column024 エコハウスとは何か

温室効果ガスの影響により地球温暖化が叫ばれてずいぶん経ちますが、近年は日本においても台風などの災害による影響が全国でみられるように異常気象の話しもよく耳にします。

そんな時代背景もあり住宅業界でも、省エネルギー住宅や低炭素住宅、ZEHなど(以下、省エネ住宅と呼ぶ)、地球温暖化に配慮した住宅の造り方を推奨しています。また、これらの省エネ住宅は国の住宅政策の一環でもあるので、何らかの基準が存在します。
エコハウスも省エネ住宅の1つとして使われることがある呼称だと思いますが、その使われ方はまちまちです。ただ自然素材を使った住宅をエコハウスと呼ぶ会社もあれば、パッシブデザインの住宅をエコハウスと呼ぶこともあります。
何故そういったことが起きるかというと、明確な基準がないからです。しかし、字面として分かり易く親しみやすいため、いろいろな場面で使われることになります。
従って、エンドユーザーが家づくりのパートナーを探す場面において、エコハウスという言葉がそれなりの頻度で出て来るため、「エコハウス=良い住宅」のように理解してしまっても仕方がないことでもあります。
そこで、エコハウスの基準的なものがないか少し調べてみると、環境省で「エコハウスモデル事業」という政策があり、そこではいくつか基準というか方針みたいなものを示しています。
1)環境基本性能の確保・・・断熱や気密、日射導入、通風などのパッシブデザインを十分理解し実践すること。また、自然素材の利用。
2)自然・再生可能エネルギー活用・・・地域の特徴をよく読み取り、太陽光、太陽熱、風、地中熱、水、バイオマス、温度差を上手に生かす技術や工夫の活用。
3)エコライフスタイルと住まい方・・・集まって住むための新しい仕組みづくりや、農地付き住宅のような新しいライフスタイルの提案。
4)地域らしさ・・・周辺環境、材料、工法、デザインなど、地域の特色を生かした住宅であること。

多少端折りましたが、何となく言わんとしていることは理解して頂けるでしょうか。
確かに、日本で言われる「エコ」っぽい感じは伝わってきますが、基準としては曖昧と言わざるを得ません。

省エネ住宅を語る上で重要なことは、数字で性能を示すことです。
国の政策では、Ua値(熱の伝わり易さ)を使うことが多いですが、それではパッシブデザインは評価されていません。また、一次エネルギー消費量で評価する場合もありますが、それでは範囲が広すぎて家の快適度合いは伝わりにくいです。
やはり、暖冷房負荷での評価が、Ua値の先の評価方法としては妥当だと思います。

住宅に比べれば価格が圧倒的に安い自動車でも、ガソリン1Lでどのぐらい走行出来るか?が数字で分かります。住宅でも、どのぐらいのエネルギーを投入したら家を暖かく涼しく維持出来るか?が分かる方が良いと思います。
エンドユーザーの方々は、エコハウスが良いのでなく「何がどのぐらいエコなのか?」をしっかり確認させてもらえるパートナーを選ぶようにすることが、本当のエコハウスに出会える一歩です。

column023 パッシブハウスの間取り

家の大きさや広さを表す言葉として、○LDKや床面積□坪などがありますが、それだけではどんな家なのかは分かりません。
そのどんな家なのか確認するのに良い方法が、間取りを見ることです。
間取りとは、どんな空間構成(部屋の集まり)で出来ているかを、平面的に確認出来るものです。プランニングやゾーニングなどと言ったりもします。

間取りを検討する上で大事なことは、各空間がどのようにつながっているのか?です。その空間のつながり方によっては狭く暗く感じたり、その逆に広く明るく感じたりします。
そして、その中でも大事なことは、玄関と階段の位置だと、私は考えています。
両方とも空間を動く距離とデザイン性に影響を及ぼします。また、階段は上下階をつなぐもので、当たり前ですが1階と2階で同じ位置にある必要があるので、上下階の間取りを考慮して位置を決めなくてはいけません。また階段の見方を変えると、空間を緩やかに隔てたり遮ったり、デザインのアクセントなどにもなりますので、用途以外に意味を持たせるのか否かも考えたりします。

さて、パッシブハウスに代表されるような高気密高断熱な高性能住宅は、家中どこにいても温度を一定に保つことが出来るので、各部屋の室温を保つために空間を閉じる必要がありません。これは、間取りを検討する上で大事な要素で、パッシブハウスにすると空間を緩やかにつなげたり閉じたりするような間取りをやり易くして、家族の存在を感じやすい家づくりの可能性が広がります。

壁などの隔たりがなく空間をつなげるということは、広く明るく感じさせることにつながります。それは、狭小敷地などで家の広さを確保出来ないとしても、間取りの工夫で広くも明るくも感じれることを意味し、それを可能にするのがパッシブハウスではないかと考えます。

パッシブハウスにする為には、少なからず今現在一般的に建てられている家よりイニシャルコストが掛かります。なので、費用が高額なので建てられないとの話しもよく聞きます。
しかし、ランニングコストも考えて検証すれば、トータルコストでは高額にはなりません。
また、家を狭くしても間取りの工夫で同じような広がりを感じることが出来れば、家を小さくすることで費用を捻出し、パッシブハウスにすることも可能です。

