住宅建築を始めるために
住宅を建てる場合、基本的には設計事務所・工務店・ハウスメーカーのいずれかへ依頼する必要があります。
その選択に良い・悪いはなくそれぞれに一長一短があり、建て主本人に合う会社に依頼することがとても重要だと思います。
例えとして、建て主(又は依頼者)に明確な家づくりへの考えがあれば、どこに依頼しても同じ家を造ることも可能だと思います。
しかし、建築関係者でもないかぎり(もっと言えば、建築関係者でも)そこまで明確なものを持つことは難しく、大抵はいくつかのキーワードを持っている程度かと思います。
従って、各会社はそのキーワードを聞いて家づくりをするわけですが、ここでそれぞれの会社で違いや一長一短が現れてきます。
では、その違いや一長一短って何だろう、ということですが、今はインターネットなどで基本的な違いは調べられると思いますので、今回は私見を書ければと思います。
また、ハウスメーカーについては「工務店が全国各地で均一化された会社」ということで割り切り、「設計事務所」と「工務店」の違いに絞ってまとめさせて頂きます。
設計事務所と工務店の違いはオリジナルの考え方にある
設計事務所と工務店の違いを簡潔に書くと、、、
・設計事務所は、デザインとオリジナリティを持った住宅を提供する
・工務店は、コストバランスの取れた(工務店の)オリジナルを提供する
だと私は考えています。
これは、設計事務所は「依頼者に合った住宅を設計してくれる」ことで、工務店は「依頼者がその工務店の造る住宅に合わす」と言い換えることも出来ます。
また、先ほど書きました「キーワード」を踏まえて、、
・設計事務所とは、キーワードをひも解く側である
・工務店とは、キーワードをひも解くのは依頼者本人である
ともご説明出来るかと思います。
少し具体例を示したいと思います。
例えば、温熱環境の良い快適な家で暮らしたい、との希望があったとします。
設計事務所の場合、、
まず、家づくり全体において、どういったイメージをもっているのか、確認します。
次に、その中で依頼者の考えている「快適」がどういった立ち位置なのか、確認します。
そして、依頼者に合った「快適」を考えます。
細かいことを書くと、断熱材はグラスウールが良いのか?セルローズファイバーが良いのか?考えます。
工務店の場合は、、
まず、提供する「快適」は、工務店の仕様によりある程度決まっています。
それは、快適性と建築コストのバランスを考えて決めています。
断熱材で言えば、グラスウールなのかセルローズファイバーなのか決まっています。
要は、設計事務所はキーワードを伝えるとそれを踏まえ設計してくれますが、工務店の場合はキーワードに合っているのか判断するのは依頼者です。
何となく、設計事務所と工務店の違いがご理解頂けましたでしょうか。
もちろん、設計事務所にも同じ仕様の住宅しか設計しない事務所もあれば、依頼者に合った設計をしてくれる工務店もあります。
しかし、各々の報酬の得方を考えるとそれは一般解とは言えません。
何故か?
それは、設計事務所は考えることで報酬を得ていますが、工務店は造ることで報酬を得ているからです。
この報酬の得方の違いは、建築コストにも影響を与えます。
設計事務所は、ある意味オリジナル(考えること)を追求しています。
それは、新しいことにチャレンジすることにもつながりますが、新しいがゆえに費用が掛かったります。
もちろん、設計事務所とて依頼者の予算を見て設計するわけでコストは気にします。
しかし、新しい技術が高かろうが安かろうが自分の報酬には関係がないため、そこまでシビアに考えていなかったりします。
逆に工務店は、造ることで報酬を得ているので、建築コストはとても気にしています。
したがって、同じ効果であれば安い材料を選択しますし、もっと言えば掛け率の良い(割引率の良い)材料を選択します。
また断熱材で例えると、工務店の場合は安価で性能の良いグラスウールを選択しますが、設計事務所は環境負荷が少ないなどの理由でセルローズファイバーを選択したりします。
設計事務所は高いと言われる所以はこういったことの積み重ねにある、と私は思っています。
※ここで、断熱材の違いを簡単にご説明しておきます。
・グラスウールはそれなりの性能が確保出来て安価な材料ですが、実は施工難易度が高いです。
・セルローズファイバーは製造時の環境負荷が少ないなどの付加価値がありますが、性能の割に高価な材料です。
依頼先はどこまで自分らしさを求めるのかで決まる
デザインやオリジナリティ、付加価値に家づくりの基準がある建て主は設計事務所に、建物性能とコストに基準がある建て主は工務店に頼むのが基本的な選び方かと考えます。
ちなみに、設計事務所に「デザイン」という項目を選んだのは、デザインを求めることはオリジナリティと付加価値を求めることと同じだと考えるからです。
また、デザインされたカッコいい建物は一般的な納まりをしていないことが多く、お金がかかっていると思ってほぼ間違いないと思います。
実はここに工務店はかっこよくない、となる理由も含まれます。
何故か?デザインすることは利益率が下がることに繋がるからです。
また、カッコいいデザインを考えても造るのが自分たちなので、その難しさを知っているがゆえに一般的な方へ行きがちです。
念のため付け加えますが、一般的ということは施工精度の均一化や防水性等の建物性能の担保につながる要因でもあるので悪いことではありません。
それと、大原則として、設計事務所にも工務店にも得意分野はあります。
温熱環境が良い快適な住まいを望んでいるのに、それらが不得意な設計事務所や工務店に依頼するのはどっちもダメです。
設計事務所と工務店で良い・悪いはありません。
目指すべきことや報酬の得方が違うだけで多くの皆さんが真面目に家づくりに取り組んでいます。
最善の方法は
最善の方法は何か?と問われれば、設計事務所に依頼することをお勧めします。
理由は、それが本来の家づくりの在り方だからです。
先にも書きましたが、設計事務所と工務店では報酬の得方が違います。
言い方を変えれば、仕事の内容が違います。
設計事務所とは考えることが仕事であり、工務店とは造ることが仕事です。
当たり前ですが、考えることと造ることはどちらも家づくりで欠かすことが出来ません。
設計事務所に依頼した場合は、、
1.建て主の希望を踏まえ、設計事務所が考える(要は、設計)ことを実行し、設計図書をまとめる
2.(設計事務所が探してくれる)工務店に工事見積書の作成を依頼する
3.設計図書をふまえ、時には工務店の得意な工法等を採用しながら、見積書をまとめていく
4.設計事務所が監理しながら、工務店が設計図書通りの工事を行う(造る)
となりますが、工務店に依頼した場合は、、
「1」が殆どない、若しくは、ある程度決まった仕様から選択することが主な方法になります。
要は、この「1」の部分に「自分らしさ」が詰まっています。
この自分らしさとは、コスト面でも言えることで「何にお金を使いたいのか?」も決めることが出来ます。
設計事務所は高いというイメージがあるかと思いますが、「コストの振り分け」というコスト管理が出来ることは利点の1つです。
また、設計事務所は「考える(設計する)」という仕事の他に「プロデューサー」的役割も担っていますので、家づくりが完了するまで建て主に代わり全体の指揮を行います。
一方、工務店に依頼した場合は建て主自身がプロデューサー的役割をこなす必要がありますが、一般の方が工務店という家づくりのプロ相手にその役割をこなすことはかなり大変だと思います。
以上が、設計事務所に依頼することをお勧めする主な理由となります。
最後に、、
あなたが建て主であるならば自分の目指すべきことを知り、設計事務所や工務店の特性を知ることも家づくりの大事な要素の1つかと思いますが、如何でしょうか。