column044 断熱と日射熱を比較する

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ベースとなる建物性能

column043の続きです。

始めに、前回導き出した建物仕様及び計算結果を下記します。
・断熱/天井:HGWt140、壁:HGWt90、床:スタイロフォームt45
・窓/アルミ窓ペアガラス(A6)、日射取得率0.79

・一次エネルギー消費量/暖房設備:23512+冷房設備:9526=33038(MJ)
・年間暖房需要:78.99、年間冷房需要:47.69(kWh/㎡・a) ※芯寸法計算のため、実際はもっと悪い

この結果を元に、断熱性能を向上させることと日射熱取得量を増やすことは、どちらがエネルギー消費量や暖房需要の削減に効果があるのかを比較検討してみたいと思います。

尚、日射熱取得量については、下記の留意点があります。
ベースの窓性能がペアガラスA6で日射取得率が非常に高くなっており、Ua値を良くするためにガラス性能を良くすると、基本的に日射取得率は下がります。

よって、単純に日射熱取得量を増やすということではなく、取得と損失のバランスを改善するイメージとなります。

上記を踏まえると「断熱性能を向上させることと日射熱取得量を増やすこと」の比較というよりは、、
(窓以外の)断熱性能を向上させることと窓(の断熱)性能を向上させることは、どちらがより効果があるのか?
をまず検証します。

そして、その検証結果を踏まえながら、日射熱の効果について考えたいと思っています。

 

断熱性能を向上させてみる

どこまで向上させるかが難しいところですが、ひとまず省エネ4等級程度の施工が基本となっている方々にとって施工難易度的に現実感のある下記の仕様にしてみました。
・天井:HGWt300(λ0.038)
・壁:充填HGWt120(λ0.035)+付加HGWt60(λ0.035)
・床:ネオマフォームt40+80=120(λ0.02)
※窓はベースと同じ

この仕様で省エネ基準の計算をすると、以下の結果となりました。

また、一次エネルギー消費量と冷暖房需要を計算すると、以下の結果となりました。
・一次エネルギー消費量/暖房設備:17344+冷房設備:10016=27360(MJ)
・PHPP/年間暖房需要:52.71、年間冷房需要:43.33(kWh/㎡・a) ※芯寸法計算

ここで、ベースとの比較を書いておきます。
・Ua値は、0.65/0.87=0.75なので、25%断熱性能が向上しました。
・一次エネは、27360/33038=0.83なので、17%ほど冷暖房設備のエネルギー消費量が削減されました。

ここの結果をみて気になるのが、一次エネの冷房設備が5%ほど悪くなっている点です。

省エネ基準の解説書には、、
一日を通じて熱取得が発生する時間帯と熱損失が発生する時間帯の両方が出現する等の理由により、断熱性能の差はほとんど冷房負荷の多寡に影響を与えない
と記載があります。

しかし、結果だけをみれば数字が悪くなっているので、断熱性能が向上することで若干ではありますが熱損失が減ることを考慮していることになります。

このことが、前回(column043)書いた「夏は取り入れた熱が出にくくなるので高断熱はダメだ!」と発言する方の根拠のようなことになっています。

確かにこの一点だけを見てばそうかもしれませんが、暖房と冷房のトータルでみれば17%削減されていますので、何事も全体をみて判断することが大事かと思います。
また、これも書きましたが、日射遮蔽をきちんとすれば解決出来る事象ですので、高断熱がダメな理由にはなりません。

ちなみに、PHPPの冷暖房需要の方は両方とも減少しておりますが、24時間全館空調で計算した場合はきちんと減少するということだと思います。

 

窓性能(日射熱収支)を向上させてみる

窓に関しては、断熱性能向上の結果であるUa値0.65を目標に窓性能を導き出しまして、仕様は下記となりました。
・日射取得窓(南面のみ):アルミ樹脂複合窓 Low-Eペアガラス(A12)、日射取得率0.62
・日射遮蔽窓(その他面):アルミ樹脂複合窓 Low-Eペアガラス(A12)、日射取得率0.40

