column048 寒くない家・温かい家を考える

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何故、寒い家が出来るのか

皆さんが家づくりを始める時に思うことの1つに「寒くない家・温かい家に住みたい」があると思います。

これは、裏を返せば「日本の家が寒い」ということに他なりませんが、平成も終わり令和が始まって数年経つ現在でも、冬に寒い家がたくさん建てられているのが現状だと思います。

ずっと昔から言われているこの寒い家問題、いっこうに解決しないのは何故でしょうか。

理由の1つとして思い浮かぶのが、家づくりのプロもユーザーも家は寒いもんだと諦めているために、家づくりにおいて「温かさ」という項目が重要な位置づけにならず、寒い家が出来てしまうということ。

しかし、そんな寒い家も暖房さえすれば温かくなる可能性もあるわけで、家づくりだけの問題ではない気もします。

結論を書けば、日本人の場合は我慢が美徳とされエネルギーをたくさん使って暖房することを躊躇する傾向にありますので、結果、寒い家が寒い家のままということがあるかと思います。

要は、外気の影響を容易に受けてしまうほど断熱性能が低いし、エネルギーを使って温かい家にするということもしないので、寒い家という認識が定着してしまうのかと思います。

 

省エネ基準の弊害か

それと根本的な理由として、今の日本には「家を温かくしないといけない」という法律がありません。
近いもので言えば、省エネ基準という国の推奨基準はありますが、これも温かい家にすることを目指した基準ではなく、あくまで省エネに対する基準です。

では、省エネ基準を満たしても意味がないのか?というと意味はあって、実際は基準を満たすためには断熱性能を上げないといけない(基準で言えば、Ua値を下げる)ので、結果として温かい家に近づく可能性があります。

そうであるならば、地球温暖化問題が叫ばれてからそれなりの年月が経ち、その対策としての省エネを多くの皆さんが認識していると思われる現在であれば、きちんと「省エネ化=断熱化」の方程式が成立して寒い家が減少してもおかしくはありません。

しかし冒頭にも書いた通り、現在も省エネ基準すら守らない住宅も普通に建てられているので、寒い家が減りません。

何故か?
私が思うに、我慢という省エネ方法を選択してきた日本人には、国が推奨する省エネがあまり響いておらずピンと来ていない可能性があるかと思っています。

要は、元々省エネに暮らしていたので国が進める省エネには興味を持てないために「省エネ化=断熱化」の恩恵を受けられず、結果として家も温かくならない、そんな悪循環にハマっているのかもしれません。

※設計事務所や工務店に知識や技術がないために「温かい家とならない問題」も存在しますが、今回は住まいづくりに関わる方の意識やこの問題を取り巻く環境にフォーカスしています。

 

省エネを考える前に温かい家を目指す

社会情勢として省エネやエコが重要なことは確かなので、それらを足掛かりとして家づくりを進めていくことも必要ですが、本来重要なことは快適な暮らしが出来る家であることです。

快適な暮らしには、冬に暖かい家である必要がありますが、インターネット等で出てくる省エネ住宅やエコハウスでは断熱性能が高いのか良く分かりません。

高気密高断熱住宅は一見よさそうですが、何をもって「高断熱」と捉えるのかその基準がないので、実際はイメージ的な表現でしかありません。

そんな海のものとも山のものとも分からない情報を基に暖かい家を目指さないといけない住まい手は大変だと思いますが、暖かい家を目指すならすべきことはシンプルで、まずはきちんと断熱させること(以下、断熱化)です。

断熱化する理由は、熱を逃げにくくするなど省エネ的な説明が多いかと思いますが、暖かい家を目指すための断熱としては壁や天井など(以下、外皮)の表面温度を上げるために行います。

ここでは細かい説明は割愛しますが、木造住宅であれば「充填断熱+付加断熱」という断熱構成が外皮の表面温度をあげるためには必須だと思います。
特に付加断熱は、柱や梁等の木部熱橋(断熱材と比べると熱が逃げやすいので、厳密言うと木部は熱橋になります)を減らす役割を果たすので、薄くても良いので採用すべきです。

断熱化とは、家づくりのベースをつくる作業です。
これは、おそばを食べる時にお湯を沸かすことと同じで、家づくりをするならば家を断熱化することから始めます。

 

断熱化なしに快適を求めることの弊害

ここからの内容は断熱化の話を複雑にしてしまうかもしれませんが、、
温かい家は温かいと感じる家で、それはある意味で快適と感じる家になると思いますが、快適と感じることは温かさだけでもたらされるわけではありません。

突き詰めれば、単純に「快適と感じる家」を目指すことが断熱化することにならない可能性もありますが、それは一般解ではないと思います。

要は、断熱化以外で快適な家にする方法を選択したいということは、温かいと感じさせるために「おそばを食べる時にお湯でゆでる以外の方法を考えること」と同じです。

可能性がないわけではありませんが、一般解ではないためにきちんとした知識と技術をもって取り組まないと、結局は寒い家になってしまうと思います。

従って、温かい家を求めるならば、まずは外皮を断熱化して欲しいと思います。

 

まとめ

温かい家に必要な断熱化とは「充填断熱+付加断熱」で外皮を構成することです。
その断熱材の厚みを壁で言えば、、
・充填断熱は、柱間なので105mmとか120mmが基本です。
・付加断熱は、最低は20mm(材料の最低厚みです)ですが、ある程度までは厚ければ厚いほど効果があります。

Ua値ではどのぐらい?も気になるとは思いますが、それは日射取得や日射遮蔽などパッシブデザイン要素もふまえて、最終的にはエネルギーシミュレーションによって決めることと思っていますので、ここではあえて書きません。

ただ、1つ書けることは、、
プロであるならばご自身でシミュレーションして妥当な性能を見定めて頂きたいと思います。
住まい手としては、エネルギーシミュレーションしてくれる設計事務所や工務店に依頼するようにしましょう。

断熱化された冬に温かい家は、省エネに快適を得るための第1歩です。

 

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