column040 快適室温を考える

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最低室温は何℃が妥当なのか

日本の家は「寒い」ということが常識(当たり前)となっていますが、日本人は「快適に過ごす・暮らす」ということより「多少寒くても我慢する」という価値観が優先されることが影響していると思います。

また、建物を建築する際に最低室温に対する法律がないことも影響して、寒い家を造らないことや改善するという意識も余りないように思います。

ここで、諸外国における最低室温の定義をみると、HHSRS(Housing Health & Safety Rating System)という住宅における健康と安全を評価するシステムがあるイギリスを始め、ドイツやアメリカなどの欧米諸国では最低室温に対する法律が存在し、推奨室温を18℃以上としていることが多いです。

HHSRSでは、健康リスク低減の観点から高齢者に低体温症があらわれる温度を9℃以下に定義していますが、日本の省エネルギー基準であるH25年基準は「冬期間の最低体感温度が、概ね8℃を下回らない」程度の断熱性能しかないので、この基準では住まい手の健康が守れないことになります。

更に、WHO(世界保健機関)が昨年提言した「住宅と健康のガイドライン」でも、、

Indoor housing temperatures should be high enough to protect residents from the harmful health effects of cold. For countries with temperate or colder climates, 18℃ has been proposed as a safe and well-balanced indoor temperature to protect the health of general populations during cold seasons.

としており、室温18℃は住宅性能におけるデッドラインだと認識する必要があるかと思います。

 

快適室温とは

健康リスクを考えると、WHOの提言通り(冬期間は)室温を18℃以上に保つことが重要だと思います。
では、快適な室温としてはどの程度を考えれば良いのでしょうか。

オフィスなどは快適に仕事が行えるように、労働安全衛生法やビル管法によって室温が定められており
・室温が10度以下の場合は、暖房する等適当な温度調整の措置を講ずる
・空調設備は、室温を17℃以上28℃以下及び相対湿度を40%以上70%以下になるように努める
と定義しております。

また各学校の教室などは、学校環境衛生基準により
・室温は17℃以上、28℃以下であることが望ましい
・相対湿度は30%以上、80%以下であることが望ましい
とのこと。

尚、学校環境衛生基準はH30年に一部改正されましたが、それまでの室温は「夏は30度以下、冬は10℃以上であることが望ましい」とされていたようです。
さすがに「冬の10℃はないな」と思いますので、改正されて良かったと思います。

ここまでのように、公共施設では何らかの基準や目標が定められておりますが、住宅に関してはどうでしょうか。
一番身近なもので言うと環境省が取り組む「CoolBiz」がそれに当たると思います。

実はこれ、オフィス空間に限った取り組みではないことはご存知でしょうか。
更に、世の中に浸透していないと思いますが、CoolBizには冬版の「WarmBiz」があります。
それぞれの室温を28℃と20℃に設定しております。

これは、省エネの観点から過度な空調をしないようにするための取り組みですが、快適性もふまえていると思いますので、室温の目安が示されていると考えて良さそうです。
(参考までに → https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/ )

それと1つ重要なこととして、冷暖房負荷の計算を行う場合は、室温を設定する必要があります。
私が使用するソフト(PHPP)では、快適性を考慮して「冬期間 20℃」「夏期間 25℃」でシミュレーションをしています。

ここまでを踏まえると、冬期間に目指すべき快適室温は20℃のような気がしてきます。
しかし、快適とはそんなピンポイントなことでしょうか。

当たり前のことですが、本来求めていた快適とは室温(空気温度)だけで決まることではないので、快適室温は何℃だと言い切れるものでもありません。

しかし、冷暖房負荷を計算するためには室温を設定しないといけませんし、先のWarmBizにしても多くの方に分かりやすく理解頂くために室温を設定しないといけません。

温熱環境を探求していくと、この何かを分かりやすく設定するために決めた室温を必ず守らなければいけないことのように勘違いしている方が多いように感じます。

では、住宅を設計する上で、室温はどのように考えれば良いのか?
次回のColumnでは、室温を手掛かりに「快適とは何か」を少しひも解いてみたいと思います。

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