M-BLOG 2026.09月号

投稿者:

プロローグ

弊社・クライアントさん宅にご訪問した際に「太陽光発電の発電量が少ない。。」というお話しを頂きましたが、今年の夏は曇りの日が多いですね。
まあ、容赦ない暑い日が続くよりは良いようにも思いますが、作物の成長などにも影響はありそうな気もしていて、丁度良いとはなかなかいきません。

見方を変えると、既に丁度良いとは無縁の地球環境になりつつありますが、ただ落胆していても仕方ありませんので、今出来ることの中の「丁度良い」を見つけていく、ということが前向きな捉え方だと思いますが、それは家づくりにも言えることだと思います。

繰り返しの話しにはなりますが、物価や金利が上がる状況の中で今までと同じような感覚ではうまくいくこともいかなくなりますので、住まい手・作り手それぞれが知恵を出し合い、それぞれの丁度良いを見つけていく努力が必要かなと思います。

それでは、今号の目次です。
1. 練馬の家-パッシブハウスプラス認定1
2. 練馬の家-パッシブハウスプラス認定2

今回は、練馬の家パッシブハウス認定取得の記念回です(笑)
練馬の家の「一般概要」と「パッシブハウス概要」を書いてみたいと思いますが、パッシブハウス概要はヒートブリッジ解析についてフォーカスしてみます。
他では見られない内容になっていると思いますので、是非お読み頂けると良いかと思います。

 

1.練馬の家-パッシブハウスプラス認定1

本業である住宅設計・監理業務の合間で認定に必要な資料づくりをしていることもあり、多くの皆様をお待たせしておりますが、2025年4月末に竣工しました「練馬の家」がパッシブハウスプラス認定を取得しました。

これより、練馬の家は「練馬パッシブハウス」と名称を変えます(笑)

これで弊社が設計したパッシブハウスは3件目(設計協力を含めると4件目)ですが、実は過去案件は全て東京都以外で関東エリアですらありません。
お膝元である東京エリアでパッシブハウス設計が出来るまでに時間が掛かりましたが、都市部の場合は制約が多いこともありますので、簡単なことでもありません。
そういったことでは、設計の機会を頂けた練馬パッシブハウスのオーナー様には大変感謝しています。

ちなみに、東京都では既に5件のパッシブハウスがありますが、練馬パッシブハウスは23区内では初めてのパッシブハウスで、更にプラス認定のおまけつきとなりました。
今回、23区内にしては敷地条件が良かったこともありますが、良い結果となったことに安堵しています。

さて、練馬パッシブハウスについて、少し概要をご紹介したいと思います。
場所は、東京都練馬区の閑静な住宅街です。
近くに大きめの公園があるなど、自然も感じられる住環境が良い場所です。

土地は南向きの角地で、当初より日射の影響を意識して土地選びをされていたそうですが、弊社にご相談頂いた時は既に土地自体は決まっていました。

練馬パッシブハウスは、5人ご家族の為の家づくりで、、
・断熱等級7や耐震等級3など、いわゆる高性能住宅としたい
・各個室(クローク付き)が欲しい
・リビングに繋がる和室が欲しい
などの性能や間取りに関するご希望はあったのですが、
・デザインに関しては、基本お任せ
というスタンスでした。

ということで、わたしのやりたいことを色々と実現させて頂いたのですが(笑)
以下、その一部をご紹介致します。

◎階段デザイン
個室が多い間取りということもあり、各室へアクセスがし易い中階段を採用しました。
中階段は暗くなりやすいというデメリットがありますが、吹抜を併設して頂側窓から明かりを確保することで昼間でも照明が不要なデザインとしました。
これだけでも個性的な階段にはなったのですが、玄関からの見栄えを良くしたくて、壁面にアクセントを加えるべくタイル張りをご提案しました。
かなり高額なタイルをご提案したのですが、ご採用頂けまして、、
もう二度と出来ないかもしれない(笑)、そんな階段になったと思います。

 

