プロローグ
今年もGWが始まりました。
個人的には、休みというよりもゆっくりと仕事の出来る期間、という感覚ですが、皆さんと同じタイミングで休んだ方が仕事の連絡が来ない(水曜日定休ですが、普通に連絡が来ます笑)という考え方も出来るので、どちらが良いのか何とも分かりません。いずれにしても当面は、溜まっている仕事を片付ける、という期間になりそうです。
それでは、今号の目次です。
0.住宅建築の常識とは
1.客間はいるのか問題
2.LDKは1階か2階か問題
3.子供部屋の大きさ問題
4.回遊動線は本当に良いのか問題
なんとなくネットをみていたら、「新築住宅に客間を作ったが、親しかお客さんが来なかった」「我が家にはお客さんが来ないことに新築した後で気が付いた」というなんとも悲しい記事をみました。
とは言え、よくある話の1つだなと思いながら読んではいたのですが、今回は、客間問題の他にもありそうな住宅建築に関わる疑問や注意点をいくつか書いてみたいと思います。
0.住宅建築の常識とは
独立する前に勤めていた設計事務所は、ハウスメーカーの設計下請けを業務の1つとしていたので、建売住宅のプランをいやというほど見てきました。
まあ、15年以上も昔の話しではあるので現在の流行は分からないのですが、「1階はLDK+和室、2階は3個室の4LDK」という考え方が基本プランの1つとして存在していました。
1階の和室は、この後の本題にもある「リビングの代わりや客間にもなり得る余室」という位置づけですね。
また、1階LDKもほぼマスト条件で、2階LDKプランは20区画ぐらいの建売住宅で1件あるかないかという稀な案でした。
何故、そんな1階LDKや和室のあるプランになると思いますか?
理由は、基本プランから逸脱すると「売れないから」です。
何とも分かりやすい理由ですが、何百棟何千棟と売買していた不動産会社の方が仰っていたことなので、そのこと自体に間違いはないと思います。
それでは、何故そんなことが起こるのか?
理由の1つは、建売を購入するような方々はリスクを冒さない、があると思います。
要は、客間になり得る「和室を作らないこと」や将来2階に上がれるのか心配な「2階LDK」はリスクです。
本来、何を選択してもノンリスクはあり得ないのですが、世の中の情報(以下、常識)や自身の経験のみに頼ると、折角建てた注文住宅である我が家で後悔する、といったことにも繋がります。
今回のお話しは、住宅建築の(ネット情報などで知り得る)一般常識と各クライアントの生活スタイルギャップ、から起こる問題だと思います。
これらのこと以外にもたくさんの問題があるとは思いますが、今回のブログを拝読頂いたことで、これから注文住宅を建築される皆様がプランや計画などについて、今一度考えるきっかけとなれば幸いです。
1.客間はいるのか問題
これまでに私も「客間が欲しい」と言われたことが何回もあります。
・いままでは賃貸住宅でお客さんを呼びづらかったが、新築住宅ではお客さんを招きたい
・たまに自身の親御さんが遊びに来るので、宿泊用の部屋を作っておきたい
などがその理由として語られます。
希望としては分かります。
例え、それらが憧れとして語られていたとしても、折角の新築住宅ですから憧れや希望を持つことは悪いことではありません。
しかし、憧れを持つこととそれを実行することは全く違います。
実行する時は、憧れとして思っている時には想像していなかった「リスク・デメリット」も想像する必要があります。
例えば、「お客さんを招きたい」という憧れ。
賃貸住宅であってもお客さんを招いている方は、新築住宅でも招く可能性は高いですが、今までお客さんを招いていなかった方が急にお客さんを招く状況になるのでしょうか。
お客さんを招くって、けっこうハードルの高いことです。
例えば、私の場合は設計事務所という仕事の中で定期的に来客のある環境の為ある意味で慣れていますが、実際にお客さんを呼ぶとなると、「部屋の掃除や整理整頓をする」「お客様用の食器を用意する」などと今までやっていなかった(気にしていなかった)ことに対応する必要があります。
また、親御さん用の宿泊部屋。
普段はリビングの一部として使用していて、親御さんが来たら片付ける、であれば何も問題はないですが、普段使っていないのであれば、そんなもったいないことはありません。
よくよく考えて頂きたいのは、その余室にも建築コストが掛かっている、という事実です。