単純な広さによる満足度もありますが、工夫によって得た満足度にこそ心を惹かることがある、と私は思っています。
パッシブハウスは、健康で快適に暮らせます。
間取りを工夫することによって、その恩恵を感じてみませんか。

column022 住み替えられる街づくり

住み替えられる街づくり、これは私が10年ほど前に思いついたことですが、もう少し詳しく書くと「様々な世代の人々が、その時の生活スタイルに合わせて家を住み替えられる街」のことです。

日本人の多くが「住宅購入は、一生に一度の買い物」と思っています。そのような考えに至る理由は簡単で、家の価値が下がるからです。例えば、住宅購入の10年後に生活環境が変わったから新居が欲しい、となっても価値の下がった今の住まいを元手に新しい家を買うことは出来ません。従って、その家に一生住み続けることを前提に家を買います。
従って、多くの方は一生に一度の買い物だと思い、どうなるのか分からない20年後30年後を占い師の如く予想して今払える限界の金額を払い、家を造ります。
ここで誤解がないように書いておきますが、家の耐久性や耐震性をきちんと考え、長く(子供や孫の世代まで)住まわれる家を造る様な場合は価値観が変わって来るので、いわゆる「一生に一度」とは違う意識が強くなって来ると思っています。
私の言う価値が下がる家は「古くなる=悪くなる」そんな家のことを言っています。

ここで少し視点を変えますが、今の日本の家づくりは愛着が持ちにくいものになっていると思います。それは何故かと言うと、内外装に使うサイディングやビニールクロスは、安くてそれっぽく見える材料として重宝されていますが、結局それらは石でもタイルでもなければ、漆喰や木材でもありません。造った時がその材料のピーク(一番いい状態)で、要は「古くなる=悪くなる」でしかありません。
愛着とは「古くなるごとに味わいが出てこそ湧く」と私は思っています。それには「古くなる=味わいが出る」ような、いわゆる自然素材の材料を使わないとそうはなりません。そういった材料を使った家は、メンテナンスを繰り返し手塩にかけると味わいが出て、それが愛着となって表れてくると思います。

ハウスメーカー(以下、HM)に代表するような建売住宅は、安価でメンテナンス性に優れたそれっぽく見える材料で造っています。メンテナンス性に優れた材料は、HM側から見ると「クレームが少ない材料」とも言えます。HMの設計者も自然素材の良さは知っていますが、例えば無垢材などは季節によって変形したりするので、それがクレームにつながるので使いません。見方を変えれば、きちんと説明すれば良い気もしますが、そもそも建売住宅購入者は自然素材の良さを求めていないので、説明してもクレームになってしまう背景はあると思います。

こうして出来た建売住宅は、基本的にターゲット世代を決めて計画をするので、大体同じ世代の方々が購入します。また、間取りや広さなども同じようなものが多いです。これは、近隣関係として価値観が合い易いと思う反面、多様性に欠けているとも言えます。建売住宅は、一次所得者が購入することが多いので始めは皆若くて良いですが、時と共に年齢を重ね、いつしか「古くなる=悪くなる」街並みと共に廃れて行くことにもつながります。

これって、何か悲しくないでしょうか?

そこで私が考えたのが「住み替えられる街」です。
・その街は、耐久性や耐震性、温熱性をきちんと考え、長く住まわれる住宅で構成されています。
・その街は、長く愛されるような自然素材で造られた住宅で構成されています。
・その街は、小さい住宅から大きい住宅まで、いろいろな世代の方が住めるような家で構成されています。

そんな街で、私はこんな物語を想像しています。
 夫婦とまだ小さい樹くんの3人家族の新井さんは、その街で2LDKの小さいお家を買いました。子供はもう一人ぐらいは欲しいですが、今のところその予定はないですし、子供が二人になったとしても10年ぐらいは住めそうなので、当面は問題がありません。
 その後、子宝には恵まれなかったのでそのまま住み続けられそうでしたが、5年後のある日、夫の両親と同居せざるを得ないことになりました。さすがに、その小さいお家では手狭になるので、少し大きなお家を探すことにしました。その街で探したところ、3LDKで1階に和室のある程よい広さのお家が見つかりました。きちんと手入れをしていた小さいお家は適正に評価され、程よい広さのお家を買うのに十分な元手となりました。新井さんは小さいお家を売却し、程よい広さのお家を購入しました。
 更に10年が経ったある日、小さい子供だった樹くんも大きくなり、就職して会社の寮に住むことになったので、家を出て行くことになりました。
 また更に10年後、両親が共に他界し程よい広さのお家に夫婦二人になりました。樹くんも会社の寮は出ましたが、今はアパートで独り暮らしをしています。いろいろ検討した結果、夫婦は自分たちが元気なうちに小さいお家に引っ越すことにしました。始めに暮らした2LDKのお家が一番良かったですが、現在は別の家族が暮らしていたので、別の2LDKのお家を見つけ購入することにしました。もちろん、きちんと手入れをしていた程よい広さのお家を元手に買うことが出来ました。
 その5年後、樹くんもいつしか結婚し、子供が一人の家族を持っていました。そんな樹くんは今の自分たちに見合った家を買おうとしていますが、1つの思いがありました。
「会社の寮や独り暮らしのアパートは、住み心地が悪かった。家を買う時は、住み心地が良い家にしたい。」
そうです、住み心地が良い家で暮らした経験のある樹くんは、またそういった家で暮らしたと思っていました。樹くんは、その街とは別の「住み替えられる街」に小さいお家を買いました。

