column021 何故断熱なのかを考える

我々の生活の中で感じる快適さに影響を及ぼす要因はいろいろありますが、基本的には聴覚や嗅覚などの五感にとってどう感じるか?が重要なことです。
それらは、建築の室内環境としては美的要因・心理的要因・生理的要因・機能的要因と表現され、それぞれに五感が単独で又は相互的に影響を与えながら、我々は快適さを判断しています。
その中で生理的要因(いわゆる五感に近い要因)が、主として建築環境工学で取り扱われており、我々が快適性の指標としている「熱と空気に関する温冷熱環境」もその中に含まれています。

さて、室内の温熱感覚の要素の中で、一番影響を与えているものは何でしょうか?
要素としては、気温(室温)を始め、相対湿度や放射(簡単に言うと、壁や天井の表面温度)、気流などが影響します。また、これら屋内環境側の要素の他に人体側の条件として、代謝量(Met/メット)と着衣量(clo/クロー)が関係します。
このように快適性に関わる要素はいくつもありますので、快適な温熱感覚を検討することは非常に複雑です。また、快適にはエネルギー代謝量や人種、老若男女などの違いによる個人差も影響するため、それらの検討をより難しくしています。
従って住宅建築をする場合は、その個人の感覚の違いもきちんと把握しておくことが重要ですが、同一建物内に暮らす方それぞれにベストな環境を作るのは容易ではありません。
では、どうすれば良いのか?
それは「温熱感覚の要素の中で、影響力のあるものから順番に対策を考えて行く」ことです。
そこで、先の質問に戻るわけですが、答えは「気温」です。当たり前の話しかもしれませんが例えば、服を着るとか脱ぐとかも、基本は気温によって決まります。運動して暑いや寒いも気温によって感じ方が違います。
このように、最も支配的となる気温をコントロールすること、が始めに対策すべきことです。

室温コントロールに最も有効なのが建物の断熱性能を向上させることです。この断熱をすることは、屋外環境からの影響を減らすことであり、夏であれば日射による熱が屋内に侵入してくることを減らします。高断熱であればあるほど効果があります。また、断熱することは快適な環境を作るためのふり幅を減らすことにも寄与します。これは、少ないエネルギー投入で快適性を得られることにもつながり、省エネにもなります。それに、高断熱にすると壁や天井からの放射温度も下がりますので、屋内環境側の2要素に対して効果があると考えられます。

ここで、断熱性能を上げないで快適性を得る方法を1つ考えてみますが、要素としては気流を使い検討します。
分かり易く例えると、通風で涼を得る方法です。
確かに春や秋は気温の快適性が高いので、通風により快適性を向上させることも可能かと思います。しかし、夏はどうでしょうか。夏の場合は、気温による快適性が低いので、それなりの通風がないと快適性は上がりません。更に、低断熱だとすると壁からの熱放射もあるため、通風による快適性の向上は相当厳しいと思います。
要は、断熱もしないで通風に頼ることは、もっとも効果のある要素を蔑ろにして、風が吹かなければ効果のない気流に快適性を委ねることを意味します。
さすがに、それは無理があると思いませんか。
家づくりとして通風での涼も大事な要素ですが、その前にやるべきことがあるのではないでしょうか。

温熱環境としての快適を得る方法はいろいろありますが、まずは断熱(と気密)をすることです。こうして建物性能としてベースを作っておくことで、このあとで検討すべき要素の解決が容易になったり、扱いやすくしてくれます。
一般的な木造住宅であれば、G2レベル(HEAT20)までの断熱性能ならデザイン性を損なうことなく可能だと思いますので、最低限はそのレベルを目指すべきかと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column020 空間と建築費を考える

