column053 施主主導型の家づくり

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施主主導型とは

最近は、SNS等で一般の方の投稿をよく見かけます。
特に温熱性能については、とても勉強している様子も感じられますが、所々で間違った情報が流れていることもあり、理解度については様々といった感じでしょうか。

とはいえ、私なんかよりよっぽど発信力があるプロ施主と言われる方々により、情報が届きにくかった一般の方に色々な情報が届くことは良いことだと思います。
ちなみに施主とは、家づくりをされる方(私から見ればクライアント)のことを言います。

 

さて、家づくりには多少なりとも勉強が必要です。

これは、設計事務所や工務店(以下、設計事務所等)を決める際の根拠をきちんと持つうえでも重要なことで、言い方を変えれば、勉強もしないで設計事務所等の良し悪しは判断が出来ません。

また、先にも挙げた温熱性能については、各会社の知識レベルや目指している性能にかなりの差がありますので、良し悪しを判断するには施主側の知識は不可欠です。

こうして、どの会社に家づくりを依頼するかの検討が始まりますが、実際に始めて見るとどの会社が良いのか、簡単に判断出来ることではありません。
また、温熱性能を始め家づくりの勉強をしてみて分かることがあります。

それは、自分が目指したい性能や暮らし方を叶えてくれそうな設計事務所等が、今の世の中でそれほど多くはないという事実です。
勉強をして、家づくりを知れば知るほど、数がどんどん少なくなります。

運よく、建築地の近くにスーパー工務店と言われる会社があれば最高にラッキーですが、そうでない場合は経験や知識はなさそうだけど、誠実そうでやる気のある設計事務所等に託すことになります。

この時の施主(皆様)は、自分が調べて設計事務所や工務店に指示すれば何とかなるかな、という思考だと思いますが、これが施主主導型の始まりです。

 

施主主導型の問題点

施主主導型の問題点を考える前に、まずは施主主導型で成功するケースを考えてみます。

結論から書くと、始まりこそ設計事務所や工務店より施主の知識レベルが高かったが、施主の希望を叶えるべく本気でその問題と向き合い、設計事務所等が施主以上の知識を得た場合です。

設計事務所や工務店の理解力が上がるメリットは、施主では気が付いていなかった住宅建築に関わる全てのことと施主のご要望の問題点を見つけて、事前にそれを解決出来る点です。

一般的なこととして、設計事務所や工務店が施主と打合せをしている時に、住宅建築に関わる全てのことをご説明するわけではなく、ご要望をお聞きしながら問題点を検証して、専門的なことはなるべく除いて施主に分かりやすく結果を伝えています。

この「問題点を事前に解決する」ことは、本来の家づくりでは当たり前のことですが、施主主導型で起こる問題点は、この当たり前が行われない点です。

施主は、勉強して得た知識からベストだと思われたご希望を設計事務所等に伝えますが、全ての物事には前提条件があります。
要は、依頼した設計事務所や工務店の家づくりがその前提条件を満たしていないとすると、あなたがベストだと思ったことがそうであるとは限りません。

設計事務所である私は、その前提条件を施主が整理することには限界があると思っています。
さすがにそれは、設計事務所や工務店であるプロ側の仕事です。

その他にも、あれやこれやと施主では可否の判断が出来ないことを理由に希望を叶えてくれないなど、施主主導型にはいくつものハードルがあるかなと思います。

 

温熱コンサルティングを依頼する

この施主主導型が起こりえるのは温熱の世界だけだと思いますが、それは何故か?
それは、温熱設計がきちんと出来る専門家がいない(若しくは、とても少ない)からだと思います。

木造建築に必要な主要素は、耐久性・耐震性・温熱性だと私は思っていますが、耐震性の場合は構造設計者という専門家がいますし、住宅レベルの話であれば耐震等級3を満たしていれば、大きく間違うことはありません。

耐久性で考えることは、主に雨漏りや壁体内結露などが原因の腐朽と蟻害ですが、壁体内結露は温熱性にも関わっている項目ですし、雨漏りはその会社の姿勢が大きく関係(きちんとした家づくりをしている方々は雨漏りしたくないという意識をもっています)しますので、耐震性や温熱性への対応がよければ問題はないと判断しても良いとは思います。

そこで、温熱性のことになりますが、先にも書いた専門家がいないことともう一つに、考え方に幅があり多岐に渡ることも問題の1つかと思います。

温熱性に関わる言葉を並べても「高気密高断熱」「エコハウス」「パッシブデザイン」「パッシブハウス」など色々な表現方法がありますし、本来はそれぞれに内容は違います。

よって、省エネで暮らせるエコハウスを造ってくれると思って依頼したのに、エコな材料(自然素材など)を採用しているだけで、エネルギー的には全くエコではないエコハウスだった、なんてこともあり得ます。

では、そんな複雑な状況下で、自分たちの目指す家づくりをしたい施主はどうしたら良いのか?
選択肢の1つとして、温熱設計の専門家にプロジェクトのコンサルティングを依頼することが挙げられると思います。

温熱設計がきちんと出来ている会社の多くは、パッシブハウスジャパンか新住協という団体に加入しています。

HPなどで謳っていない場合でも、設計事務所であればご相談には乗ってくれると思いますので、上記などの団体会員一覧で良さそうな会社がないかを調査して、温熱設計若しくは温熱コンサルティングを依頼してみては如何でしょうか。

金額的な面で設計事務所に設計依頼することを躊躇される場合でも、温熱コンサルティングであればそこまで費用は掛からないと思いますし、掛けても良い費用だと思います。

 

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