Big Seminar2019

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Big Seminar2019

今年のBig Seminarは、ドイツの木造建築賞でも実績多数の建築家であるフロリアン・ナグラー氏とアルセッド建築研究所(以下、アルセッド)の武田光史氏を招いてのセミナーでした。

ナグラー氏は、昨年講演しましたヘルマン・カウフマン氏からも厚い信頼を得ているパートナー建築家で、ミュンヘン工科大学で教鞭をとっている方とのこと。
カウフマン氏同様に、住宅~中大規模建築までの木造建築を多く手掛けており、その実例を基にこれまでの取り組みを解説頂きましたが、今年は日本での取り組みである武田氏のお話しの方が私にとっては興味が出るものでした。

武田氏は、国内の木材活用で地域活性化だけでなく、まちづくりの観点から地域に根ざした木造建築を多く手掛けておられる方のようです。今回は、十津川村の復興住宅と屋久島の木造庁舎の事例をご紹介頂きましたが、この十津川村と屋久島という場所が、私の興味をすごく惹きました。

十津川村と言えば、PHJ代表の森さんが手がけた木灯館があるゆかりの場所です。私は未だ木灯館には行ったことがありませんが、土壁などの自然素材や地元の十津川杉をふんだんに使ったパッシブハウス基準の建物です。また、木灯館の建設後に台風被害があったと聞いたことがあったので、まさにこの復興住宅と時期も重なります。

屋久島は、一度は縄文杉を見に行きたいなと思う場所ですが、縄文杉は種別で言うと屋久杉です。
今回のプロジェクトは屋久島の杉を使った木造庁舎の建築ですが、屋久杉を使うわけではありません。

少しややこしい話しですが、屋久杉とは樹齢1000年以上のものを指しており、建築等に使うことは出来ません。建築などに使える杉は、戦後に植林された杉で「地杉」と呼び、屋久杉と分けて呼んでいます。

地杉は、本州などの杉より耐久性があるのが特徴で、防蟻性が高いことは九州大学における検証試験で証明されているようです。
私は、この話しをチャネルオリジナル社長の家山氏からお聞きしていたことや実際に地杉のウッドデッキを住宅で使ったことがあり、妙な親近感を覚えました。

 

サスティナブル建築

アルセッドは、様々なモデル住宅を手掛けているそうですが、通常すぐに設計に着手することはしないそうで、まずは地元の方とワークショップをするそうです。
そうすることで、その土地のことを知り、何がその土地の必要なのかを把握した上で設計出来ますし、建築後もその土地の材料や技術でメンテナンスが行えるようにすることも、きちんと設計に反映出来ると思います。
これらは、聞けば当たり前のことかもしれませんが、それがなかなか出来ないのもまた事実です。

今回ご紹介頂いた「屋久島の木造庁舎プロジェクト」もそういったことを行いながら、6年の歳月をかけてようやく先日完成したそうです。
樹状トラスなどをふんだんに使った素晴らしい木造中規模建築で、一度観に行ってみたいと思わせる内容でした。

カウフマン氏やナグラー氏の話からも分かるように、世界でも省エネやサスティナブルな側面から木造建築がフォーカスされています。
私も、ベースは木造建築を扱う建築士で、サスティナブルな建築を心掛けておりますので、非常に感銘を覚えるセミナーでした。

 

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