これは1つの例えで、「住み替える」ことと「愛着」がそぐわない気もします。確かに、ご自身の身内で代々住み継いで行ければ、それが一番良いことだと思いますが、今の時代背景を考えるとそういう訳にもいかない気がします。だとすれば、他人だとしても愛着を持って住まわれた家を住み継いで行くことも大事だと思います。
その街の住民が皆それぞれの家に愛着を持ち、住み替え住み継いで行く。
いずれ同じ家に住む時が来れば、それはそれで懐かしさという愛着が湧くことであり、いつの日か自分たちが暮らした家に孫たちが住むことになれば、そんなうれしいことはないでしょう。

この街づくりで私が重要視していることは、多様性と経験です。
この多様性を実現するには、未来を見据える想像力を持った建築士の知識とそれを形にする職人の技術が必要です。それにより家の価値が上がり、一生に一度的な意識とは違うものの見方で家づくりが出来ると思っています。また、居心地の良い住まいの経験は、それ以下の家に住めなくなるという価値観を生み出します。

最後に、これらの感性を持つには「家とは自分たちのモノではなく、地域社会のモノだ!」との観点が大事でこれからの世の中に必要なことだと思いますが、皆さんの思いは如何でしょうか。

column021 何故断熱なのかを考える

我々の生活の中で感じる快適さに影響を及ぼす要因はいろいろありますが、基本的には聴覚や嗅覚などの五感にとってどう感じるか?が重要なことです。
それらは、建築の室内環境としては美的要因・心理的要因・生理的要因・機能的要因と表現され、それぞれに五感が単独で又は相互的に影響を与えながら、我々は快適さを判断しています。
その中で生理的要因(いわゆる五感に近い要因)が、主として建築環境工学で取り扱われており、我々が快適性の指標としている「熱と空気に関する温冷熱環境」もその中に含まれています。

さて、室内の温熱感覚の要素の中で、一番影響を与えているものは何でしょうか?
要素としては、気温(室温)を始め、相対湿度や放射(簡単に言うと、壁や天井の表面温度)、気流などが影響します。また、これら屋内環境側の要素の他に人体側の条件として、代謝量(Met/メット)と着衣量(clo/クロー)が関係します。
このように快適性に関わる要素はいくつもありますので、快適な温熱感覚を検討することは非常に複雑です。また、快適にはエネルギー代謝量や人種、老若男女などの違いによる個人差も影響するため、それらの検討をより難しくしています。
従って住宅建築をする場合は、その個人の感覚の違いもきちんと把握しておくことが重要ですが、同一建物内に暮らす方それぞれにベストな環境を作るのは容易ではありません。
では、どうすれば良いのか?
それは「温熱感覚の要素の中で、影響力のあるものから順番に対策を考えて行く」ことです。
そこで、先の質問に戻るわけですが、答えは「気温」です。当たり前の話しかもしれませんが例えば、服を着るとか脱ぐとかも、基本は気温によって決まります。運動して暑いや寒いも気温によって感じ方が違います。
このように、最も支配的となる気温をコントロールすること、が始めに対策すべきことです。

室温コントロールに最も有効なのが建物の断熱性能を向上させることです。この断熱をすることは、屋外環境からの影響を減らすことであり、夏であれば日射による熱が屋内に侵入してくることを減らします。高断熱であればあるほど効果があります。また、断熱することは快適な環境を作るためのふり幅を減らすことにも寄与します。これは、少ないエネルギー投入で快適性を得られることにもつながり、省エネにもなります。それに、高断熱にすると壁や天井からの放射温度も下がりますので、屋内環境側の2要素に対して効果があると考えられます。

ここで、断熱性能を上げないで快適性を得る方法を1つ考えてみますが、要素としては気流を使い検討します。
分かり易く例えると、通風で涼を得る方法です。
確かに春や秋は気温の快適性が高いので、通風により快適性を向上させることも可能かと思います。しかし、夏はどうでしょうか。夏の場合は、気温による快適性が低いので、それなりの通風がないと快適性は上がりません。更に、低断熱だとすると壁からの熱放射もあるため、通風による快適性の向上は相当厳しいと思います。
要は、断熱もしないで通風に頼ることは、もっとも効果のある要素を蔑ろにして、風が吹かなければ効果のない気流に快適性を委ねることを意味します。
さすがに、それは無理があると思いませんか。
家づくりとして通風での涼も大事な要素ですが、その前にやるべきことがあるのではないでしょうか。

温熱環境としての快適を得る方法はいろいろありますが、まずは断熱(と気密)をすることです。こうして建物性能としてベースを作っておくことで、このあとで検討すべき要素の解決が容易になったり、扱いやすくしてくれます。
一般的な木造住宅であれば、G2レベル(HEAT20)までの断熱性能ならデザイン性を損なうことなく可能だと思いますので、最低限はそのレベルを目指すべきかと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column020 空間と建築費を考える

