パッシブハウス

column032 パッシブハウスを知る-初めに

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パッシブハウスとは

パッシブハウスとは、環境先進国ドイツにあるパッシブハウス研究所で提唱している家づくりです。
パッシブハウスには、エネルギーコストと建築コストのバランスを考えて厳しい基準がありますが、簡単にその性能を説明すると「十分な断熱および気密をすることで、換気風量程度のエネルギーで屋内の熱的快適性を達成できる建物」をいいます。パッシブハウスにすることで、エネルギー効率の良い、快適で、経済的で、そして環境にやさしい建築にすることが可能となります。

これはよく勘違いされることですが、パッシブハウスは特定の施工・材料を強要するでもブランド名でもなく、誰にでも開かれている建築コンセプトです。

 

パッシブハウスの利点

パッシブハウスは、エネルギー効率の良い、快適で、経済的で、環境にやさしい建築コンセプトですが、それは熱的快適性が受動的手段(断熱・熱回収・日射取得・内部発熱)によって最大限に達成されることにつながります。
ここで、その利点を簡潔にご説明します。

省エネ性:パッシブハウスは太陽、内部発熱、熱回収を効率的に利用するため、寒い冬でも従来の暖房システムは不要です。また、暑い季節でも、きちんとした日射遮蔽をすることで少ないエネルギーで快適に涼しくすることが可能です。

快適性:パッシブハウスは、高性能な窓と断熱性の高い外壁や屋根、床で構成される建物の外皮にすることで、極端な屋外温度に直面しても、内部の表面温度が室内気温と小さい温度差になり、高いレベルの快適さを提供することにつながります。

 

パッシブハウスの基準とは

パッシブハウスとみなされる建物(パッシブハウス認定建物)は、次の基準を満たしている必要があります。

・暖冷房のためのエネルギー基準:①各年間需要が15kWh/㎡・a以下 若しくは ②各ピーク負荷が10W/㎡以下 ※冷房においては、地域で若干数値が異なります。

・再生可能一次エネルギー需要(PER、PHI法による): 家庭用用途(暖房、温水および家庭用電気)に使用される総エネルギーが60 kWh/㎡以下 ※クラシック基準の場合

・気密性(漏気回数)の基準:(50パスカルの加圧及び減圧の両方の気密測定により)漏気回数が0.6回/h以下

・冬季および夏季のすべての居住地域で、25℃を超える年間の平均気温の10%以下で、快適な温熱環境を満たすこと

 

これら基準クリアの確認には、パッシブハウスプランニングパッケージ(以下、PHPP)というエクセルソフトを用いてエネルギー収支計算をします。

 

パッシブハウスの原則

上記の基準はすべて、下記の「パッシブハウスの5原則」によって実現されています。

1)しっかりとした断熱
しっかりと断熱されている必要があります。中央ヨーロッパの寒冷地気候では、U値0.15W /(m²K)が適用されます。日本の場合も、多くのパッシブハウスがU値0.25W/(m²K)以下の断熱性能を有しています。

2)隙間をなくす
建物の隙間を極力少なくすることで、勝手に出入りする熱の移動を減らします。日本ではC値での評価が一般的ですが、パッシブハウスでは漏気回数(50pa加減圧で0.6回/h以下)で評価します。

3)熱橋をなくす
すべてのエッジやコーナー、接続部および貫通部は、サーマルブリッジを避けることができるように、避けることができない部分は可能な限り最小になるように計画および施工します。特に、パッシブハウスレベルの性能になると、窓の取付位置や方法でも数字が大きく変わるなど、エネルギー収支計算に大きく影響します。

4)高性能な窓
きちんと断熱された枠やアルゴンまたはクリプトンで満たされた低放射率のガラスを備えている窓が必要です。窓U値で0.80 W /(m²K)以下、日射取得率で0.5以上が望ましいです。

5)換気による熱回収
効率的な熱回収換気が重要であり、良好な室内空気質と省エネルギーを可能にします。パッシブハウスでは、排気からの熱の75%以上が新鮮な空気に伝達される熱交換効率が求められます。

 

PHPPを知る

ここまでの解説で、何となくパッシブハウスのことがイメージ出来たと思います。しかし、実際にどういったことに留意して設計・施工したら良いのかは、分かりにくい部分もあります。そこで、パッシブハウスの検討に必要なPHPPというソフトを紐解くことで、そのような部分を少しでも解消出来ればと考えています。

そこで、これをcolumnシリーズ「パッシブハウスを知る」として、PHPPのことを私なりに紐解きながらパッシブハウスをより身近なモノとすると共に、私自身としてもパッシブハウスの理解を深められればと思います。

 

★今後の予定
・パッシブハウスを知る-基準編(column036
・パッシブハウスを知る-暖房編(column047

 

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