H-KRH-10 空調ダクト工事

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本計画は、長野県・軽井沢町で工事中の一戸建て住宅です。
避暑地として有名な軽井沢ですが、冬は氷点下になるほど寒い地域です。
そんな軽井沢で、夏も冬も快適に過ごすことを望んだお施主様と共に、パッシブハウスを目指しています。

 

熱交換換気システム

他の案件でも書いておりますが、弊社では第1種換気のダクト式熱交換換気システムで換気を行う設計が多いです。
理由は、弊社で設計する住宅の温熱性能をふまえると、快適性や省エネの両面からバランス良く設計出来ることが多いからです。

さて、本案件はパッシブハウス認定を目指しておりますが、この場合は先の理由の他に少しでも熱ロスを少なくするような設計が求められますので、なるべく熱交換効率の良い換気装置を選択することも重要なことです。

その熱交換効率で考えると「Focus200/PAUL(ジェイベック)」という商品が「91%(顕熱)」の交換効率がありますので、選択肢の1つとなるとは思います。

しかし今回は、建物の気積(換気すべき量)が大きすぎるので、最大180立方m/hの風量しかないFocus200では2台設置する必要があるので、あまり経済的ではありません。

そこで今回は、最大350立方m/hの風量がある「LWZ-270Plus/スティーベル」で設計することにしました。
ただ、ここでネックになるのが、熱交換効率です。

メーカー資料では「82%(顕熱)」と謳っていますが、PHI(パッシブハウス研究所)の認定品ではないので、そのままの数字が使えません。
基本的には性能値を「-12%」する必要がありますが、これは暖房需要に大きく影響する値です。
(ちなみに、Focus200はPHI認定品なので、カタログ値がそのまま使えます。)

暖房需要に影響するということは、断熱を強化したり日射取得量を増やしたりなどの対策が必要ですが、既にそれなりの性能になっているためにそれも簡単なことではありません。

じゃあ、それならどうするの?ってことになりますが、ここで「LWZ-280」という救世主が現れました。
LWZ-280は270タイプの後継機的な商品で、PHI認定品です。

そもそも、ダクト式熱交換換気システム自体が日本ではポピュラーな換気システムではありません。
そういった事情もあり、LWZシリーズを扱う日本スティーベル(ドイツの「STIEBEL ELTRON」という会社の販売代理店)もPHI認定品は輸入していませんでした。

しかし、最近はパッシブハウスジャパンのメンバーなどが率先してダクト式熱交換換気システムを採用するなど、段々と採用例も増えてきました。

きっとそんな背景もあり、日本スティーベルさんは輸入することになったのかな、と想像しています。

 

全館空調システム

ここからは、空調システムについてです。

軽井沢の気候を踏まえると「冬を如何に快適に過ごすか?」をまず考える必要があります。
薪ストーブなどは、輻射暖房としての快適さと火を見ることの安らぎなども得ることが出来ますので、採用例の多い暖房装置だと思います。

しかし、パッシブハウスぐらいの温熱性能がありますと、薪ストーブでは熱量が多すぎて使用頻度があまりありません。
見方を変えると、小さい熱量の設備で良いことになりますが、エアコンは様々な熱量の仕様がありますので、必要な熱量の機種が選びやすい設備です。

よって、今回もメインの暖房装置はエアコンとして、熱交換換気システムと組み合わせて全館空調システムとしました。
尚、軽井沢の場合は、夏は窓開けぐらいで過ごせてしまう日が多いですが、それでも昨今はエアコンが欲しくなるような日もそれなりにあります。

そういったことでも、暖房設備としてエアコンを選択することは、余計な機械を設置する必要がなくなるので、高性能住宅にとっては良い選択肢だと思います。

今回は、大きな吹抜があるのでダクト計画に苦労しましたが、夏と冬で吹き出し口を変更出来るシステムを採用しましたので、今までとは違う全館空調システムになっていると思います。

 

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