column052 第1種換気と第3種換気を比較する

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換気とは

住宅を始めとする建築物には換気設備がついていると思いますが、その目的は「室内空気を清浄な外気と入れ替える」ことです。

また、換気を必要とする大きな理由は「人が活動しているから」に他なりませんが、基本的に空気を汚染させるのは「熱や水蒸気、二酸化炭素、臭い」等を発生させる人です。

そういったことでは、暮らしには換気が必要不可欠だと言えますが、建築基準法でも、窓開けによる「自然換気」とシックハウス対策の為の「機械換気」でそれぞれの基準が存在しています。

シックハウス対策の為に機械換気の設置が義務付けられてからは、窓開けによる自然換気の存在意義が薄れたようにも思いますが、求めていることが違うとの解釈で両方の基準を満たす必要があります。

ここまでのように、建築物には自然換気と機械換気の双方が求められることになりますが、今回は住宅に関する機械換気にフォーカスして話を進めたいと思います。

 

第1種換気と第3種換気

機械換気には、給気口(清浄な外気を取り入れる)と排気口(汚染された室内空気を排出する)が存在することになりますが、どの部分を機械で行うのかによって換気種別を決めています。

第1種換気とは、給気口と排気口の双方を機械で行う「強制給排気」のシステムです。
ダクト式熱交換換気システムになることが多いと思いますが、確実な換気量の確保や熱交換型と組み合わせることで冷暖房負荷を低減出来るなどの利点がありますが、他の換気方式に比べて大きな動力が必要なことや設備費が高額などの欠点もあります。

第3種換気とは、排気を機械で行う「強制排気」のシステムです。
給気口は各室に自然給気口を設けているだけなので、第1種換気に比べて電気代や設備費が安価という利点がありますが、給気口からの冷気問題や冬に温度差圧力によって給気量のバランスが悪くなるなどの欠点があります。

このように、どちらの換気方式にも利点と欠点が存在しておりますが、弊社では快適性に重きをおいて「ダクト式熱交換型第1種換気システム」を採用することが多いです。

しかし、地域や建物規模、間取りなどで条件は変わりますので、弊社でも第3種換気を採用するケースはあります。

そこで、ダクト式熱交換型第1種換気システム(以下、熱交式)と第3種換気システム(以下、第3種)を採用したそれぞれの住宅を色々な視点で比較することで、私の考え方をご紹介出来ればと思います。

 

House-TAで比較する

この住宅は東京都板橋区の案件で、狭小地に建ついわゆる狭小住宅です。
☆詳しくはこちら→House-TA(東京都)

1フロア1室程度の間取りとなる在来木造3階建ての住宅になりますが、、
・ダクト(経路を含む)や換気装置そのものが屋内空間にかなり影響する
・建物規模感に対して設備過多なイメージ
などが頭の中にあった為、熱交式ではなく第3種で計画することにしました。

ただ、計画する中で少しでも快適性を上げたいとの思いがあったので、一部にダクトレス熱交換換気システムも検討しましたが、最終的には「デマンド型第3種換気システム」を採用しました。

デマンド型換気とは、適切な換気量をセンサーによって自動でコントロールする「需要制御型換気システム」のことです。

センサーには、二酸化炭素や湿度、VOCなどの種類がありますが、基本的には人が活動することで発生する空気汚染物質の濃度を測っています。

本計画で採用した商品はマツナガの湿度感応型デマンド換気システムですが、二酸化炭素センサー式に比べて機械が少なくて済むシンプルなシステムになっています。

さて、(間取り等の条件はさておき)本計画を熱交式にした場合と本計画案で、どのぐらい暖冷房負荷が違うのかを比較したいと思います。

比較はPHPPでの冷暖房需要と光熱費にしますが、その他の条件は以下です。
・気象データ:東京
・夏の室温と湿度:室温25度、絶対湿度12g/kg
・冬の室温:20度
・換気回数:0.5回/h

第3種を熱交式にすると、暖房需要に関しては10kWh/㎡以上削減出来ました。
これを断熱性能でカバーするとなるとそれなりの性能UPになると思いますので、悪い選択肢ではありません。

しかし、この規模でこの暖房需要の違いですと、年間光熱費で4000円程度の違いしかありません。
30年で12万円程度の違いなので、熱交式にする費用対効果のメリットは少ないです。

また、デマンド換気システムは光熱費の削減も見込める(シミュレーション上は加味していない)ので、費用対効果はもっと少ないかもしれません。

実際は、エアコンなどの空調設備が減らせる可能性があるので、費用に関しては一概には言えませんが、これらの検証を元に本計画は第3種とすることにしました。

 

House-KRHで比較する

この住宅は長野県北佐久郡軽井沢町の案件で、パッシブハウス認定を目指した断熱性能を有しています。
☆詳しくはこちら→House-KRH(長野県)

パッシブハウス認定を目指す場合は、基本的には熱交式が必須なので第3種にすることはないですが、比較としては「熱交換する(本計画)」と「熱交換しない」というシミュレーションをしたいと思います。

比較の条件は先と同じですが、気象データは「前橋」となります。

熱交式から第3種に変更すると、暖房需要が23kWh/㎡程度増加しました。
軽井沢は、標高が1000m程度もある寒冷地なので、熱交換による恩恵が絶大です。

年間光熱費では8万円の違いがあり、30年だと240万円です。
空調換気システムとしての費用対効果が高いことはもちろん、断熱性能で先の暖房需要を賄うことも無理(無謀)なので、ここは素直に熱交換による換気システムを採用すべき計画です。

 

まとめ

地域や建物規模が全く違う案件を比べてみましたが、如何でしたでしょうか。

東京・埼玉等の都市部に建つ30坪程度の住宅ですと、費用対効果としては真ん中ぐらいの結果になると思いますが、(冒頭にも書きましたが)快適性も考慮して考えるならば、第一選択肢は「ダクト式熱交換型第1種換気システム」かなと思います。

とは言え、ここに書いたこと以外にも住宅建築で検討すべきことは多岐に渡りますので、様々な要素をふまえながらシミュレーションを行い、そのお客様にあった設備計画を検討したいと思います。

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