column026 高性能住宅のコスト

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省エネ基準義務化の延期

先月行われた「社会資本整備審議会 建築分科会 第17回建築環境部会」にて、2020年に予定していた300㎡以下の小規模住宅に対する省エネ基準義務化が延期(中止?)されることが報告されました。

その理由はいくつかあるのですが、1つが「省エネ基準適合への追加コストを光熱費の低減により回収すると仮定した場合の期間が35年と比較的長期間である」というものです。

それは、適合義務化は効率性の低い投資を強いる面があり、慎重に考える必要があるとのことらしいですが、その根拠の試算例を見るとびっくりします。

例えば、外壁の断熱材は、従来が「グラスウール(以下、GW)10K・35mm」で適合が「GW16K・85mm」となっていますが、そもそもGW10K・35mmはもう市場にありません。

開口部についても、従来が「アルミサッシ/シングルガラス」となっておりますが、これも新築住宅で使っている会社はほぼないと思います。(ビルとはでは未だに使っていますが。。)

これは、コスト増をアピールしたいがために無理やり出した数字としか言いようがありませんが、そもそもの話として、元々の住宅においての断熱性能の低さが無視されていることが、話しをややこしくしている原因ではないでしょうか。

 

住宅の本来あるべき性能を考える

例えば、、、ギアが2速までしかない自動車が一般的な世の中で、5速まである自動車の方が快適でエネルギー効率がよい、という議論があったとします。
それは「5速まであった方がいいのは分かるけど、それって本当に快適で効率がいいの?」と疑問に思う世の中です。

きっとほとんどの方が「えっ、何言ってんの?」と思うはず。
それは「5速がいらない」という驚きではなく「有って当たり前じゃん」という驚きです。
これは、経験上知りうることであり、そこに疑う余地はありません。

住宅業界の高性能住宅(ここでは、HEAT20・G2レベルとします)化は、この例え話と同じだと思っています。
要は、今までの家は本来必要な家の性能が担保されていない住宅なので、きちんと断熱された快適で健康な住宅を造りませんか、という話しです。

言い方を変えれば、2速から5速にすることによる費用耐効果を考えることがそもそもナンセンスで、そもそも5速は必要な性能ではないですか?ということです。

自動車業界では、2速から5速にすることによる費用対効果を検証した結果今があると思いますが、住宅建築業界では性能を数字で評価するということを怠って来たため、今はその価値観にありません。

これは、モノづくりの過程が違うため比較すべきことではないかもしれませんが、「評価することを怠ってきた」という事実を我々業界関係者は真摯に受け止める必要があると思います。

今現在、住宅の温熱性能を評価出来るソフトがたくさんあります。
更に、性能だけでなくコストにおいても「どのぐらいの性能の住宅を何年使うと費用対効果が良い」などがシミュレーション出来ますが、35年以上の長期使用を望むのであれば、高性能住宅の費用対効果が良いことは検証結果として出ています。

この国では未だルール化も出来ないことですが、高性能住宅の重要性はすでに多くの方が認識していると思います。

確かに、従来の住宅に比べイニシャルコスト(建築時に掛かる費用)は上がりますし、住宅は高額であるがゆえに費用対効果に目が行きがちですが、本来は必要な性能が備わっていることが大前提であるはずです。

私は、新しい価値観で家づくりをする時代が来たと感じていますが、皆さんは如何でしょうか。

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