「必要なものだけを単純化して、美しいところを備えていれば、居心地よい家になる」
これは、志賀直哉が「住宅に就いて」書いた随筆の一文です。

何を持って居心地が良いかは人それぞれかと思いますが、この一文から感じられる居心地の良さが私は好きです。
私は設計する上でお客様のご要望を伺いながら、それらを如何にシンプルにまとめられるかを考えます。中にはなかなか答えにたどり着けず、考えを2つも3つも只々重ねることがありますが、そういった時はだいたいうまく行っていない証拠です。なので、あるところまで考えるともっとシンプルな考えがあるはずだと初心に帰ります。そして、頭を整理し本当に必要なモノ・コトは何なのかを考えます。
住宅設計とはこれの連続であり、そこへたどり着くには技術や知識、経験が必要だと思っています。

住宅に必要な要素は、耐久性や耐震性、温熱性能など多岐に渡ります。また、それらにお客様のご要望が加わり、更に考える要素を複雑にしていきます。しかし、それら必要な要素やご要望をただ単純に重ねていくだけでは、建築費がどんどん膨らみます。如何に同じ性能の建物を、よりシンプルで合理的な方法で、美的な建築をデザインするのか、が重要だと思いますし、それらを考えるのが我々建築士の仕事です。
家を建てる・造る状況において夢や希望が無い人はいないと思いますが、それらが合理的に考えられている方はほとんどいません。我々はプロとして様々な提案やアイディアを出すわけですが、それらがお客様の意にそぐわないと思わせることもあります。そういった場合、お客様側も夢や希望に縛られず、フラットに物事を捉えられる状況にないとより良い選択が難しくなります。

その選択を難しくする要素の1つに「今の生活スタイルをそのまま維持したい」という要望があります。確かにそれが重要な時もありますが、それは今までの家に合わせて培ってきたスタイルであって、継続すべきスタイルとは限りません。家を建てる・造るということは、いろいろな事をリセットして新たなスタイルを築いていけるチャンスでもあります。
次に多いのは、広さに対するこだわりです。狭くて良いとの希望を持たれる方は余りおらず「広くしたいが、安く建てたい」が多くの方が思われる事だと思います。希望としては十分理解しますが、それは多くの建築費が掛かることにもつながり、広さを維持したまま安くすることは、性能や品質が下がることを意味します。ここで、性能や品質が下がることを伝えてくれる設計事務所なり工務店は良心的かと思いますが、金額で勝負しているような工務店はそのことを言ってくれるとは限りません。

念の為書きますが、真摯に住宅建築に取り組んでいる多くの会社は、性能や品質が下がらずに安くする努力(VE/バリューエンジニアリング)を行っていますが、それには限界があるということはいつも心のどこかに留めておいて頂きたいと思います。

建築費で言うと、その目安として坪単価というものがあります。おおよその広さに対する総額を知りたい時に確認することが多いですが、坪単価は性能や品質によって大きく変わります。なので、本来であれば「どのぐらいの性能で、品質はどのグレードを求めているのか」をきちんと伝えないと、その単価はあまり意味を成しません。
また、広さについても「何故その広さが必要なのか?」を考える必要があります。確かに、最低限として必要な広さはありますし、空間の広さが豊かさをもたらすこともあると思います。しかし、住宅に必要な広さとは空間の寄せ集めではなく、奥行感や陰影などによって豊かに表現された空間ではないでしょうか。

住宅建築には、多くの費用が掛かります。更に言えば、やみくもに造るだけではいくら予算があっても足りません。従って、「シンプルで合理的=必要なものだけを単純化」で「美的な建築をデザインする=美しいところを備える」ことは、建築費を削減しながらも居心地の良い家へとつながることかと思いますが、皆さんはどのように感じたでしょうか。

column019 Ua値と一次エネルギー

H27年に改正した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(通称、建築物省エネ法)」以前は、省エネ基準と言えば、主に断熱性能のことを示していました。しかし、先の改正で設備などの性能を評価した一次エネルギー消費量でも省エネ基準の1つとして示せることになりました。
因みに、一次エネルギーとは「石油や石炭、天然ガスなど」のことで、二次エネルギーとは一次エネルギーから作られる「電気や灯油、都市ガスなど」のことを言います。

一次エネルギー消費量の評価は、省エネ法以外にも「BELS」という第三者認証制度もあります。これは、星の数で性能を評価しますが、省エネ基準を1.0(BEI/評価のベース)として星2の評価としています。最高は星5の0.8以下(BEI)としており、一次エネルギー消費量を省エネ基準相当より2割以上削減した、という評価になります。

話しを戻しますが、建築物省エネ法には、躯体の断熱性などを評価する「断熱等性能等級(以下、断熱等級)」と高効率設備の使用を評価する「一次エネルギー消費量等級(以下、エネルギー等級)」の2つの評価基準があります。
両者を単純に比較すると、例えば「フラット35SのBプラン」では、どちらの4等級でも省エネルギー性を満たすことになっていますので、同等級ならば同じような省エネ性であると言えます。しかし、エネルギー等級の方は高効率設備が評価されるので、断熱性が高いとは言い切れません。正直、今現在の一般的な設備機器でもそれなりに評価されてしまうので、断熱性をギリギリまで落としてフラット35Sの省エネルギー性を満たそうとしているローコスト系ハウスメーカーもあります。

