リノベーションして暮らす
日本には、全国に約820万戸の空き家ストックがあるにも関わらず「新築至上主義」よろしく、今でも年間50万戸以上の新築戸建住宅が建築されています。
また、その戸建住宅たちは、持続可能な社会に適した性能を有する住宅ではなく、建築後すぐに不良ストックとなってしまうような住宅が多く見られます。
そんな好ましくない状況が続く昨今でしたが、ここ数年の間に新築ではなく、戸建住宅やマンションをリノベーションして暮らす、そんな生活スタイルを目指す方々、特に若者が増えてきました。
その背景にはいろいろな理由がありますが「新築でなくてもいい、価値あるものを住まい手自身でリノベしながら、長く大切に使う」そんな地球にやさしいサスティナブルな考えが社会に広がってきたとすれば、それは大変すばらしいことだと思います。
リノベーションの遵法性
さて、初めにも書きましたが、日本は新築を望まれる方が非常に多いので、中古住宅市場がとても未成熟な社会です。
従って、きちんと中古住宅をリノベーションするためには、様々なハードルが存在しているのが現状で、その1つに施工方法が確立していないことが上げられます。
それには理由がありまして、まず新築住宅の場合は、大前提として建築基準法に則り建築する必要があり、建築確認申請という手続きを経て工事をすることになります。
しかし、中古住宅の場合は、その行為が建築(例えば、内装をやり替える行為は「建築」ではなく「修繕」や「模様替」に当たる)でなければ、一般的に建築確認申請が不要です。
これを、好き勝手に工事していい、と間違えて解釈して適当な工事をする会社が後を絶たないため、きちんとした施工方法が育たない要因になっています。
本来は、手続きが不要なだけで建築基準法は遵守しなければいけませんが、これまでリフォーム工事を請け負うような設計事務所や工務店の知識やモラルが不足していたため、そういった状況を生んでいます。
既存不適格建築物
また、建築業界はよく法律が変わるため、既存不適格建築物なる中古住宅がたくさんあります。
これは「建築した当時は法律を遵守していたが、法律が変わったために遵守出来なくなった建物」のことですが、違法建築物(建築当時から若しくはリフォーム工事によって法律を遵守しなくなった建物)との境目が非常に複雑です。
さらに、既存不適格建築物は建築行為をしなければ(確認申請が不要な工事)、一般的に既存不適格建築物のままでも良いことになっていますが、確認申請が必要になる工事の場合は建築物を現行法に適法させる必要があります。
これらも、技術的にもそうですがエンドユーザーの費用負担が大きいため、ハードルを高くしている要因の1つです。
columnシリーズ 「戸建リノベ」
このように、中古住宅をリノベーションすることはとてもすばらしいことですが、多くの複雑な要因が介在しています。
そこで、このcolumnシリーズでは、エンドユーザーのために「こんなことに注意して設計や工事を進めれば良いのでは」ということを、シチュエーションごとになるべく分かり易く丁寧にご説明したいと考えています。
是非、家づくりのご参考にして頂ければと思います。
★今後の予定
・戸建をリノベする-購入編
・戸建をリノベする-調査編