耐力壁とは
何時何処で大きな地震が来るのか分からない日本の住宅には耐震性が求められます。
そんな耐震性の基本を成すのが「耐力壁」と言われる壁です。
通常、耐力壁と言えば、、、
1)筋交によるもの(横架材及び柱間に入れる斜めの木材等)
2)面材張りによるもの(構造用合板その他)
のどちらかのことを指します。
更に、(財)日本住宅・木材技術センター出版の解説書によると、、、
1)筋交:耐力壁の幅、最小値90cm 以上かつ階高/幅は3.5 以下
2)面材:単独耐力壁として60cm 以上かつ(高さ/幅≦5)が有効
3)おおむね2m以下に柱を設ける
と基本となる大きさなどが記されています。
また、建築基準法(以下、建基法)では建物に必要な耐力壁の数を「壁長」として長さで表しますが、耐力壁の仕様によって壁倍率なるものが決まっています。
これらは「耐力壁」の基本的な考え方ですが、実はこれ以上の決まりもありません。
したがって、この決まり以外のことは実際に設計される方の(良くも悪くも)さじ加減で決まっているという実情がありますが、これらは下記するような問題をはらんでいます。
筋交耐力壁の強度とは
建基法に記された筋交の壁倍率は「高さ2730mm・柱間隔910mm」の筋交を強度試験した結果で定めています。
しかし、実際は「高さ3000mm・柱間隔1820mm」の筋交が施工されることもあります。
要するに、試験の形状と違う方法で施工が行われています。
一見問題のように思われますが、角度や高さ、柱間隔に関する規定は建基法には記されていない為、法律違反ではありません。
筋交は、角度が急に(若しくは緩く)なると、負担する軸力が大きくなります。
また、材が長くなるので圧縮方向に対しては更に負担が増します。
以前とある雑誌に「厚さ45mmの筋交を柱間隔910mm・1365mm・1820mm、いずれも高さ2730mmとした3種類の試験体」を強度試験した結果が掲載されていましたが、1365mmと1820mmについてはそのどちらも910mmの約7割の強度しかないそうです。
『試験体は910mmのように筋交がねばらず、端部金物のビスが抜けたり筋交が座屈したりし、厚さ45mmの片筋交の基準強度も下回った。』とのこと。
耐力壁の意味を考える
これらのことは、前記したように建基法上は問題ありません。
しかし、先の解説書の質疑回答欄に「設計の簡素化、技術的合理性、法令上の妥当性を総合的に勘案して『筋かい耐力壁では長さ比例則が適用できる』としていますが、設計者の判断で安全側に設計することは望ましいと考えます。」とある通り、設計者は法律を遵守しつつ更に良い建物にすべく、ある意味、哲学をもって設計に臨まなくては行けない、ということではないでしょうか。
我々設計者に委ねられている責任は大きく重い、ということを改めて感じさせられます。