エクセルギーを学ぶ

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エネルギーは保存されるけど

皆さん、「エクセルギー」という言葉はご存知でしょうか。
私もその言葉を知ったのは大人になってからで、かれこれ7~8年前のことです。

それから、その研究の第一人者で在られる宿谷昌則氏が著した本を読んでは挫折し、また読む、みたいなことを繰り返しておりますが、なかなかどうして、簡単には理解したと思わせてくれません。

宿谷さんは建築環境学を専門とされていますが、気象学や生物学にも大変精通しておられます。
最近は、環境の最大径と言える宇宙空間を踏まえたお話しもされるので、私の興味が尽きることもありません。

そこで受けた刺激は私の更なる探求心へと変化し、宿谷塾と称した勉強会の講師を宿谷さんに依頼するなど、勉強の場を増やすことにつながっていますが、今回はこの勉強会に触れながらエクセルギーについて少し書こうと思います。

この勉強会は、私が宿谷さんに「壁の表面温度を計算で知りたい」とご相談したことから始まりましたが、我々が学んでいることの大枠は熱力学です。

熱力学は、「熱力学第1法則(熱と力学的エネルギーの間のエネルギー保存則)」と「熱力学第2法則(熱を力学的エネルギーに変えると元の状態に戻らないこと)」に基づいていますが、エクセルギーとは熱力学概念の1つです。

 

エクセルギーは拡散される

エクセルギーとは、エネルギー物質の「拡散能力」を表す概念ですが、いわゆるエネルギー消費という時の「エネルギー」は厳密に言うと「エクセルギー」というのが正解とのこと。

もう少しかみ砕いて書いてみると(以下、オイコスフォーラム連続セミナー資料より)、、
・自然現象では必ず「拡散」が生じる
・拡散を引き起こす能力が「エクセルギー」
・拡散の前後で「保存」されるのがエネルギー
・消費を定量化できるのが「エクセルギー」
と言えるらしい。

ますます意味が分かりませんね。笑

ここで、いつも宿谷さんが出される例をご紹介します。
環境温度20℃の場所で熱平衡した20Lと5Lの水があったとします。
(熱平衡とは、環境温度と水が同じ温度になっている状態)

この水が「20Lが40℃」「5Lが100℃」になると、各々が1674kJの熱エネルギーを持つことになりますが、20Lの方はお風呂にしたら丁度よい温度ですが、5Lの方はとてもではないですが手も入れられません。

「エネルギー量は同じはずなのに、この違いって何?」に答えてくれるのがエクセルギーで、20Lは55kJ、5Lは194kJの熱(温)エクセルギーがあります。

何となく、エクセルギーのイメージが出来ましたでしょうか。

 

エクセルギー概念から分かること

エクセルギー概念は色々なことが読み解けます。

例えば、これもセミナーなどで宿谷さんからお聞きすることですが、人の身体の熱的性質が読み解けます。
ここでは「冬を想定した人体エクセルギー消費速さが室温と周壁平均温度でどのように変化するのか」の計算例を紹介します。
考え方としては、人体エクセルギー消費速さが人体に掛かる熱的ストレスを表します。

長くなるので結論だけ書きますが、周壁平均温度(壁や天井、床の平均温度)が25℃ぐらいあると、室温が14~24℃の間なら人体エクセルギー消費速さが殆ど変わらないことが分かります。
まあ、周壁平均温度25℃は少し極端かもしれませんが、21℃ぐらいあれば室温18~24℃の間なら変わらないので、室温より壁などの温度が如何に大事なのかが分かります。

皆さんも体感としてご存知かと思いますが、断熱性能が低い家のエアコンが不快に感じることは、実は周壁平均温度が低いため人体エクセルギー消費速さが減らないことが原因です。

宿谷さん曰く、、
従来、暖房と言えば「室内空気を加温すること」だと思われがちであったが、(先の考察から)暖房の目的は「周壁平均温度が下がらないようにすること」だったと認識出来る
とのこと。

これは、私を含むパッシブハウス・ジャパンの仲間が常に言っている「断熱・気密の重要性」が間違っていなかった、とも言えると思います。

 

設計技術研究会 第5回宿谷塾

宿谷塾では、「先の壁面温度を計算するための理論を学びながら、実際にエクセルソフトを使いながら計算する」ことを第一目標として始めました。

今回は、高性能住宅を体感しながらの勉強会を試みて、軽井沢南ヶ丘パッシブハウス(申請中)のある軽井沢まで足を延ばしましたが、計算と体感がリンクする環境で出来たことは大変良かったと思います。

いくら「断熱・気密が大事」と言ったり、計算結果で分かったりしても、体感で得られるものには敵わないと思いますので、またチャンスがあればこういった趣旨で勉強会が出来ればと思いますし、まだまだ理解したとは言えず、、我々の学びは続きます。

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