各等級にはそのような違いがありますが、実際断熱性能を上げると一次エネルギー消費量がどう変わるのかは知っておくと良いかと思いますので、今回はそれらの比較をしてみたいと思います。
使用ソフトは、公的な評価で使われるWEB上の「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」です。
尚、プログラムに入力する各項目の値は、前回のコラム(column018)で使用した「断熱等級4→G1→G2(0.87→0.56→0.46)」時の計算結果及びその根拠数字を使用します。また、設備仕様(第三種換気、太陽熱やコージェネはなし)や使い方(部分間欠冷暖房)は一般的なもので比較します。

では、計算結果の設計一次エネルギー消費量を記載します。
尚、基準となる「基準一次エネルギー消費量」は78.2(GJ/戸・年)でした。
1)断熱等級4:74.7GJ(BEI:0.94) ※暖房設備が基準より多い。
2)G1:70.3GJ(BEI:0.87) ※暖房設備が基準と同程度になった。
3)G2:69.1GJ(BEI:0.85) ※暖房設備が基準より少なくなった。

結果としては、全ての項目が基準を下回るには、G1レベルの断熱性能が必要なことが分かりました。
また、その時のBEIは0.87ですのでけっこう良さそうに見えますが、実は照明設備を全てLEDにするだけで照明設備の消費量が半分ぐらいになるので、それを省くと0.96になります。

さて、はじめにBELSの最高評価はBEIで0.8以下だとご説明しましたが、先のG2レベルでは0.85までしか行かなかったので、まだ足りないことになります。なので、BELSで星5がもらえるように今度は設備を変えてみます。方法としては、給湯設備の消費量が多いので、それを減らすべく各水廻りの水栓を節水系の商品に変更してみます。
4)G2+節水設備:66.2GJ(BEI:0.80)
結果、66.2GJまで一次エネルギー消費量が下がり、星5の評価になりました。

ここでは、節水設備を多少特別扱いしましたが、実際は各メーカーのキッチンやユニットバスを使えば多くの商品が節水設備になっているので、特別なことではありません。
先にも書きましたが、現在一般的になっている設備を使うことでそれなりの評価を得られます。要は、室内の温熱環境を踏まえてG2レベルの断熱性能として、多少省エネを意識して設備を選んでもらえれば、BELSで星5の評価がもらえます。
尚、星5をねらうだけなら多少施工難易度が上がるG2より「G1+節水設備+αの高効率設備」という方法もあると思いますが、省エネに対する本来の考え方からすると躯体強化が先だと思いますので、やはり断熱性能をG2レベルまで上げる方が理にかなっていると思います。

このようにいろいろと紐解いていくと、一次エネルギー消費量計算結果を見るだけで「その住宅がどのような省エネ住宅なのか」が分かります。
確かに、設備による一次エネルギー消費量削減も必要なことですが、そこに住宅としての「居心地の良さ」が備わっていなければ、一般の方が省エネへの投資に意味を見出すのは少しハードルが高いと思います。
また、一般の方がいわゆる省エネ住宅を評価するのは難しいと思いますので、例えば住宅建築の依頼先を選ぶ際に「省エネ住宅の基本性能として、どのレベルが必要と思っているか?」を確認するために、下記の質問を設計事務所や工務店にされると1つの判断材料になるかと思います。
①「Ua値(ユーエーチ)」を質問し、0.46以下(G2レベル)を確認する
②「BELS(ベルス)」の評価を質問し、星5以上を確認する
この2つが狙える建物仕様がベースであれば、ひとまず及第点かと私は思います。

その他、私が所属しているパッシブハウス・ジャパンが監修している「建もの燃費ナビ」というソフトでは、「年間冷暖房負荷」という値で建物性能を評価出来ます。
この値は、Ua値に関する断熱性能に加え、換気負荷や日射熱取得量や日射遮蔽などいわゆる「パッシブデザイン」も数字に反映されますので、Ua値やBELSでは物足りない方は冷暖房負荷の検討も考えては如何でしょうか。

column018 断熱とUa値を考える

2020年に省エネ基準が住宅レベルでも法制度化されようとしていますが、未だ断熱性能を良くすることに二の足を踏んでいる方々がいらっしゃいます。初めから毛嫌いしている方もいれば、計算などが良くわからない為に思考停止している方もいるのかもしれません。
「そんな難しいことではないし、悪いものでもない」と思いますが、計算という数学的要素がコトをややこしくしているのかもしれません。
そこで今回は、そんな方々がまず何を目指したら良いか、が分かるようになるべく平たい計算を用いて答えを探してみようと思います。

フラット35や長期優良住宅などで住宅の断熱性を評価するために「Ua値」という指標を使います。
「Ua値」とは「外皮平均熱貫流率」のことで、外気等に接する天井・壁・床及び開口部からの熱の通しやすさの平均を表しており、単位を書くと「W/㎡・K」になります。これは、数字の大きい方が熱を通しやすいという意味であり、「数字が大きい=断熱性が悪い」と言うことも出来ます。

