愛知・岐阜を巡る建築の旅

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PHJ仲間と愛知・岐阜を巡る

最近、仕事でパッシブハウス・ジャパン(以下、PHJ)のサブリーダーの方々と連絡を取る機会が増えています。
そんな日々のやり取りの中で、岐阜にある県立森林文化アカデミーに行ってみたい、という話しになりました。

岐阜県立森林文化アカデミーとは、森林や木材に関わる様々な分野で活躍する人材を育成することを目指して設立された2年制の専門学校で、住宅医協会関係者の私の知人も多く通っています。

今回、PHJ東海支部サブリーダーの鎌倉さんにアテンドして頂き、森林文化アカデミーの見学だけでなく愛知・岐阜にあるパッシブハウス(以下、PH)の見学をすることが出来ました。

 

芥見南山パッシブハウスを見る

旅の始まりは、鳳建設さん設計施工の芥見南山PHです。

日本ではあまりない「パッシブハウス・Plus」基準の認定建物で、オフグリット(電力会社と契約しないで、太陽光発電などにより自給自足で電力を賄うこと)を目指したモデル住宅です。

パッシブハウスの良いところは、造り方を限定しないことです。
なので、各建物で断熱材を始めとする材料が違うことが殆どなので、「何でその材料を選定したのか?」の質問が飛び交います。

まあ、断熱材や仕上げのことを聞くのは通常でもあることですが、PHJメンバーは「空調システムはどうなってる?」とか「熱交換換気は顕熱?全熱?」など、空調換気システムのことをやたら聞きます。

これは、他の見学会ではあまりない現象で、要はパッシブハウスクラスの性能になると、高性能化により極力減らした冷暖房負荷をどんな空調換気システムで賄うのか、が非常に重要になります。

ここでは内容を割愛致しますが、現場に赴き設計者の声を生で聞くことがとても大事だと改めて思います。

 

岐阜県立森林文化アカデミーに行く

鎌倉さんにお調べ頂いたところ、7/1にドイツ在住の環境コンサルタント・村上敦氏の講演があることを知り、その日を目標にスケジュールを組みました。

村上さんの講演は、以前どこかでお聞きしたことがある程度であまり機会がなく、今回お聞きすることが出来てとても良い機会になりました。

今回は、「地域社会が元気になる」がお題の講演でしたが、気になったお話しを抜粋して書いておきます。
・地域に元気があるとは、お金が回っている状態である。
・人口減少が決まっている地域で、仕事を作っても意味がない。
・地方交付税不交付団体は、都道府県で言えば東京都だけ。市区町村で言えば、78団体ある。
・市区町村の地方交付税不交付団体の多くは、発電所や空港などエネルギーと交通が絡んでいる。
・軽井沢と箱根は、観光と宿泊で不交付団体になっている珍しい地域である。
・ドイツは毎年2.1%ずつの省エネ向上を目指しているが、日本のクールビスは省エネ性向上の持続性がない。
・エネルギー価格は、毎年2~3%上がる。

地域が元気になるために、地域の文化や伝統を活かした産業で活性化する、みたいな話しを良く聞きますが、何かに付加価値を付けることはとても大変でセンスも必要です。
しかし、エネルギーはすでに需要が見込まれており、付加価値をつける必要がありません。

長くなるので多くは書きませんが、村上さんの話しを私なりにまとめると、地域社会が元気になる仕組みにエネルギーは欠かせない、ということです。

パッシブハウスに関わっていると、エネルギー問題は外せない課題であり、この部分を意識しているか否かで設計そのものが変わると思っています。
多くの設計者に意識して欲しい問題だと思います。

 

豊田パッシブハウス(申請中)を見る

豊田PHは、今回アテンド頂いた鎌倉さん設計のPHです。

お話しを聞くと、この計画に関わったことがパッシブハウスを知るきっかけだったそうで、知ることと設計が同時に起こった、設計者としてはとても羨ましい関わり方をしています。
まあ、その分大変なことも多かったと思いますが、それを感じさせないとても考えられた設計をしておりました。

いろいろ考えるとこの形状に行きつく方が多いと思いますが、PHの王道(良く見る形)とも言うべき「南側の2階階高を下げ、その高さから片流れで屋根を掛け、北側を高くするスタイルでした。
プランは、南側に配したLDKを吹抜けとしており、これも王道的スタイル。

PHの場合は、家中何処でもほぼ温湿度が変わらないので、1室空間にしたり大きな吹抜けを作ったりすることが、快適性を維持しながら計画出来ます。
大きな空間はどなたでも憧れますで、そんな空間が快適に実現出来るPHはいいなあ、と見学することで改めて実感します。

省エネで快適を得る設計方法はパッシブハウスだけとは言いませんが、私の回りにも食わず嫌いで敬遠する方が多いです。
知らない、ということは只々もったいないと思います。

様々な設計手法を知って、それらを取捨選択することも建築士の仕事かと思います。

 

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