column049 豊かな暮らしを考える

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豊かな暮らしって

「豊かさ」は日々の暮らしに必要なことの1つだと思いますが、そのイメージは人それぞれだと思います。

分かりやすい例えでは、都会での暮らしにそれを感じる方がいれば、野山のある田舎暮らしにそれを見出す方もいらっしゃいます。
ただ、いずれの生活スタイルにも「住まい(家)」という拠点があるかと思います。

パッシブデザインで工夫された省エネで快適な住まいの設計を得意としている弊社にご相談頂くお客様は、温熱的な快適さを求めてお越し頂くことが多いです。

これも豊かさを得るために重要なことですが、もう1つお客様が望んでいることがあります。

それは、家の広さです。
「○○坪の家を考えています。」という希望を頂くことが多いですが、大抵は私が思っている広さより大きいです。

確かに、お客様にとって広さは重要なことの1つだと思いますが、本来は「どういった暮らし方を望んでいるのか?」という希望が優先順位としては先ではないでしょうか。

 

家の広さは豊かさにはつながらない

暮らし方に見合った広さを考えるのは、我々住宅設計のプロの仕事です。

お客様はご自身の経験などから漠然と広さを予想されていると思いますが、住まいの大小の感じ方は実は広さそのものではなく、空間のつながりや視線の抜けなどの設計的工夫で大きく変わります。

また、温熱的に快適な温かい家は一般的な寒い家とは違い、使わない部屋や空間が無く家全体を効率よく使うことが出来るため、お持ちのイメージよりは小さくなっても問題のないことが多いです。

もちろん、必要以上に小さい家にする必要はありませんが、私自身は家が大きいことのメリットは殆どないと思っています。

反対にデメリットはたくさんありまして、まずは建築コストが掛かります。
当たり前ですが、大きいほど多くのコストが掛かります。

また、住宅は造ったら終わりではなく、長く良い住まいを維持する為には適切なメンテナンスが必要ですが、大きくなるほど費用が掛かることにつながります。

それと日々のことで言えば、冷暖房等の光熱費が掛かりますし、掃除も広い方が大変です。

 

家づくりは暮らしを考えるきっかけ

弊社では、お客様と多くの意見交換をしながら、お客様のための住まいを設計します。

私が、意見交換を行う中で重要視していることは、些細なことでも「それが必要な理由は何ですか?」と質問し、そのことについて改めて考えて頂くことです。

この作業は時間が掛かることではありますが、お客様が漠然と思っていたことが明確になります。
それは、実は不要なことや本当に必要だったことに気付くきっかけとなりますが、1つ例えを書かせて頂きます。

先程の広さのお話で、家が広いコトの利点があるとすれば「モノがたくさん入ること」です。

「収納がたくさん欲しい」とのご要望も多いリクエストの1つですが、これも考えることが断捨離のきっかけにつながれば、家が広くないといけない理由にならない可能性があります。

 

小さく暮らす豊かさ

タイニーハウスって、お聞きになったことはあるでしょうか。
直訳すると「小さい家」という意味らしいですが、2000年頃からアメリカでムーブメントが始まったそうです。

自然災害やサブプライムローン問題等が要因でそんなムーブメントが起きたようですが、大量に消費する暮らしから本当に必要なことに資源を使う暮らしへの変化のきっかけにもなっています。

また、志賀直哉の随筆(住宅に就いて)にもある、、
「必要なものだけを単純化して、美しいところを備えていれば、居心地の良い家になる」
もそうですが、私が目指す省エネで快適な住まいの先には、そういった「小さく暮らす」という豊かさがあると思っています。

家づくりは、住まい手の「夢や希望を叶える場」ではあると思います。

しかし、弊社での家づくりが「人生経験の延長線上では想像出来なかった豊かな暮らしを発見する場」となるならば、住宅設計者としてこんなに嬉しいことはありません。

 

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