Ua値の基準には、公的な基準である省エネ等級(以下、断熱等級4)やZEH、又は民間のHEAT20(以下、G1若しくはG2)で定めている基準などがあります。「断熱等級4→ZEH→G1→G2」の順で厳しい値になりますが、東京23区で言えば「0.87、0.60、0.56、0.46」という値になります。
これだけ見ても、どんな断熱材や窓を使えば良いのかイマイチ分からないと思います。そこで「それぞれの値で断熱材や窓がどう違うのか?」を検証してみます。

基準は断熱等級4の0.87とし、その仕様(以下、基準仕様)は下記とします。
①木造2階建て 延床面積 116㎡、②窓面積の合計 ①の18%位、③天井断熱 高性能グラスウール16K(以下、HGW16)t=90、④壁断熱 HGW16 t=90、⑤床断熱 XPS t=30 ⑥窓性能 Uw=4.65、η=50
尚、使用ソフトは住宅性能評価・表示協会でDL出来る「外皮計算シートEXCEL」です。

因みにですが、上記の中で天井と床は「旧省エネ等級4」で使用すべきだった断熱材より薄くなっています。要は、多少断熱性能を落としても同じ等級4の評価がもらえることになった、ということです。これを知っていて、断熱性能を落として省エネ基準を得ているローコスト系ハウスメーカーもあります。

では、基準仕様を踏まえながら計算を始めてみましょう。
まずは、旧省エネ4等級の仕様規定を満たしていない天井と床を変更します。
・③:HGW16 t=160
・⑤:XPS t=65
結果、Ua値が0.79になりました。

次に、施工に無理のない範囲で種類や厚みを変えてみます。
・③:厚みが変えやすい吹込みタイプのGW10Kに変更し、t=300とします。
・④:柱太さ同等のt=120にします。また、性能をHGW40にUP。
・⑤:大引きや根太の成を踏まえ、t=90にします。
結果、Ua値が0.71になりました。

次は、施工上は何も変わらない窓を変えてみます。
・⑥:「アルミ樹脂複合枠+ペアガラス(A12)Uw=3.49」に変更。
結果、Ua値が0.62になりました。

ここまでで分かることは、窓変更が一番効果的(0.09削減)である、ということです。これは見方を変えると、今まで一般的に使っていた窓の性能が悪すぎる、ということです。窓性能で言えば、日本より寒い地域が多いヨーロッパの国々はまだしも、同じアジアの韓国や中国より悪いのが現状です。

さて、施工に無理のない範囲で変更を繰り返し、Ua値が0.62まで来ました。ここまで来ると、ZEH基準0.60又はG1基準0.56までもう少しです。
では、効果の高い窓でもう少し良くしてみましょう。
・⑥:「樹脂枠+Low-Eペアガラス(A12)Uw=2.33」に南面のみ変更。
結果、Ua値が0.56になりました。

いよいよ最後の変更です。
ここまで来ると、同じような施工方法及びなるべく安価な商品で性能を良くしていくのも限界が来ます。
そこで、今回は壁を「充填断熱+付加断熱」に変更したいと思います。
・④:「充填 + 付加/HGW32 t=45」に変更。
・⑥:「樹脂枠+Low-Eペアガラス(A12)Uw=2.33」に北面も変更。
結果はUa値が0.46になり、G2基準をクリアする性能になりました。

付加断熱はハードルが高いように思いますが、t=45でしたらインゴー角(45×45)を壁に取り付ければ良いので、さほど難しいことではありません。また、付加断熱の材料としては「t=60」の商品もあります。施工上は「t=45」とさほど変わらず、値段も全体から見れば大した金額ではないので、採用に値するとは思います。更に、窓も全ての面を樹脂枠Low-Eとすれば、Ua値は0.43までは下がります。

※ここまでの計算で使用した数字は、材料として一般的なものを使っていますので、選択した商品によっては多少前後すると思います。

まとめです。
HEAT20では、下記のシミュレーションをしております。
1)冬期間の室内最低体感温度(4~7地域)
断熱等級4では概ね8℃を下回らないが、G2レベルでは概ね13℃を下回らない
2)全館連続暖房方式における暖房負荷削減率
断熱等級4レベルの部分間欠暖房方式と概ね同等のエネルギーで全館連続暖房が可能

部分間欠暖房によるヒートショックの問題は昨今話題となっておりますが、室温が低いことも健康被害があるために欧米では最低室温の規定などがあります。
断熱性能は、施工上は大きな変化を必要とせずにG2レベルまで上げることが可能です。
確かにイニシャルコストは掛かりますが、使用エネルギーの削減や健康被害が減ることによる医療費の削減なども考慮すれば、ランニングコストでペイ出来る可能性もあると思います。
そういったことを踏まえ、尚且つ、室内の温熱環境が改善するとなれば、少なくてもG2レベルの断熱性能を目指すことがその第一歩かと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column017 温熱性能と準耐火構造