尚、Uw値(窓の熱貫流率)は「2.33(W/㎡・K)」としましたが、これは省エネ基準において仕様で与えられている値です。
しかし実際は、Uf値(窓枠の熱貫流率)やUg値(ガラスの熱貫流率)がそれぞれにある為、窓サイズによって数字が変わります。

省エネ基準ではそこまで細かい設定はしていませんが、PHPPは枠とガラスを別々に入力するのでよりリアルな結果が得られます。

さて、上記を元に計算した結果が以下です。

先と同じように、一次エネルギー消費量と冷暖房需要を計算しました。
・一次エネルギー消費量/暖房設備:18478+冷房設備:9114=27592(MJ)
・PHPP/年間暖房需要:68.14、年間冷房需要:40.76(kWh/㎡・a) ※芯寸法計算

省エネ基準について、ベースとの比較です。
・Ua値は断熱性能向上と同じですので、25%断熱性能が向上しました。
・一次エネは、27592/33038=0.84なので、16%ほど冷暖房設備のエネルギー消費量が削減されました。

Ua値を合わせたので、基本的には削減量は同じぐらいになります。
ある意味で、省エネ基準が主に断熱性を評価していることの根拠とも言えます。

また、日射熱取得率も評価対象ですが、断熱性能向上と比較すると1000MJぐらい暖房と冷房で差異が出ておりますので、多少ですが評価されていることになりますね。

ここで面白いのが、PHPPで計算した冷暖房需要の断熱性能向上との違いです。
暖房需要は52.71→68.14とかなり増加していますが、冷房需要は43.33→40.76と微減しています。

単純にみると、暖房需要的には断熱性能を高めた方が良いが、冷房は窓性能を高めた方が良いと読み解けるのですが、、
実はこれには裏があり、PHPPでUa値を計算すると断熱性能向上より悪い結果になっています。

何故か?
それは先にも書きましたが、PHPPの方が窓入力をより詳細にすることで、窓の性能(Uw値)が悪く出るからです。

従って、PHPPの結果考察としては、、
暖房需要はUa値が悪くなった分増加したが、冷房需要は日射取得量が減少したので良くなった
ということだと思います。

ちなみに、窓性能向上の方が日射熱収支のバランスはかなり改善しています。
それを考慮すればもう少し暖房需要が下がっても良い気がしますが、この段階では、面積比率が高い壁などの断熱性能をもう少し向上させる必要があるということかもしれません。

 

日射熱の評価を考える

ここまでの検証はあくまで参考プランにおいてのものですので、プランが変われば結果も変わります。
しかし、検証してみたことで色々気づいたこともあり、別のシチュエーションの参考にはなると思います。

結果として、省エネ基準上は、断熱性能と窓性能を上げることによる削減量に差異はさほどありませんでした。
ここだけを踏まえるならば、どちらを選択されても良いとは思います。

しかし、費用対効果で考えると、断熱性能向上より窓性能向上の方が高いと思います。
従って、本検証結果の場合は、まずは窓性能を向上すべきかと思います。

尚、これはあくまで省エネ4等級がベースの場合です。
ベースにする建物性能が変われば、おのずと費用対効果のある方法が変わりますので、その都度検証することが重要です。

 

最後に、日射熱の評価に重要なことは何か?ですが、Ua値を正しく計算すること、が大事だと思います。
ここで言うUa値とは、ガラスを除いた部分の外皮の評価です。

当然ですが、日射熱の効果とは、主にガラスからの太陽熱エネルギー収支のことです。
従って、まずはガラス以外の評価をきちんと行う必要があります。

今回は特に取り上げていませんが、熱橋についてもきちんと評価する必要があります。

Ua値を正しく計算することや熱橋を考慮することは、省エネ基準で求められている計算程度では到底導き出せませんので、それらが正しくシミュレーション出来るソフトを使う必要があります。

詳細に検証すればするほど解かって来ることは、効果的な手法は建物性能の程度によって変わる、ということ。
今回のような検証を様々な建物性能で試すことで、色々なことが見えてくると思います。

皆様もチャレンジしてみては如何でしょうか。

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