column019 Ua値と一次エネルギー

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建築物省エネ法とは

H27年に改正した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(通称、建築物省エネ法)」以前は、省エネ基準と言えば、主に断熱性能のことを示していました。
しかし、先の改正で設備などの性能を評価した一次エネルギー消費量でも省エネ基準の1つとして示せることになりました。

因みに、一次エネルギーとは「石油や石炭、天然ガスなど」のことで、二次エネルギーとは一次エネルギーから作られる「電気や灯油、都市ガスなど」のことを言います。

一次エネルギー消費量の評価は、省エネ法以外にも「BELS」という第三者認証制度もあります。
これは、星の数で性能を評価しますが、省エネ基準を1.0(BEI/評価のベース)として星2の評価としています。最高は星5の「0.8以下(BEI)」としており、一次エネルギー消費量を省エネ基準相当より2割以上削減した、という評価になります。

話しを戻しますが、建築物省エネ法には、躯体の断熱性などを評価する「断熱等性能等級(以下、断熱等級)」と高効率設備の使用を評価する「一次エネルギー消費量等級(以下、エネルギー等級)」の2つの評価基準があります。

両者を単純に比較すると、例えば「フラット35SのBプラン」では、どちらの4等級でも省エネルギー性を満たすことになっていますので、同等級ならば同じような省エネ性であると言えます。

しかし、エネルギー等級の方は高効率設備が評価されるので、断熱性が高いとは言い切れません。
正直、今現在の一般的な設備機器でもそれなりに評価されてしまうので、断熱性をギリギリまで落としてフラット35Sの省エネルギー性を満たそうとしているローコスト系ハウスメーカーもあります。

 

断熱性能を比較する

各等級にはそのような違いがありますが、実際断熱性能を上げると一次エネルギー消費量がどう変わるのかは知っておくと良いかと思いますので、今回はそれらの比較をしてみたいと思います。

使用ソフトは、公的な評価で使われるWEB上の「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」です。

尚、プログラムに入力する各項目の値は、前回のコラム(column018)で使用した「断熱等級4→G1→G2(0.87→0.56→0.46)」時の計算結果及びその根拠数字を使用します。
また、設備仕様(第三種換気、太陽熱やコージェネはなし)や使い方(部分間欠冷暖房)は一般的なもので比較します。

では、計算結果の設計一次エネルギー消費量を記載します。
尚、基準となる「基準一次エネルギー消費量」は78.2(GJ/戸・年)でした。

1)断熱等級4:74.7GJ(BEI:0.94) ※暖房設備が基準より多い。
2)G1:70.3GJ(BEI:0.87) ※暖房設備が基準と同程度になった。
3)G2:69.1GJ(BEI:0.85) ※暖房設備が基準より少なくなった。

結果としては、全ての項目が基準を下回るには、G1レベルの断熱性能が必要なことが分かりました。
また、その時のBEIは0.87ですのでけっこう良さそうに見えますが、実は照明設備を全てLEDにするだけで照明設備の消費量が半分ぐらいになるので、それを省くと0.96になります。

さて、はじめにBELSの最高評価はBEIで0.8以下だとご説明しましたが、先のG2レベルでは0.85までしか行かなかったので、まだ足りないことになります。
なので、BELSで星5がもらえるように今度は設備を変えてみます。
方法としては、給湯設備の消費量が多いので、それを減らすべく各水廻りの水栓を節水系の商品に変更してみます。

4)G2+節水設備:66.2GJ(BEI:0.80)
結果、66.2GJまで一次エネルギー消費量が下がり、星5の評価になりました。

ここでは、節水設備を多少特別扱いしましたが、実際は各メーカーのキッチンやユニットバスを使えば多くの商品が節水設備になっているので、特別なことではありません。
先にも書きましたが、現在一般的になっている設備を使うことでそれなりの評価を得られます。
要は、室内の温熱環境を踏まえてG2レベルの断熱性能として、多少省エネを意識して設備を選んでもらえれば、BELSで星5の評価がもらえます。

尚、星5をねらうだけなら多少施工難易度が上がるG2より「G1+節水設備+αの高効率設備」という方法もあると思いますが、省エネに対する本来の考え方からすると躯体強化が先だと思いますので、やはり断熱性能をG2レベルまで上げる方が理にかなっていると思います。

このようにいろいろと紐解いていくと、一次エネルギー消費量計算結果を見るだけで「その住宅がどのような省エネ住宅なのか」が分かります。
確かに、設備による一次エネルギー消費量削減も必要なことですが、そこに住宅としての「居心地の良さ」が備わっていなければ、一般の方が省エネへの投資に意味を見出すのは少しハードルが高いと思います。

また、一般の方がいわゆる省エネ住宅を評価するのは難しいと思いますので、例えば住宅建築の依頼先を選ぶ際に「省エネ住宅の基本性能として、どのレベルが必要と思っているか?」を確認するために、下記の質問を設計事務所や工務店にされると1つの判断材料になるかと思います。
1.「Ua値(ユーエーチ)」を質問し、0.46以下(G2レベル)を確認する
2.「BELS(ベルス)」の評価を質問し、星5以上を確認する
この2つが狙える建物仕様がベースであれば、ひとまず及第点かと私は思います。

その他、私が所属しているパッシブハウス・ジャパンが監修している「建もの燃費ナビ」というソフトでは、「年間冷暖房負荷」という値で建物性能を評価出来ます。
この値は、Ua値に関する断熱性能に加え、換気負荷や日射熱取得量や日射遮蔽などいわゆる「パッシブデザイン」も数字に反映されますので、Ua値やBELSでは物足りない方は冷暖房負荷の検討も考えては如何でしょうか。

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