PHJ近畿支部 2019第2回勉強会

投稿者:

世界基準の窓を考えるセミナー

省エネ4等級程度の住宅からの熱損失量を考えた場合、冬では60%、夏では75%近い熱量が開口部から流入出しています。
よって、手っ取り早く熱損失量を減らすには、開口部の強化がとても効果的です。

しかし、屋内環境の快適性を考えるならば、外皮の断熱性能も軽視出来ないので、結局は開口部を含む外皮全体の断熱性能を強化することが、省エネと快適の両面から必要になります。

外皮を強化する場合、まずは壁や屋根、床の断熱性を上げます。
これは、材料の違いはあるにせよ、断熱材をどんどん厚くすればいいので、考えた方としては比較的シンプルです。

次に、窓性能を上げることになりますが、これは「ただ厚くすれば良い」という代物ではありません。
したがって部材ごとに考えることになりますが、ここではガラスと枠について順番に考えてみます。

まずは、面積比率の大きいガラスの強化を考えます。
今ではLow-Eガラスは一般的になっており、YKKapのAPW430などはダブルLow-Eトリプルガラスを採用しており、ここ数年でガラス性能は格段に上がりました。
また、ガラスについては、熱損失の他に日射取得についても考慮しないといけませんので、ガラス選定には冷暖房負荷の計算は必須だと思います。

次に、枠の強化を考えます。
枠については、熱損失としてだけでなく耐久性にも関わる結露を起こしやすい部位にもなるので、多くの既存住宅で採用されているアルミ製ではなく、樹脂製や木製などの熱を通しにくい材料を選択する必要があります。

さて、先ほど枠は結露を起こしやすいと書きましたが、要は温度が下がって熱損失していることの裏返しでもあり、建物が高性能化していくと、枠からの熱損失がとても大きくなってきます。

パッシブハウスレベルの性能になると、窓の取り付け位置や方法で熱損失量が違うので、とてもシビアな設計が要求されます。

 

高性能木製サッシ Smartwin

今回のセミナーは、独Smartwin社代表のフランツ・フロインドーファー氏の初来日に合わせて、世界最先端を行く高性能木製サッシに関する講演でした。

フロインドーファー氏は、パッシブハウスのためのアルミクラッド木製窓の断面設計をヨーロッパ市場でリードしている方で、あくまでも窓枠の断面形状をシンプルにすることで、工場での加工工程を単純化、窓枠の外壁との収まりを考慮することで、インストールψ値をマイナスの値に持ち込み、窓回りの熱損失を抑えることに命を懸けている、とのこと。
(PHJ HP参照)

ちなみに、ψ値(プサイ値と読みます)とは線熱貫流率のことで、いわゆるヒートブリッジ(熱橋)のことです。
先の言葉にはインストールがついているので、窓枠と躯体の取り付けに対するヒートブリッジを指しています。

先ほども書きましたが、パッシブハウスレベルの性能になると、窓の取り付け位置や方法での熱損失の違いがとても性能に影響するので、このインストールψ値を抑えることがとても重要になってきます。

要は、このSmartwin社の木製窓は、その部分の熱損失を極力減らすための工夫がなされている、ということ。

今回、ヨーロッパはもちろんのこと、同じアジア諸国である韓国や中国よりも遅れている日本国内に高性能な窓をなるべく安く提供出来るように、とPHJ代表・森氏の全面協力のもと、賛助会員である四国の大丸工業さんがSmartwin社の窓を製造・販売することになりました。

正直な話、この窓を使うにはそれなりの高性能住宅でないと意味がないですし、使う側に知識や経験が必要かと思います。
製造・販売する大丸工業さんも、高い意識がある方々に使ってほしいとの思いがあり、まずはPHJ会員のみの販売になるそうです。

弊社は、現在進行中の案件でSmartwinの採用を検討しています。
フロインドーファー氏の講演をお聞きし、この窓への思いを知ってしまったので、さらに採用への意欲は上がっています。

現在、大丸工業さん側の状況が整っていないこともあり、私も設計の枠を超えて大丸工業さんに協力することになると思います。
道のりは大変だと思いますが、関わる方の思いが多くの方に届くように、私も出来ることをやりたい、そんな思いで設計に取り組んでおります。

関連記事