column014 四号建築物を考える

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四号建築物と耐震等級

非常に残念なことですが、大地震が来る度に何かしらの建物被害が報告されます。
それは、築何十年という耐震性の低い多くの住宅が今なお使われているので、ある所では致し方ないことかもしれませんが、その原因として「4号建築物」や「耐震等級」なる言葉が世間を賑やかせたりします。

ここで、簡単にそれらの言葉を説明します。

始めに「4号建築物」について。
これは、建築基準法6条第1項第1~3号までの規模にならない建築物のことを指していまして、建築基準法(以下、建基法)には第4号を「前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画~(以下続く。)」という表現で書かれていますが、この建基法の条文をとって4号建築物と呼びます。

1つ例を上げると、延床面積500㎡以下の木造二階建ての建築物は4号建築物になります。
要は、多くの2階建て木造住宅はそのカテゴリーに入ります。

次に「耐震等級」について。
これは、品確法の性能表示基準の1つで「構造の安定に関すること」という評価で求められている「地震に対する構造躯体の強度レベル」のことを指しています。

建基法に定めのある構造などの規定を満たしているものを「等級1」として、検討する地震力を1.25倍にしたものを「等級2」、1.5倍を「等級3」としています。
要は、等級が上がるほど地震に強い建物になるということです。

 

四号建築物の安全性

ここまででは、何故それらの言葉が賑やかになるのか疑問だと思いますが、四号建築物に対する構造耐力の基準を知ると少し分かってきます。

まず四号建築物は、構造計算に依らないで建物を建築することが出来ます。
これは「構造耐力を検討しない」ということではなく、建基法の「仕様規定」に適合させる必要があり、壁量設計により地震力や耐風力に対する必要壁量を計算し、耐力壁をバランス良く設置することによって構造の安全性を担保させることを指します。

仕様規定自体は、建基法に則っているので問題はありません。
しかし、構造に疎い意匠設計者でも出来てしまうことに一抹の不安があります。

それでも、構造的な問題が少ない真四角の総二階建てなどなら良いでしょうが、実際はそのような建物ばかりではなく、以前とある雑誌に設計者の知識不足が起因と思われる記事が載っていました。

その記事では、関東地方の地場工務店がプレカット工場に渡した4号建築物の図面から、100件を無作為抽出して構造計算(許容応力度計算)を実施したところ、設計応力が許容応力を上回る「エラー」が全ての事例に発生していた、とのことでした。

全てにエラーがあったということに驚いたのですが、その主たる原因が、柱直下率(梁上耐力壁率※梁下に柱がない状態を含む)の低さと吹抜けなどによる水平剛性不足です。
これは、仕様規定による設計では対応出来ない項目で、設計者の知識と経験が如実に表れます。

話しをまとめると「四号建築物は構造計算による検討が行われていない(可能性がある)ので、構造的に問題が起きることがあるし、更にそれが原因と疑われることで地震により建物が倒壊することがある」ということです。

また、仕様規定による建物のことを「耐震等級1」と表現していることが多く(詳細は違うが、ここでの説明は割愛)これらの言葉が大地震の度に世間を賑やかすことになります。
ちなみに、耐震等級が上がると水平構面の検討が必要になり、構造計算に依らないものだとしても先の懸念事項が低減されることになります。

建基法は、あくまで最低限の基準です。
それを遵守することは当然ですが、その先の構造耐力を一建築士としてどう考えて行くのか?が非常に重要になるのではないでしょうか。

弊社の場合は、全棟を構造設計者による構造計算(許容応力度計算)を最低限の検討としていますが、皆さんは如何でしょうか。

 

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