House-MS-05 温熱設計

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基本計画

改修から新築に計画変更した本案件ですが、今回は基本計画から工事契約に至るまでの設計の流れを書いてみようと思います。

まず、基本計画を始めるにあたりお客様と共通認識としてあったのが、家の大きさです。

土地がそれなりに大きいので建物も大きく建てられますが、必要以上な規模で計画すると予算がいくらあっても足りません。
また、いわゆる崖地的な土地ということもあり、既存建物の解体や地盤補強などでもかなりの費用が掛かることが予想されました。

そういったことから、必要な部屋等は確保しつつ、極力コンパクトにまとめることを共通認識として、間取り(ゾーニング)の話へと進むことになりました。

今回は見晴らしが素晴らしい敷地でしたし、そもそも、その見晴らしを気に入って中古住宅を購入された経緯もあるため、一般的ではない「2階リビング案」を提示しました。

お客様としては、足腰が弱くなったら?等の将来的な不安を懸念されましたが、まだ何十年も先のことを気にして、その何十年間得られるであろう見晴らしの良さを諦めるのは「勿体ない!」との私の考えも伝えました。

案としては1階リビング案も提示しましたが、結果として2階リビング案を気に入って頂き、その方向で進むことになりました。

 

温熱とエネルギー

いわゆるエコハウスに必要な省エネ性を検討するために重要なことは、主に断熱と日射取得・遮蔽のバランスです。
弊社は、PHPP(若しくは建もの燃費ナビ)でエネルギーシミュレーション(計算)をしながら、それらの仕様を決めていきます。

まずは窓ですが、今回はほぼ真南に向いた高台の敷地なので、日射取得条件は最高です。
従って、あまり難しいことは考えず、それらが最大限に活きる窓配置を検討しました。

窓はYKKAPのAPW430を基本とし、日射取得窓はより高性能であるオスモ&エーデルのエーデルフェンスターを採用しまして、費用対効果が高くなるような計画としました。

次は断熱についてですが、弊社は基本として充填断熱をセルローズファイバーで検討しています。
採用理由は、蓄熱性や防音性、施工精度の良さなどが挙げられます。

付加断熱は、なるべく熱橋を少なくしたいので、ネオマフォームを全面に張る手法で検討します。
厚みは、屋内の防湿シートを張らなくても冬型結露を起こし難くなるt90を基準に考えます。
因みに、防湿シートを張った方が結露には有利なので、何か理由がない限りは省略しません。

また、付加断熱はそれを採用した時点である程度のコスト増になりますが、厚みを薄くしたところで施工費は余り変わらずに材料代のみが価格に反映されることが多く、余りコスト削減になりません。
そういった意味合いから、可能な範囲で厚くするようにしています。

但し今回は、日射取得条件が良かったことと極力コストを抑えたかったことを理由として、付加断熱はt50に留めました。

 

シミュレーション結果

PHPPの結果、暖房需要が23kWh/㎡程度、冷房需要が28kWh/㎡程度になりました。

正直なところ、日射取得条件が良いので、もう少し頑張ればパッシブハウス基準に届きます。
しかし、お客様がそこまで望んでいなかったこととコスト的に難しいところがあり、パッシブハウス基準の暖冷房需要+5kWh/㎡ぐらいを目標に設計は進めました。

結果としては上記の通りですが、実際は外壁のPBを2重張りにしているので、蓄熱を評価することが可能です。
また、1階の南面にアウターシェードや簾などを設置してもらえると、冷房需要低減に効果があります。


※1階に簾等を付けると効果あり。2階は電動外付けブラインドを設置予定。

 

今回はパッシブハウス認定を目指すわけではありませんので、暮らしながらお客様に工夫頂けるように、余白を残した設計となるように心がけました。

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