※リビングを小上がりとして、親御さんの宿泊にも対応した「焼杉と土壁漆喰の家」
注文住宅を計画する上で、、
・日常生活が快適に過ごせて、日常生活に不便がないこと
が重要なことの1つです。
そこに、憧れ・希望をどのぐらい乗せることが出来るのか?
そんな順番で考えて頂けると、後悔、ということは少なく出来るかと思います。
2.LDKは1階か2階か問題
LDKをどの階に作るのか?は、プラン作成の初期に問題となることです。
一般的には、1階LDKを選択することが多いと思います。
メリットとしては、使い慣れていることがけっこう大きな部分かと思いますが、そもそも、2階LDKを経験したいことのある方が少ないと思いますので、ある意味ではそうならざるを得ない、とも言えるかもしれません。
それでは、2階LDKのメリットは何だと思いますか。
きっと、一般の方では想像がし難いことだと思いますが、、
・構造計画上、広い空間が作りやすい
というメリットがあります。
簡単にご説明しますが、構造計画を考える上で、、
・2階よりも1階に多くの耐力壁(地震などに耐える為に必要な壁です)が必要
になります。
それは見方を変えると、広い空間が作りづらい、とも言えるのですが、1階LDKの場合は、、
・LDKそのものは広い空間にしたいのに、構造計画上は無理がある
という矛盾する現象が起こります。
その他、1階より日当たりが良い、(周辺道路などから離れるので)プライバシーが守り易いなどのメリットも存在しますが、反対にデメリットとして良く言われるのが、、
・将来、足腰が悪くなった時に、上がれなくなったら困る
ですが、2階LDKを選択する時に多くの皆様が気にされることです。
こればかりは、どうなるのか分からない将来の保険をどの程度かけておくか、という個人の考え方の問題でもあるので、個々のご判断にお任せする他ありませんが、「病気になったらそれは仕方のないことと考えて、それ以外のことで足腰の心配をするのでしたら、今から散歩などの運動を心掛けて足腰を鍛える、という考えの方が前向きでポジティブではないでしょうか」は私がお話しすることの1つです。
弊社でも、2階LDKプランをご採用頂いています。
私が2階LDKをご提案する理由はそれぞれですが、以下の住宅をご参考までに書かせて頂きます。
こちらのクライアントは、見晴らしの良さが気に入ってその土地を購入されました。
1階からでも前の住宅の2階から上が見えるだけなので、日当たりが悪いどころか良い部類に入りますが、2階からですと前の住宅は気にならなくなる為に視界は全く違いました。
私が2階LDKをご提案すると、他の方々と同様に将来不安を口にされました。
また、当時、ご主人様が脚の調子が悪かったため、余計に不安があったようにも思います。
しかし、先の説明に加えて、、
・土地のポテンシャルを活かした方がここを選んだ意味がある
などの建築士的な目線でお話しをさせて頂いた結果、2階LDK案を採用することになりました。

※2階LDK案「見晴らしの家」の2階LDからの眺め
1階LDKでも2階LDKでもそれぞれにメリット・デメリットは存在しますが、住宅建築をされる皆様の状況を考慮して、きちんと考えてみる、ということが重要かと思います。
3.子供部屋の広さ問題
設計打合せをしていると、子供部屋は○○畳欲しい、などと大きさを希望されることは多いです。
実際には、大きさでなく「何をする部屋なのか?」が重要なことですが、以外にそこまで考えておられない方も多い様に思います。
また、子育て真っ最中な状況でもあるので、ここ2~3年のことしか頭にない方も多くおられます。
それらは状況としては、仕方のないことかと思います。
子育てについては、基本的には初めのことで一生懸命ですし、それに輪をかけて、初めての住宅建築です。
5年も10年も後のことを考えている余裕はありません。
しかし、そんな状況だからこそ、私のような建築士が必要なのだと思います。
クライアントの状況や希望をお聞きして、それらを整理して、先のことも考えてご提案する。
個人的には、子供部屋は小さくて良い派です。
理由は、子供の独立後は使わなくなる部屋になり得るからです。
あとは、大きな空間を家具等で仕切る方法も良いと思いますが、実際は、勉強はどこでするのか?収納は家族まとめて?それとも個々なのか、などの生活スタイルに応じて大きさや使い方をご提案することになると思います。

※吹抜け方向にお子様三人で使用するStudyカウンターを設置した「焼杉と土壁漆喰の家」
※個室とせずに、お子様の成長に合わせて家具や簡易的な壁で仕切って生活している
4.回遊動線は本当に良いのか問題
キッチンや水廻りをグルグル回遊出来るプランは、人気のあるプランの1つかと思います。
弊社でも、キッチン回遊プランや水廻り回遊プランは採用例があるので、良い使い方だと思っています。
しかし、デメリットも存在していて、例えば、回遊部分が通路となるために収納量は減ります。
また、別の見方をすると、歩くだけ(回遊するだけ)の場所にお金を掛けることにもなります。
よって、回遊プランを選択する場合は、、
・計画全体の広さ(延べ床面積のこと)
・プランニングの合理性及びそのバランス
が重要な要素になると思いますが、簡単にご説明しておきます。
広さについては、そのままの意味ですが、そもそも家族が生活する上で必要最低限の床面積しか確保出来ないのであれば、回遊部を作っている余裕はありません。
回遊部よりもリビングの広さや収納部に床面積を割くべきだと思います。
合理性等については、回遊することで利便性がどの程度向上するのか?とも言い換えられます。
例えば、一日一回使うか使わないか程度の利用回数(要は、他の廊下を使えば事足りる)であれば、(あれば便利ではあるけども)そもそも作る必要がないかもしれません。
回遊プランが憧れ、という希望の優先順位が高くなってしまうと、回遊部を作ることが優先されて合理的なプランニングにならない可能性が高くなります。
よって、回遊案については、あったら良いよね!程度の希望に留めておくことが良いプランニングになる秘訣かなと思います。

※キッチンをアイランド型の回遊式とした「木と樹のバルコニーのある家」
※ダイニングを半個室型とした特徴あるプランニング
最後に、全体のまとめです。
どの問題にも言えますが、それらクライアントの憧れや希望をきちんと理解しながらも、(建築士として)合理性やバランス感覚を失わずに、真摯にクライアントの為を思って建築デザインの出来る方を住宅建築のパートナー(設計事務所や工務店の建築士)に選ぶことが重要なことだと思います。
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以上です。
今号もご愛読ありがとうございました。
次号以降も宜しくお願い致します。
ArchiAtelierMA株式会社
代表取締役 丸山晃寿
