column043 断熱と日射熱を考える

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高気密高断熱住宅とは

高気密高断熱住宅と聞いても、実際はどの程度の性能があるのか分かりません。
何故か?それは、高気密高断熱の指標が存在しないからです。

ですから、省エネ4等級程度で高気密高断熱住宅と謳う会社もあれば、HEAT20・G2レベルでそう謳う会社もあります。

指標がない(別の言い方をすると、気密性や断熱性に関する法律が存在しない)今現在は、どちらの性能もある意味で「高」であると言えるかもしれませんが、その住宅に快適性が伴っているのか?という別の考え方を取り入れると少し見方が変わります。

また、省エネ4等級にしろ、HEAT20・G2レベルにしろ、示していることは主に断熱性のことです。
Ua値(6地域)としては0.87と0.46となりますが、外皮(壁や天井、床、開口部など)の熱の通し易さは約1/2に減少する性能の違いがあります。

しかし、これだけでは何がどう良くなったのか分からないので、一次エネルギー消費量や冷暖房需要(負荷)などの計算を行い、基本的にはエネルギー(簡単に書くと光熱費)で比較することになります。

要は、高気密高断熱の性能を評価するためには、必ず何か指標や考え方と合わせて検討する必要があります。

 

断熱と日射熱

断熱(性)とは読んで字のごとく、熱の伝わりを断つ(性能の)ことです。
夏で言えば、外からの熱を入りにくくすることであり、冬であれば、中からの熱が出にくくなることです。

日射とは、太陽からの熱エネルギーのことです。
日射熱取得とは、日射による熱エネルギーを建物内に(基本は窓から)取り入れることで、日射熱遮蔽は、熱エネルギーを取り入れないことです。

ここで断熱と日射熱の関係を季節ごとに考えてみます。

冬の場合は、暖房するためのエネルギーが少なくて済むので、日射熱が多い方が良いですね。
また、断熱性が高いと取り入れた日射熱が外に出にくいので、夜になっても温かさが持続することに寄与します。

では夏の場合はどうでしょうか。
断熱性が良いことは熱が出にくいことなので、日射熱を取り入れてしまうと屋内を快適温度にするために膨大なエネルギーを使うことになります。
従って、日射熱が入らないように日射遮蔽することが重要になって来ます。

ここで、夏は取り入れた熱が出にくいので高断熱はダメだ!なんてことをいう方が昔はおりましたが、それは本末転倒な考え方。
断熱性は一度建物を造ると変えることが大変な作業になりますが、遮蔽に関しては窓の外でブラインドやすだれ、緑のカーテンなどで状況に応じて対応することが可能です。

よって、固定すべきは断熱で、夏と冬で使い分けるのが日射熱ということになると思います。

 

断熱と日射熱を比較する

ここまでで断熱と日射熱のことが少し整理出来たと思いますので、ここではその効果の違いを比較してみたいと思います。

比較対象とする建物概要を下記とします。
・木造2階建て 延床面積28坪(総2階) ほぼ真南向き
・比較的南面の窓が大きく、日射熱取得に有利な計画

また、比較する指標は、、
1) 一次エネルギー消費量/暖房・冷房設備 ※計算根拠は、省エネ基準で部分間歇空調
2) 年間暖房・冷房需要 ※計算根拠は、パッシブハウス基準

ここでベースとなる性能(6地域の省エネ4等級基準)を再確認します。
・外皮平均熱貫流率(Ua値):0.87(W/㎡・K)
・冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値):2.8

まずは、ベースの基準値になるように仕様を調整しましたが、結果下記で基準を満たしました。
・断熱/天井:HGWt140、壁:HGWt90、床:スタイロフォームt45
・窓/アルミ窓(ペアガラスA6)

とりあえずの感想は、こんな仕様で省エネ4等級になるという驚きです。
分かっていたとは言え、久しぶりに日本の基準がヤバいことを認識しました。

この結果を元に、公的な評価で使われるWEB上の「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」で一次エネルギー消費量やPHPP(パッシブハウス認定のための計算ソフト)で年間冷暖房需要を計算します。
・一次エネルギー消費量/暖房設備:23512+冷房設備:9526=33038(MJ)
・PHPP/年間暖房需要:78.99、年間冷房需要:47.69(kWh/㎡・a)※芯寸法計算のため、実際はもっと悪いと思います。

ちょっと長くなってきたので、比較は次回に持ち越します。

(続き:column44 断熱と日射熱を比較する

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