住宅などを建築する敷地には、建築基準法上の様々なルールがあり、敷地に対して建築出来る広さや高さ、用途などが制限されていますが、基本的にはその地域に適した環境が維持されるように制限を掛けています。
その中で、「防火・準防火地域」というルールがあり、その地域内の建築物はその規模によって各種の火に強い構造の建築物(以下、耐火・準耐火建築物など)にする必要があります。東京で言えば、23区内全域で準防火地域以上のルールが敷かれており、例えば防火地域内で101㎡の2階建て木造住宅を建築する場合は耐火建築物にする必要があります。

そのような状況を踏まえ今回は、準防火地域内に建築される「木造3階建て住宅」の外壁の仕様を決めて行く流れを断熱材にフォーカスして書いていこうと思いますが、この計画は準耐火建築物にする必要があります。
簡単に準耐火建築物を説明すると「壁や柱、床、階段などの主要構造部をある時間内の火災によって損傷などを生じないようにする必要がある」というものです。今回で言えば「45分準耐火建築物(以下、45準耐)」にする必要がありますが、目的の1つは火災などが起きた時に建築物から逃げる時間を確保することです。
45準耐の外壁仕様には2つの種類がありまして1)告示によるものと2)認定工法によるものですが、ここでは多くのシチュエーションで採用されている2)認定工法にて話しを進めます。

認定工法とは、試験等を経て耐火性が認められた構成のことですが、その使い方に注意があります。それは、試験等で指定していた材料以外の材料をその構成の外側にも途中にも使ってはいけない、というものです。ある意味当然と言えばそうですが、その加えたい材料が(耐火性能を損なわないと予想される)不燃材料だとしても使うことが出来ません。
外壁の認定工法は、外部側から①外装材②外付(付加)断熱材③柱間充填断熱材④内装下地材で構成されていることが殆どです。②や③については認定によって有無がありますが、認定の構成に外付断熱材が指定されていない場合は充填断熱しか出来ないということです。要は、私としては温熱環境を考慮して断熱材の厚みや種類を決めたいですが、実際は外壁の認定内容によって決まってしまうということです。これは、防火地域などで高断熱住宅を設計する際に大きな壁となります。

外壁-45準耐で一番有名な認定が「QF045BE-9226」です。これは、①外装材:窯業系サイディング張③柱間:グラスウール(以下、GW)若しくはロックウール(以下、RW)を充填断熱④室内側:石膏ボード張と言う構成ですが、この認定では柱間にしか断熱材が入れられないので、一般的な木造在来で言えば120mm厚までしか施工出来ません。また、外装材も窯業系サイディング以外は使えません。従って、サイディング以外の仕上げ材を使いたい場合は、例えばチャネルオリジナルの防火木材外壁材ウイルウォールの認定「QF045BE-0107」など別の認定を使うことになりますが、充填断熱しか出来ないことに変わりはありません。
高断熱を考えれば「付加+充填断熱」は必須なのですが、今現在は旭化成建材のネオマフォームを使った認定「QF045BE-0868」やStoJapanのEPSを使った認定「QF045BE-1370」など数えるほどしかありません。本来で言えば、GWやRWは不燃材料ですので「付加+充填断熱」としても何ら問題がないように思いますが、認定としては(2018.5までは)存在しません。

これらの状況について、いろいろなメーカーに話しを聞いていますが、45準耐で高断熱にする物件が全国レベルで数%しかなく、認定の為に必要な膨大な試験費用がペイ出来ないので、二の足を踏んでいるようです。
昨今は、社会的に省エネ住宅の必要性を説いていますが、大都市東京で建てる高断熱住宅は建築方法を制限されている状況です。先にも書きましたが、少なくても不燃材料であるGWやRWぐらいは「付加+充填断熱」と出来る認定を用意すべきかと思いますので、各メーカーさんには頑張って頂きたいですね。

column016 地盤と地震を考える

住宅などを建築する上で、どのような地盤に建てるのか?は非常に重要なことの1つです。それは、地盤の特性によって建物へ作用する地震による揺れ(以下、地震動)が変化するためです。
構造計算上も、地震力を検討する場合「振動特性係数/Rt」という係数に地盤の特性(硬質や軟弱など)を反映させます。また、「標準せん断力係数/Co」も地盤が軟弱な場合は高い係数をとることになっています。また、地盤の良し悪しは「硬軟」だけではなく「土質」も重要で、土の種類ごとに特性があり建物の沈下の仕方などに影響します。

土質区分には、礫質土・砂質土・粘性土・火山灰質粘性土などがあり、粒径などで区分されています。また地層区分としては、軟弱地盤であることが多い「沖積層」と、安定した地盤で沖積層よりは高台に見られる「洪積層」があります。
東京などで良く聞く「関東ローム層」は火山灰質粘性土に区分されますが、比較的良い地盤とされており、今のように地盤調査が必須ではない時代には「関東ローム層が出てくればOK」としていました。関東ローム層は、富士山や箱根が噴火した際の火山灰が堆積したものなので、東京以西にはこの層があることが多いかと思います。

