column042 ローコスト住宅を考える

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ローコスト住宅という言葉の弊害

家づくりを目指しているエンドユーザー(以下、ユーザー)が建築のプロに相談の出来るWEBサイトなどでよく見かける内容に、「なるべくコストを掛けずに建てたい」とか「〇〇な希望だと予算はどのぐらい必要でしょうか」などがあります。

家づくりには大きなコストが掛かりますし、多くの皆様が初めての経験なので良く分からないであろうことも理解出来ますので、当然の質問なのかと思います。

そんなやり取りの中で「ローコスト住宅」という言葉をよく見かけます。
一般的な意味合いでは「安い価格で購入できる住宅」といった感じでしょうか。

確かに、同じ仕様(各部位で使う材料のこと)ならばより安い方が良いですね。
例えば、グラスウールでも各メーカーによって価格が違うので、同じ性能ならば安いメーカーの方が良いです。

そういった同程度な性能なのに、材料の選別や造り方を工夫してコストを抑えることをバリューエンジニアリング(以下、VE)と言います。
顧客満足度を最大限にする、といった言い方でも良いかもしれません。

きっと、ユーザーが希望しているローコスト住宅とは、「きちんとVEされた住宅」のことを言っていると思いますが、世の中で一般的になっているローコスト住宅は、単に「低性能住宅」になっている可能性があります。

例えば、木造住宅の柱ですが、昔は桧や杉など日本の山々で取れる木材を使うのが当たり前でしたが、ローコスト住宅として売っている会社で使っている材料は「ホワイトウッド集成材」という輸入材が多いと思います。

このホワイトウッド集成材は、集成材による強みや価格が安いなどの利点があります。
しかし、耐水性に乏しかったりシロアリに弱かったりと欠点も合わせ持ちます。

日本での家づくりにおいて、耐水性や耐犠牲は必要な要素だと考えられるので、これはVEされた住宅ではなく低性能住宅になったということが言えるのではないでしょうか。

 

きちんとVEされた住宅とは

家づくりにおいて、低性能住宅ではなくきちんとVEされた住宅(以下、VE住宅)とするにはどうしたら良いのでしょうか。

家づくりにおいての最大のVEは、プランニング(又は基本計画)とデザインの工夫です。
分かりやすく書くと、なるべく家を小さくすることです。

これを簡潔にご説明します。
例えばユーザーの皆様は、今までの生活体験から間取りや大きさの希望を設計事務所なり工務店に伝えると思いますが、(ちょっと厳しい書き方になりますが)それは建築の素人であるユーザーが考えたことに過ぎません。

しかし、プロである建築士の工夫により広い間取りと同じような使い勝手や広がりを持たせることが出来れば、それはVEにつながることではないでしょうか。

 

次に考えることは、住宅性能をどの程度にするか、ということです。

基本的に考えるべき性能は、「耐久性」「耐震性」「温熱性」ということになりますが、ここでも単に性能を落としただけではVE住宅ではなく低性能住宅です。

よって、同じ性能を保ちながら材料や造り方を工夫するわけですが、ここでの難題が各々の要素が実は複雑に絡み合っているということです。

例えば、耐震性において、最近では筋交ではなく構造用面材を使うことが多いですが、壁倍率というもので強度が決まっています。
構造用合板でもハイベストウッドでも「2.5倍」となっていればその強度は同じになりますが、透湿性という面で考えるとハイベストウッドの方が優れているので、壁内結露を考えるとハイベストウッドを使いたくなります。

しかし、ハイベストウッドの方が構造用合板より高価なため、VEを考えると悩ましいところです。

 

VE住宅を実現するために

ハウスメーカーで提供しているローコスト住宅は、私から見るとVE住宅ではなく低性能住宅になっていると思います。
そう思う理由は、ハウスメーカーとしてきちんとVEされた住宅であれば、いくつもの商品が出てこないと思うから。

当たり前ですが、安いものに良いものはありません。
本来あるべき姿の住宅を造ればそれなりの金額が掛かりますが、重要なことはきちんとVEされているか?です。

先に書いたことはVE検討の一部でしかないですが、これらの問題を解決するために必要なことは、建築士の知識と経験とイマジネーションです。

設計事務所又は工務店など住宅建築の依頼先を選ぶ際は、どのぐらいの価格で住宅を設計・施工してくれるのか?(いわゆるローコスト住宅なのか?)ではなく、ユーザーの予算に見合った規模(大きさ・間取りのこと)でプラン計画してくれて、必要な性能を持ったVE住宅を提供してくれるのか、だと思います。

もしも、ユーザーとして自分の予算に見合わない規模の住宅を建築したならば、出来た住宅が本来望んだローコスト住宅ではなく低性能住宅になっている可能性がありますので、自分の希望を精査しておくこともVE住宅にとって重要な要素の1つだと思います。

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