column010 仕上素材を考える-基本編

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仕上げ材

外壁や屋根などの外部から内壁・床や天井と言った内部まで面を構成する部分には、多くの場合に仕上材が存在します。
外装材であれば、窯業系サイディングから石やタイル・塗装・木板など様々なものが存在しますし、内装材についても、ビニールや紙のクロス類から漆喰などの塗り材や塗装などこちらも様々存在します。

基本としては、建て主様の好みに合った材料を使えば良いと思いますが、実は法律上や建築環境の観点など材料の選定において検討すべきことはいろいろとあります。

 

外部仕上げ選定の注意点

まずは、外部について。
主な注意すべき点は3つ、耐震性と耐久性と防火性です。

耐震性については、なるべく軽い材料が構造的には有利です。
石やタイルなど比較的荷重のある材料を選ぶと、地震時に躯体へ掛かる負荷が大きくなり、その分耐力が必要になるからです。

したがって、耐震性という観点で選ぶなら、外壁で言えば、金属系サイディングや木板などが、屋根で言えば、板金葺きやコロニアルなどの軽い材料が有利でしょうか。

次に耐久性ですが、これは言い方を変えると維持管理のことです。
外部用仕上材(周辺部材も含む)は基本的には紫外線劣化をするので、一定のサイクルでメンテナンスを行なう必要があります。

フリーメンテナンスにするのはなかなか難しく、あえて言えば、新築時がベストの状態ではなく、使いながら良くなっていく(風合いが出てくる)様な材料を使うことでそれに近い状態になるかもしれませんが、それでもフリーと言う訳には行かないです。

従って基本的には、耐久性のある・耐用年数の長い材料を選ぶことが、維持管理を楽にします。
また、将来のメンテナンスや改修工事のことを考えると「足場を組むか、組まないか」が費用の面で最も重要な課題になります。

言い方を変えると、なるべく足場を組む回数を減らしてメンテナンスを行っていきたいので、屋根・外壁などの仕上材の耐用年数を同じぐらいにしておくのも1つの手かと思います。

次は防火性についてです。
これは都市計画上の地域などにもよりますが、都市部や郊外など住宅が多く立ち並ぶような地域では、外壁及び屋根に防火性が求められています。

外壁で言えば「外部からの延焼にある時間耐えうる(燃えない)外壁の構造にしなければならない」というもので、仕上材のみに言及しているわけではなく、仕上材を含む外壁としての構造を問われています。

多くの場合は、各仕上材で認定工法がありますのでご希望の仕上材に見合った工法で検討しますが、1点だけ注意事項があります。
それは、高断熱住宅にしたい場合です。

在来木造で言えば、柱間の充填断熱と外部側に付加断熱をして高断熱とすることがありますが、その場合の認定工法(特に45分準耐火構造)が今現在あまり存在しません。
認定工法の場合、認定書に書いてある部材以外使ってはいけないことになっており、特殊な外壁材と断熱材で高断熱住宅としたい場合は、注意が必要です。

 

内部仕上げ選定の注意点

次は、内部について。
主な注意すべき点は2つ、室内環境と防火性です。

屋内環境とは、ホルムアルデヒドなど(以下、VOC等)によるシックハウス症候群対策と湿度対策です。

VOC等については、昨今は材料への含有量が法律により規制され以前よりは安全になっておりますが、それでもなくなっているわけではありません。
また、建基法で換気設備の設置も義務付けられているため安全性は高まっていますが、それでもより安全を期すならば、VOC類含有の可能性がある塗料や接着材を使った材料はなるべく使わない方が良いでしょう。

対策としては、合板類をなるべく使わないことや漆喰や珪藻土と言った自然素材を仕上材で使うことが上げられます。
また、珪藻土の場合は調湿性能(JIS規格)がありますので、湿度対策にも有効です。

尚、一日の湿度変化を考えると、その調湿性能がある材料の表面2~3mmぐらいしか効いていないため、なるべく調湿効果を持たせたいならば、材料の厚さではなく表面積を増やすのが得策です。

最後に防火性については、基本的には火気使用室(要は、キッチン)には不燃性の材料を使う必要がありますが、一般的な国産の仕上材は準不燃材料認定などを持っているので大きく問題になることはありません。

ちなみに、木板や認定のない材料を使いたい場合は、国交省告示225号を使うと火気使用室内でも(告示の範囲内で)不燃仕上以外を使うことが可能になります。

仕上材ぐらいは好きなものを使って良さそうに思いますが、意外に法律での決まりがあります。
また、外装材などはいろいろな意味で周辺環境へも影響がありますので、総合的な判断で材料を選択できると良いですね。

 

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