ここまでは地盤の特徴などを書いてきましたが、要はこれらの情報を知る為に地盤調査をします。先程も書いたように、以前は住宅建築の規模では調査はしませんでしたが、住宅瑕疵担保履行法が出来てからは(一部例外を除いて)必須になりました。
地盤調査にはいくつかの種類がありますが、住宅建築で多い調査はスウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS試験)です。SWS試験は、地盤の硬軟と均質性を確認する小規模建築向けの建築基準法告示でも認められている調査方法で、安い費用で地盤の支持力を評価出来ます。木造2階建て程度の規模でよく行われる調査ですが、小規模建築物でも建物重量のあるRC造などで詳細な土質データが欲しい場合は、ボーリング・標準貫入試験を行います。
どちらが良い悪いはなく、各目的に適した調査を行うことになりますが、各調査で得られる情報が違うので、どの調査にするかは設計者の判断になります。

小規模建築物でしたら、これらのデータを元に建物基礎の形状や地盤改良の必要性を判断し、上部の耐震性能を決めて行けば良いですが、60mを超えるような超高層建築物の場合はもっと複雑です。私は構造設計者ではないので詳細の説明は出来ませんが、超高層建築物は地震による影響が大きいので、地盤の卓越周期や表層地盤増幅率なども調査し、建物に作用する地震動をより詳細に判断するなどが必要になります。
地盤の特性によって、地震動の大きさは変化します。また、先の熊本地震では「キラーパルス」なる言葉が話題になりましたが、地震動の大きさ以外の要素でも建築物に及ぼす影響が変化します。地震動は、実に多種多様な要素が絡み合って建築物に作用しますので、それに見合った構造設計をする必要がありますが、それは戸建住宅でも超高層建築物でも変わりません。

実際は、戸建住宅規模では「どんな地震動が作用するのか?」などの超高層建築物レベルの精細な検討は不要かもしれませんが、例えば表層地盤増幅率については「地震ハザードステーション」で確認が出来ますので、建築地の地盤特性の1つの情報として知っておくのも良いかもしれません。

column015 設計者の区分を考える

先日のこと、一般の方とお話しをしている際に「えっ、意匠設計者って何ですか?」と質問を受けました。私としては、特別なことではなくその言葉を使ったのですが、まさかそれについて質問をされるとは思っていませんでした。いつも一般の方とお話しをする時は、分かりにくい専門用語を使わないように気をつけていましたが、まだまだ配慮が足りませんでした。
そんな出来事があったこともあり、今日は設計者のあれこれについて少し書かせて頂きます。

それでは、そもそも設計者とは何なのかを、建築基準法(以下、建基法)の観点を交えながら簡単にご説明致します。
まずは、建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書を「設計図書」と言いますが、それらを作成することが「設計」です。また、その設計や工事監理(工事が設計図書の通り実施されているかいないかを確認すること)その他の業務を行う者を「建築士」と言いまして、建基法の資格者になります。建築士の種別として「一級、二級、木造」の三種類がありますが、簡単に言うと従事出来る業務の規模が違います。
要は、建築士が行う業務の1つである設計図書を作成する者を「設計者」と呼び、工事監理についても同じでそれらを行う者を「工事監理者」と呼びます。
従いまして、設計者とは建築士の中でより業務内容にフォーカスした呼び名だと思って頂ければと思います。

設計者とは、設計する者のことを言いますが、設計にはいくつか種類がありまして、それが「意匠設計」と「構造設計」と「設備設計」です。

構造設計とは、伏図・構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書を設計することです。住宅などの小規模建築物でも、建基法にある技術的基準に適合していることを構造計算によって確かめなければいけませんが、それらの設計を行う者が構造設計者となります。
ここで問題になるのが、先のコラム(column014)でも書きましたが四号建築物の扱いです。四号建築物は構造計算に依らず建築することが出来るので、その建物には構造設計者が存在しないことになりますので、誰かが代わりをすることになります。

設備設計とは、主に建築設備に関する設計図書を設計することです。建築設備とは、電気・ガス・給排水などのインフラ系設備に始まり、換気空調や消火、エレベータなどの設備を言いますが、それらの平面図や構造詳細図などの設計を行う者が設備設計者となります。尚、設備設計に関しては、構造設計とは違い「延床面積が2,000㎡を超える建築物の建築設備に係る設計を行う場合においては、建築設備士(建築設備の専門家)の意見を聞くよう努める」となっておりますので、例えば住宅に関しては建築設備士が係ることは一般的にはありません。

いよいよ最後に意匠設計についてです。
始めの「えっ、意匠設計者って何ですか?」の答えは、「構造設計図書と設備設計図書以外の設計図書を設計する者」のことになります。建築設計においてキーパーソンとなるのが意匠設計者で、建築物のトータルデザインを行います。
意匠設計者の役割は多岐にわたり、お客様との打合せを重ね希望・要望などをくみ取り、実用的にあるいは美的にその建物をデザインすることに始まり、構造設計・設備設計のとりまとめ、建築確認などの申請業務、更には工事監理に至るまで、総合的に取りまとめて行く事を担います。
一戸建ての住宅などのお施主様がお会いになる設計者は、ほぼ意匠設計者です。それが呼称として「建築士」や「建築家」になったりするだけです。

意匠設計者は、お施主様のご希望などの情報を基に、設計する建築物の方向性を考え決定します。従いまして、その建築物の出来栄えは、構造設計者や設備設計者などの技術的な裏付けが有ってのことは当然ですが、意匠設計者の知識や経験あるいはマネージメント力で決まってしまうと言っても過言ではありませんので、とても重要なポジションです。