◎モダン和室(奥様個室)
奥様の個室は「畳敷の個室が良い」とのご希望を頂いたのですが、単純な畳和室にしてもなあ、と思案した結果、
・サステナブル和紙を使ったハレの部屋
というデザインコンセントで検討することにしました。
具体的には、CCF(一社サーキュラーコットンファクトリー)が作っている「繊維ゴミから出来た和紙」を壁や天井・引戸の仕上げなどに使ったモダン和室です。
以前に、追分宿・平屋のパッシブハウスでも使った材料ですが、今回も天井仕上げと障子和紙として採用。
また、壁は(他の部屋と同じ)パーシモンEウォールという柿渋タンニンの入った漆喰系左官材で仕上げたのですが、ここまでの要素である「柿×和紙」から「柿渋和紙」も採用することに。
入口引戸は太鼓張り障子仕上げですが、アクセントに収納引戸は柿渋和紙としました。

入口引戸に特別感を持たせて「ハレ」となるように、にじり口をイメージしたR加工下がり壁としましたが、「他の居室とは違う」少し特別な部屋としての設えになったと思います。

 

◎ブラック塗装した杉板外壁
ブラックの杉というと「焼杉」をイメージしますが、少し和風よりで少し懐かしさを感じる材料だと思っています。
それ自体は悪いことではないですが、練馬の家は「ど真ん中の和モダン」(要は、和でもモダンでもない)にしたかったので、焼杉は選択肢にはありませんでした。
そもそも、着工するまではウッドロングエコ塗装(要はクリア塗装)の予定でした。

それが、着工してから急に「黒くしたい」という思いが強くなり、お施主様にお願いして黒く塗装させてもらうことにしました。
お施主様にはやりすぎてないか?と心配の声も頂きましたが、結果として、都市部の住宅街では見ない個性のある外観デザインとなって良かったと思います。

 

2.練馬の家-パッシブハウスプラス認定2

実は、パッシブハウスには「クラシック」「プラス」「プレミアム」という3つのカテゴリーがありまして、カテゴリーが上がる毎に
・エネルギー消費量が少なく、たくさん電気(エネルギー)を作っている
といった内容になっていますが、基本性能も良くならないとエネルギー消費量削減にはなりませんので、クラシックよりはプラスの方が断熱性能も高いことが多いとは思います。

今回はプラス認定を取得出来たわけですが、もともと狙っていたわけではなく、パッシブハウス認定のためのシミュレーションとは別に、窓の納まりや日射取得・遮蔽などのデザイン性やクライアントのご希望なども考慮して設計を進めた結果としてプラス認定になったという感じです。

さて、ここではパッシブハウスを目指す要素の中で「ヒートブリッジ解析」に絞って書きたいと思います。
日本では殆ど目にすることがなく、なかなかマニアックな話になりますが、これを知っていると温熱設計の世界が広がるといっても過言ではありませんので、ご興味を持って頂けると嬉しいです。

ヒートブリッジとはいわゆる「熱橋」のことですが、少しかみ砕いて表現をすれば「断熱部の弱点」のことを熱橋と呼びまして、例えば、木造住宅でいえば「木部」がその弱点になります。

もう少し詳しくご説明します。
例えば、木造の壁を想像した時に、
・910mm置きに柱、その間の455mm間には間柱
という壁を構成する材料がありまして、その455mmの間に断熱することが充填断熱です。

要は、壁の充填断熱は、壁全面が断熱材で構成されているわけではなく、一定間隔で木部が存在し、その木部は熱が逃げやすい場所ということになります。
省エネ計算では、「木部率」という表現で壁の熱貫流率(U値)を計算してしまう為に熱橋というイメージではなく、「断熱性能を悪くしている(U値を悪くする)要素」という程度の認識だと思います。

これは、木造住宅の場合は、木材が他の構造部材(コンクリートや鉄骨)と比較して熱伝導率が良い為、問題視されていないことが先のような認識になる要因とも言えますが、パッシブハウスのように性能が上がってくると軽視できない、という見方に変わって来ます。

よって、温熱性能がどのレベルにあるのか?によって、何を検討しないといけないのか?が変わって来るわけですが、パッシブハウスを知らない方はその見分けすら出来ないと思いますので、まずは「パッシブハウスを知る・学ぶ・実践する」ということが非常に重要だと思います。

前置きが長くなりましたが、
ここからは練馬パッシブハウスの熱橋(以下、ヒートブリッジ若しくはTB)について書いていきます。

先の通り、日本の省エネ基準ではヒートブリッジの影響を詳細に計算(以下、解析)することはほぼありません(一部、基礎ペリメーター部を除く)が、パッシブハウスの場合は各部位で解析を行います。
具体的には、以下の通りです。
・屋根と壁の取合
・2階梁・桁部
・土台廻り(外壁と基礎の取合)
・ペリメーター部(基礎と地盤の取合)
・窓の取付部(窓枠と躯体の取合)

