パッシブハウス

column036 パッシブハウスを知る-基準編

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パッシブハウスの基準とは

前回も書きましたが、パッシブハウスの認定をとるためには、次の基準を満たしている必要があります。

・暖冷房のためのエネルギー基準:①年間需要が15kWh/㎡・a以下 若しくは ②ピーク負荷が10W/㎡以下 ※冷房においては、地域で若干数値が異なります。

・再生可能一次エネルギー需要(PER、PHI法による): すべての家庭用用途(暖房、温水および家庭用電気)に使用される総エネルギーが60 kWh/㎡以下 ※クラシックの場合

・気密性(漏気回数)の基準:気密測定(加圧及び減圧の両方)により、漏気回数が0.6回/h(50パスカル時)以下の気密性が満たれた建物

・冬季および夏季のすべての居住地域で、25℃を超える年間の平均気温の10%以下で、快適な温熱環境を満たす必要があります。

上記を満たしているかを確認する為に、PHPP(passive house planning package)というエクセルソフトを用いてエネルギー計算をしますが、「暖房基準」「冷房基準」「一次エネルギー基準」というカテゴリー(ワークシート)に分かれています。

 

暖房基準とは

ここでは細かい説明を省きますが、暖房基準は暖房する為のエネルギー需要の上限を決めています。

暖房需要は「年間の暖房用エネルギー消費量(kWh/㎡・a)」のことであり、ピーク負荷(PHPP上は暖房負荷)は「最も条件が悪い時に必要な暖房能力(W/㎡)」のことです。

それらは、どちらかをクリアすれば良いことになっていますが、クリアするための計算条件が決められており「その地域の気象条件で、室温を20℃に保つために必要なエネルギー量」を計算することになっています。

要は、昔から日本の住まい方の美徳としてある「我慢するから省エネ」的なことが通用しません。
しっかりとした快適な屋内環境を維持しつつ、尚且つ、それらを省エネに実現する必要があります。

これは見方を変えれば、詳しいロジックが分からないエンドユーザーの方でも「パッシブハウスであれば、快適で健康的な暮らしが省エネで実現出来る」と判断出来るので、とても分かり易い指標だと思います。

その他、暖房基準を計算するために、外皮性能(Ua値)は当然計算しますが、日射取得量がどのぐらいあるのか?をとても正確にシミュレーションします。

どのぐらい正確か?というと、周辺環境にある住宅や樹木などの影の影響も検討の1つですが、窓の取付け位置によって外装材などで出来る影の影響も1つ1つ丁寧に検討します。

こうすることによって、計算結果をより現実に近い状況にすることが出来ます。

 

冷房基準とは

基本的には暖房の冷房版ですが、目指すべき値が冷房需要は20kWh/㎡・a前後(地域によって異なります)、ピーク負荷が10W/㎡となっております。

また、屋内の計算条件については「室温25℃、絶対湿度12g/kg(以下、g)」となります。
冷房の場合、暖房にはなかった湿度による条件があり、高湿度による不快感も考慮されています。

ちなみに、絶対湿度12gは室温25℃時の相対湿度60%を意味しており、カビや細菌の影響が出て来る相対湿度75%ぐらいに対するリスク回避にもつながっています。

日本人の場合は、絶対湿度13~14g(27℃、60%前後)辺りでも快適感は維持されると思いますが、日本のクールビズなどの政策は温度のみに言及されることが多いだけに、湿度にも着目している所がパッシブハウスの特徴です。

その他、パッシブハウスは窓を開けない、などのイメージがあるかもしれませんが、夜間の窓開けによるシミュレーションも可能であり、夜間に温度・湿度が下がる地域では有効な方法です。

 

一次エネルギー基準とは

現在、パッシブハウスには3つの基準(クラシック→プラス→プレミアムの順でクラスが上がる)があり、PER基準値と再生可能エネルギーの発電量によってクラスが違います。

ここでは詳細を省きますが、建物仕様によっては創エネをしなくてもクラシック基準になりますし、PER基準値で60kWh/㎡・aをオーバーしても創エネによってカバーすることも可能です。

基本的には、暖房や冷房をどんな設備のどんなエネルギーで行うのか、給湯は?照明は?など1つ1つ入力します。
衣類乾燥についても、乾燥機を使用するのか、外で干すのか?も入力する欄があり、ここでもパッシブハウスのきめ細かさを感じることが出来ます。

 

次回について

今回は、基準の概要を説明させて頂きました。

次回からは各基準においてPHPPの各計算ワークシートをご説明しながら、もう少し内容を掘り下げて行き、自身としてもパッシブハウスの理解を深められればと思います。

 

★今後の予定
・パッシブハウスを知る-暖房編(column047
・パッシブハウスを知る-冷房編(column051

 

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