取れるか?がパッシブハウスを目指す上で肝になると思います。

 

PHPP冷房期ワークシート

冷房期ワークシートは全部で5種類ありますが、外皮構成や面積等の基本性能は暖房期ワークシートで入力済なので、入力すべきワークシートは「SummVent」と「Cooling units」の2種類のみになります。

SummVent」は、夏期の換気による冷房需要と除湿需要の影響を評価するシートです。
主な入力としては、「Ventilation」シートで得られる(機械換気の)換気回数を第1種(又は2種)と第3種に分けて入力する「ベース換気」と夜間の窓開けによる換気を評価する「夜間換気」があります。

夜間換気もきちんと評価出来ることは、パッシブハウスの素晴らしい部分の1つかと思います。
尚、夏期に湿度が高くなる地域では、換気量が多いほど潜熱需要が増える傾向にありますが、夜間に温度が下がる地域ではその効果は絶大です。

夜間換気はどの窓でも使用可能なわけではなく、2つの窓の位置関係やそれぞれの窓の開き方や大きさで評価されるため、計画段階できちんとシミュレーションしておくことが重要となります。

Cooling units」は、冷房(顕熱)と除湿に必要なエネルギー需要が設置する機器で賄えるかを評価するシートです。
設備機器は大は小を兼ねる的に思われるかもしれませんが、適切な容量の設備計画でないと「除湿能力が足りない」などの結果となるため要注意です。

 

結果と検証

暖房期同様に入力の結果は、「Verification」ワークシートで確認が出来ます。

現状は、暖房基準及び冷房基準共にクリアしていない結果となっております。
ここから、どうすれば基準をクリア出来るのか?を少し検証してみましょう。

暖房と冷房の双方がクリア出来てない時は、基本的には断熱性能が足りていませんので、断熱材を厚く又は性能を良くするか、窓をより高性能な商品に変更します。
ここでは、壁の付加断熱を高性能グラスウールt105からネオマフォームt80に変更してみましょう。

 

暖房需要が「14.59kWh/㎡」となり基準をクリアしましたが、冷房基準はまだ足りないようです。
ここから更に断熱性能を上げる方法もありますが、ここでは冷房需要のみを減少させる方法を選択します。

冷房需要を減少させるには、日射遮蔽をきちんと行うことが重要です。
ここまでの入力では、庇等で日射遮蔽を行ってきましたが、外付けブラインドやアウターシェードを選択してより効果の高い方法で入力してみましょう。

 

冷房需要等が「22.13 kWh/㎡」となり基準をクリア(※小数点以下は四捨でOK)しました。

今回は元々の性能バランスが良かったので、比較的簡単に基準クリアまで導くことが出来ましたが、東京以西では冷房基準を如何にクリアさせるのか?が重要になると思います。

パッシブハウスに限らずこのような検証を行うことは、温熱性能の見える化を可能にします。

昔ながらの感覚によるパッシブデザインではなく、きちんとシミュレーションにより定量化されたパッシブデザインによる設計を目指すことが重要だと思います。

次回は、「一次エネルギー需要基準」を解説したいと思います。

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