主にこれらの要素で検討するわけですが、TB解析は詳細検討ですから、、
・部材(木材や窓枠等)若しくは大きさが変更になる毎に解析が必要
になります。
具体的に書くと、窓取付部で言えば、窓種毎に解析(窓取付部はインストールΨ解析と呼びます)が必要ですが、取付位置が違っても解析が必要ということになり、練馬パッシブハウスでは実に36箇所のインストールΨ解析を実施しています。

私がこれまでに関わったパッシブハウスでは10~15箇所ぐらいでしたので、2倍以上の数があるわけですが、その要因の1つが設計事務所的なデザイン検討によるもので、言い方を変えると、部位1つ1つで最適解を検討する、という感じです。
実際は、なるべく同じ納まりの方が現場の混乱も少ないのですが、、
この話を続けると長くなるのでここでは割愛したいと思いますが、1つだけインストールΨ解析事例の比較をご紹介します。

条件は以下です。
・窓は、APW430防火のFIX窓(左右枠部)です
・比較対象は「①半外付(通常納め)」と「②内付」です

①半外納めの場合

付加断熱部の下地に取り付けていますが、いわゆる半外納めです。
一般的な納まりの為、防水納まり上で留意する点は特にありません。
解析の結果、Ψ(プサイ)値は0.071(w/mK)となっています。

 

②内付納めの場合

付加断熱部ではなく、躯体(柱)部につけています。
輸入窓など窓枠にフィンが付いていない窓では一般的な納まりです。
デメリットとしては、防水納まりが通常とは異なるために施工上留意する必要があります。
解析の結果、Ψ値は0.053(w/mK)となっています。

比較した結果、②内付の方が低いΨ値のために温熱的には有利側となっていますが、基本的に断熱構成(厚さ)の中心に近い位置の方が低い値になります。
また、外観デザイン的にも奥行き感のある納まりとなる為に印象が良くなります。

パッシブハウスと言えど、温熱性能のみにフォーカスして設計はしていません。
また、設計事務所と工務店で考え方も違いますし、設計者それぞれでも違うと思います。

要は、家づくりの要素の1つとして「パッシブハウス」があるだけですが、パッシブハウスを目指すのであれば、温熱性能に関しては詳細検討(解析)が必要だと言うことです。

TB解析の良いことの1つが「細部の納まりでどのぐらいの差異があるのか?」を知れることです。
これは、温熱設計を進める上で重要な知識の1つになり得ると思います。
先ほども書きましたが、パッシブハウスを知り、学び、実践することをお勧めします。

最後に、9月30日にパッシブハウスジャパン関東支部でヒートブリッジ解析を題材としたセミナーを開催致しますので、ご興味のある方は是非ご参加頂ければと思います。

―――――

今号もご愛読ありがとうございました。
次号以降も宜しくお願い致します。

―――――

執筆者の代表・丸山は、
Certified Passive House Designer (パッシブハウスに関する資格)
住宅医協会認定・住宅医 (改修工事に関する資格)
両資格を有している国内唯一の建築士です。

 

関連記事

  • M-BLOG 2025.05月号M-BLOG 2025.05月号 プロローグ 桜の季節も終わり、アッと言う間に気温が20℃を超える季節がやって […]
  • M-BLOG 2025.04月号M-BLOG 2025.04月号 プロローグ 今年から始めたM-BLOGですが、4回目の投稿となります。 段 […]
  • M-BLOG 2026.08月号M-BLOG 2026.08月号 プロローグ 梅雨もあけて、本格的な暑さがやってきましたね。 もう、おかしな […]
  • M-BLOG 2026.05月号M-BLOG 2026.05月号 プロローグ 今年もGWが始まりました。 個人的には、休みというよりもゆっく […]
  • M-BLOG 2026.04月号M-BLOG 2026.04月号 プロローグ 毎年この時期は、天候が不安定なことも多いとは思いますが、今年はい […]
  • M-BLOG 2026.02月号M-BLOG 2026.02月号 プロローグ あっという間に年が明けて一か月が経ちましたね。 皆さん、年始に […]