column055 住宅建築のコスト-広さ・仕様編-

投稿者:

住宅建築の予算・コストを考える

無料で建築家等に質問できるサイトで「○○な規模で○○な仕様だとどのぐらい建築コストが掛かるか?」という一般の方の質問をよく見かけます。

普通にネット検索しても一般的な坪単価ぐらいは調べられると思いますので、建築家等のプロに聞くともっと詳しくことが分かるかも、との思いで質問しているのだと思います。

しかし、その精度を問われると難しい部分があり、いくら建築家等のプロであっても無料で答えられる程度のことは、普通にネット検索で得られる内容と大差ありません。

建築に掛かるコストは、15種類以上の工種(基礎工事、木工事、外部建具工事、電気工事などの建築に必要な工事)から算出するので、どこにお金を掛けるのかで大きく金額が異なります。

また、皆様がよく耳にする「坪単価」は先の各工種の合計金額を床面積で割っただけの数字ですが、単純に仕様が良くて小さい住宅の方が大きな数字になります。

住宅建築予算・コストの把握において一番確実なのは、住宅建築を依頼したい設計事務所や工務店を早めに決めてしまい、その会社で確認する方法です。
本来はそうあるべきだと思いますが、このお話は別のcolumnで書きたいと思います。

さて、先のような書き方では何も拠り所がなく、エンドユーザーの皆様(以下、ユーザー)も困ってしまうと思いますので、弊社の住宅建築の予算・コストの考え方をご紹介しながら、そのイメージをお伝え出来ればと思います。

 

コスト検討に必要なコト-広さ編-

住宅建築コストを考えるにあたり、まずはコストが上がる要因を考えてみます。

大きな理由は2つで、「床面積が大きい」ことと「仕様が良い(各性能やデザインその他)」ことです。

仕様については、良くなれば金額が上がるイメージもし易いと思いますが、住宅建築コストを算出する時に単位が「平米」や「坪」の項目がそれなりにあるので、「大きい」こともボディブローのように効いてきます。

それでは逆に住宅建築コストを下げるには、床面積を小さくするか仕様を悪くすることになりますが、現状をみると、多くのユーザーは仕様を悪くすることで予算・コストを調整していると感じています。

それは、ユーザーが広さにこだわりがあることの裏返しだと思いますが、単純に大きいことによるメリットは殆どないと私は思っていますので、広さについてはよく考えてみると良いかと思います。

 

さて、少し話が逸れましたが、住宅建築コストを考える上で広さや仕様が重要な要素になりますが、それはコストを想定するには「広さ」と「仕様」を決める必要があるということです。

まずは広さを想定したいと思いますが、一般的と思われる4人家族(ご夫婦とお子様お二人)の方からのご希望の多い広さとして「35坪」前後が挙げられます。

しかし、この広さに関しては、様々な情報サイトで「35坪ぐらいは必要」などのアドバイスを見かけるので、ユーザーの希望というよりは情報サイトの影響を受けているだけの可能性もあります。

温熱設計がきちんと考えられた住宅の場合は、30坪程度の広さがあれば「住まうに足りる」と私個人的には思っています。

先にも書きましたが、必要以上に広いことによるメリットは殆どないと思っていますので、まずは「4人家族で30坪の広さ」をベースの広さとしてご検討されるのが良いかと思います。

 

コスト検討に必要なコト-仕様編-

仕様に関わる項目は、「耐震性」「耐久性」「温熱性」の住宅の基本性能から始まり、「設備機器(キッチンなど水廻り設備や空調換気設備など)」「内外装の仕上げ」「デザイン性」などの多岐に渡るため、仕様を決めるのは容易なことではありません。

そこで、まずは絶対に下げてはいけない項目を決めたいと思います。
それは「耐震性」「耐久性」「温熱性」の住宅の基本性能ですが、住宅を長く使うというサステナブル性を考えると必須なことで、トータルコスト(イニシャルコストとランニングコストの和)で考えても外せないことです。

弊社では、それぞれでどの程度の性能が必要なのかを以下で考えています。
◎耐震性は、許容応力度計算による「耐震等級3」を確保する
大地震による損傷などが最小限で抑えられることが様々な実験で示されていますし、コスト増についても工事費全体を考えれば大したことではありませんので、耐震等級3が標準で良いと思います。

◎温熱性は、「暖房需要30kWh/㎡・a以下」となるようにエネルギーシミュレーションをする
暖房需要をエネルギーシミュレーションするということは、感覚や経験などによる不確定な提案になりがちなパッシブデザイン要素(断熱、気密、日射取得や遮蔽など)が数値化出来ますので、エネルギーシミュレーションすることは必須だと思います。
尚、この項目は、深く掘り下げたいと思いますので、別のcolumnにて詳しく書きたいと思います。

◎耐久性は、「防水性能」「蟻害対策」が主な対応
様々なコトの複合要素ではありますが、建築すると見えなくなる構造部材を腐朽や蟻害から守ることが重要です。
蟻害で言えば、5年で効果がなくなってしまう薬剤より、ホウ酸塩による処理を選択すべきです。

ーーーーー

住宅建築のコスト-コスト編-」に続きます。

 

関連記事