「必要なものだけを単純化して、美しいところを備えていれば、居心地よい家になる」
これは、志賀直哉が「住宅に就いて」書いた随筆の一文です。

何を持って居心地が良いかは人それぞれかと思いますが、この一文から感じられる居心地の良さが私は好きです。
私は設計する上でお客様のご要望を伺いながら、それらを如何にシンプルにまとめられるかを考えます。中にはなかなか答えにたどり着けず、考えを2つも3つも只々重ねることがありますが、そういった時はだいたいうまく行っていない証拠です。なので、あるところまで考えるともっとシンプルな考えがあるはずだと初心に帰ります。そして、頭を整理し本当に必要なモノ・コトは何なのかを考えます。
住宅設計とはこれの連続であり、そこへたどり着くには技術や知識、経験が必要だと思っています。

住宅に必要な要素は、耐久性や耐震性、温熱性能など多岐に渡ります。また、それらにお客様のご要望が加わり、更に考える要素を複雑にしていきます。しかし、それら必要な要素やご要望をただ単純に重ねていくだけでは、建築費がどんどん膨らみます。如何に同じ性能の建物を、よりシンプルで合理的な方法で、美的な建築をデザインするのか、が重要だと思いますし、それらを考えるのが我々建築士の仕事です。
家を建てる・造る状況において夢や希望が無い人はいないと思いますが、それらが合理的に考えられている方はほとんどいません。我々はプロとして様々な提案やアイディアを出すわけですが、それらがお客様の意にそぐわないと思わせることもあります。そういった場合、お客様側も夢や希望に縛られず、フラットに物事を捉えられる状況にないとより良い選択が難しくなります。

その選択を難しくする要素の1つに「今の生活スタイルをそのまま維持したい」という要望があります。確かにそれが重要な時もありますが、それは今までの家に合わせて培ってきたスタイルであって、継続すべきスタイルとは限りません。家を建てる・造るということは、いろいろな事をリセットして新たなスタイルを築いていけるチャンスでもあります。
次に多いのは、広さに対するこだわりです。狭くて良いとの希望を持たれる方は余りおらず「広くしたいが、安く建てたい」が多くの方が思われる事だと思います。希望としては十分理解しますが、それは多くの建築費が掛かることにもつながり、広さを維持したまま安くすることは、性能や品質が下がることを意味します。ここで、性能や品質が下がることを伝えてくれる設計事務所なり工務店は良心的かと思いますが、金額で勝負しているような工務店はそのことを言ってくれるとは限りません。

念の為書きますが、真摯に住宅建築に取り組んでいる多くの会社は、性能や品質が下がらずに安くする努力(VE/バリューエンジニアリング)を行っていますが、それには限界があるということはいつも心のどこかに留めておいて頂きたいと思います。

建築費で言うと、その目安として坪単価というものがあります。おおよその広さに対する総額を知りたい時に確認することが多いですが、坪単価は性能や品質によって大きく変わります。なので、本来であれば「どのぐらいの性能で、品質はどのグレードを求めているのか」をきちんと伝えないと、その単価はあまり意味を成しません。
また、広さについても「何故その広さが必要なのか?」を考える必要があります。確かに、最低限として必要な広さはありますし、空間の広さが豊かさをもたらすこともあると思います。しかし、住宅に必要な広さとは空間の寄せ集めではなく、奥行感や陰影などによって豊かに表現された空間ではないでしょうか。

住宅建築には、多くの費用が掛かります。更に言えば、やみくもに造るだけではいくら予算があっても足りません。従って、「シンプルで合理的=必要なものだけを単純化」で「美的な建築をデザインする=美しいところを備える」ことは、建築費を削減しながらも居心地の良い家へとつながることかと思いますが、皆さんはどのように感じたでしょうか。

column019 Ua値と一次エネルギー

H27年に改正した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(通称、建築物省エネ法)」以前は、省エネ基準と言えば、主に断熱性能のことを示していました。しかし、先の改正で設備などの性能を評価した一次エネルギー消費量でも省エネ基準の1つとして示せることになりました。
因みに、一次エネルギーとは「石油や石炭、天然ガスなど」のことで、二次エネルギーとは一次エネルギーから作られる「電気や灯油、都市ガスなど」のことを言います。

