H-OY-02 基本計画から住宅医調査

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計画の方向性

改修工事の場合は、現況の建物を利用するために、既存状況を把握することが極めて重要です。
弊社の場合は、住宅医協会が推奨している住宅医調査にて現況を把握しますが、そのお話に入る前に計画の方向性が決まるまでのことを少し書こうと思います。

今回は、築50年程度の木造2階建て住宅を改修する計画ですが、既存住宅は約40坪の広さがありました。
住まいとしては十分な広さがありますが、ご夫婦とお子様二人の4人家族であるクライアントには少し広すぎる印象を持ちました。

改修工事の場合は、既存住宅を利用出来るので新築に比べて安価になる可能性はありますが、不要な部分も工事対象にしてしまうと余計なお金が掛かります。

そこで、40坪のうちの1階部分(約27坪/90㎡)を利用する計画で、クライアントが必要とする広さの住まいが可能かを検討することにしました。

案として、既存住宅の間取りに則った案と、全く違った案の2つをご提案しました。

既存住宅に則る場合のメリットは、構造部材や配管等設備の変更を少なくすることが可能で、工事費を節約出来る点です。
既存住宅に則らない場合は、新築同様の自由なプランニングが可能にはなりますが、梁や柱といった構造材のやり替えが必要で余計な費用が掛かりやすくなります。

打合せの結果、以下の計画で進めることになりました。
・広さについて:1階のみを利用する計画
・プランについて:既存住宅の間取りに則った案

 

住宅医調査

既存住宅の調査には色々な方法がありますが、近年出来た既存住宅現況調査は改正宅地建物取引業者法における調査で、国交省の告示で定められた調査基準で行う調査です。
調査は原則として非破壊で行われますが、構造耐力上主要な部分に劣化等がないかを目視や計測で確認します。

さて、弊社が行っている住宅医調査ですが、劣化については先の国交省告示に則った方法になります。
尚、非破壊の場合は、殆どの部分が見えないなどの可能性もありますが、住宅医調査の場合は、クライアントの許可を頂いて点検口を必要な部分に設置して、梁や柱、土台などの構造部材の状況をなるべく確認するようにしています。

ここまですることの利点は、設計段階での精度を上げることが出来て、実際に工事(解体)が始まった後の調整を少なくすることが出来ますので、工事費が極端に上がってしまうようなことも防ぐことが可能になります。

その他にも、耐震性や省エネ・温熱、バリアフリー、火災時の安全性なども確認することになっていますので、性能向上調査として全体を網羅した調査内容になっています。

調査には、主な調査区分の各区を担当するサポート5名と実習生(住宅医スクール卒業生で各サポートのアシスタント)8名と案件の関係者(私、構造事務所、工務店の3名)を合わせた16名の大所帯となりました。

 

ちなみに、実習生は調査経験のない又は少ない方が殆どですが、そんな方々に調査の体験が出来る場を提供するために、住宅医スクールで参加者を募集しています。
私も住宅医スクールに通っていた時に、数回の調査に参加させて頂きまして、調査の進め方や方法などを学ばせて頂きました。
よって、サポートには調査費用が支払われますが、アシスタントは基本的にボランティアです。

さて、そんな16名のメンバーで行った調査ですが、既存住宅がそれなりに大きく又敷地が300坪ほどあった為に、終了予定時刻の16時半ギリギリまで掛かりました。

通常は、主担当(今回で言えば私)とサポートの6名ぐらいで調査を行うことが多いですが、今回は人数が多くて助かりました。

この後は、サポートに作成頂いた野帳(調査内容を記録した手書き図面)と膨大な写真と睨めっこしながら、調査報告書をまとめる作業に入ります。

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