column033 採光と照明を考える

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光とは

光は電磁波の一種で、人間の眼が感じることの出来る波長380~780nmの放射を「光」と呼んでいます。
また、その波長域を「可視域」と呼びますが、さらに各波長域に分けるとそれぞれ異なった色を見せてくれます。

ちなみに、可視域外の短い波長を紫外線、長い波長を赤外線と呼びます。
紫外線には殺菌効果など、赤外線には熱効果などの特徴があります。

日常生活中の光は、特定の波長域だけでなく、可視域全体に分布していますが、その分布の状態によって光の色味が決まります。
例えば、白熱電球がオレンジ色に見えるのは、長波長域(黄色・橙・赤)の分布が多いためです。

 

必要な明るさとは

我々が建物内で活動するためには、自然であれ人工であれ、ある程度の光(明るさ)を採り入れる必要があります。
その明るさは活動の種類によっても強弱を考える必要があり、JISで作業ごとの照度基準(目安)が決まっています。
例えば、勉強や読書をする場所は750lX程度の明るさが望ましいですが、家族団らんの場あれば200lx程度でも問題はありません。

また、その明るさがあれば良いということはありません。
無駄に明るい場所・時間を減らすことも重要で、必要な明るさを全般照明のみで満たすよりは局部照明と併用(タスク・アンビエント照明)することで、省エネに必要な明るさを満たすことが出来ます。

 

採光(昼光照明)を考える

太陽からの放射エネルギーの多い波長域がちょうど人の目が感じる範囲にあたりますが、そんな太陽光に合わせて進化してきた人にとっては、生理的・心理的に少ない負担で明るさを得ることが出来る手法が「採光」です。

そんな採光のポイントの1つは、均一性です。
太陽光は照度換算すると133700lxと非常に明るい光源ですが、不確実で輝度対比が大きすぎるのでグレア(まぶしさのこと)が生じやすいという欠点があります。

例えば、南面窓付近の床のみが明るくなると、北面(奥側)との明暗差が出てしまい余計に暗く感じることがあります。
それは不必要に照明を点けることにもつながり、省エネの観点からすると採光の効果を損なってしまいます。

均一性を上げるためには、一般的に同じ大きさの窓なら横長窓より縦長窓が良いですし、横長窓でも低い位置より高い位置にある方が有利です。
頂側窓(勾配天井の上部などの鉛直面につく窓)は、通風や自然換気上も有効ですが、通常の横長窓に比べ天井や奥の壁を明るく出来るので均一性が上がります。

その他、障子やロールスクリーンなどで日照調整しながら拡散性を上げることも有効かと思います。

 

照明を考える

照明は、昼間の昼光利用での明るさ不足を補い、夜間の光環境を良好に保つことを目的としていますが、家庭で消費されるエネルギーの10%程度を占めていることを考えると、省エネを考慮することも非常に重要です。

照明を検討する上で必要なことは、先にも書きましたが、その空間にまた作業に必要な照度を把握することです。また、明るさの感じ方は年齢や視覚能力によっても個人差があるため、そういったことも考慮する必要があります。

それに、照明で考えることは単に「明るさ」のことだけではありません。例えば、明暗のメリハリがあることで奥行感を出すことも可能ですし、暗めにすることで空間に雰囲気を出すことも出来ますので、デザインとしての検討も重要です。

私が設計する場合、空間利用のバリエーションや壁や天井をなるべくシンプルに見せるために、リビングを含む居室は間接照明(建築化照明)のみで構成し、あとは必要に応じてスタンドなりを置いてもらう提案をすることが多いです。

これは、建築士である私が照明デザインとして作り込んでも良いのですが、多少の空白を残すことで住まい手が暮らしながら「空間を作って行くことの楽しさ」みたいなものを体験してもらえると良いなあ、という思いがあるためです。

建築を考える場合、採光にしろ照明にしろ、それのみで完結することは少なく、いろいろなことが多角的に関係していますので、広い視野をもって検討する必要があることはいうまでもありません。

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