一次エネルギー消費量の評価は、省エネ法以外にも「BELS」という第三者認証制度もあります。これは、星の数で性能を評価しますが、省エネ基準を1.0(BEI/評価のベース)として星2の評価としています。最高は星5の0.8以下(BEI)としており、一次エネルギー消費量を省エネ基準相当より2割以上削減した、という評価になります。

話しを戻しますが、建築物省エネ法には、躯体の断熱性などを評価する「断熱等性能等級(以下、断熱等級)」と高効率設備の使用を評価する「一次エネルギー消費量等級(以下、エネルギー等級)」の2つの評価基準があります。
両者を単純に比較すると、例えば「フラット35SのBプラン」では、どちらの4等級でも省エネルギー性を満たすことになっていますので、同等級ならば同じような省エネ性であると言えます。しかし、エネルギー等級の方は高効率設備が評価されるので、断熱性が高いとは言い切れません。正直、今現在の一般的な設備機器でもそれなりに評価されてしまうので、断熱性をギリギリまで落としてフラット35Sの省エネルギー性を満たそうとしているローコスト系ハウスメーカーもあります。

各等級にはそのような違いがありますが、実際断熱性能を上げると一次エネルギー消費量がどう変わるのかは知っておくと良いかと思いますので、今回はそれらの比較をしてみたいと思います。
使用ソフトは、公的な評価で使われるWEB上の「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」です。
尚、プログラムに入力する各項目の値は、前回のコラム(column018)で使用した「断熱等級4→G1→G2(0.87→0.56→0.46)」時の計算結果及びその根拠数字を使用します。また、設備仕様(第三種換気、太陽熱やコージェネはなし)や使い方(部分間欠冷暖房)は一般的なもので比較します。

では、計算結果の設計一次エネルギー消費量を記載します。
尚、基準となる「基準一次エネルギー消費量」は78.2(GJ/戸・年)でした。
1)断熱等級4:74.7GJ(BEI:0.94) ※暖房設備が基準より多い。
2)G1:70.3GJ(BEI:0.87) ※暖房設備が基準と同程度になった。
3)G2:69.1GJ(BEI:0.85) ※暖房設備が基準より少なくなった。

結果としては、全ての項目が基準を下回るには、G1レベルの断熱性能が必要なことが分かりました。
また、その時のBEIは0.87ですのでけっこう良さそうに見えますが、実は照明設備を全てLEDにするだけで照明設備の消費量が半分ぐらいになるので、それを省くと0.96になります。

さて、はじめにBELSの最高評価はBEIで0.8以下だとご説明しましたが、先のG2レベルでは0.85までしか行かなかったので、まだ足りないことになります。なので、BELSで星5がもらえるように今度は設備を変えてみます。方法としては、給湯設備の消費量が多いので、それを減らすべく各水廻りの水栓を節水系の商品に変更してみます。
4)G2+節水設備:66.2GJ(BEI:0.80)
結果、66.2GJまで一次エネルギー消費量が下がり、星5の評価になりました。

ここでは、節水設備を多少特別扱いしましたが、実際は各メーカーのキッチンやユニットバスを使えば多くの商品が節水設備になっているので、特別なことではありません。
先にも書きましたが、現在一般的になっている設備を使うことでそれなりの評価を得られます。要は、室内の温熱環境を踏まえてG2レベルの断熱性能として、多少省エネを意識して設備を選んでもらえれば、BELSで星5の評価がもらえます。
尚、星5をねらうだけなら多少施工難易度が上がるG2より「G1+節水設備+αの高効率設備」という方法もあると思いますが、省エネに対する本来の考え方からすると躯体強化が先だと思いますので、やはり断熱性能をG2レベルまで上げる方が理にかなっていると思います。

このようにいろいろと紐解いていくと、一次エネルギー消費量計算結果を見るだけで「その住宅がどのような省エネ住宅なのか」が分かります。
確かに、設備による一次エネルギー消費量削減も必要なことですが、そこに住宅としての「居心地の良さ」が備わっていなければ、一般の方が省エネへの投資に意味を見出すのは少しハードルが高いと思います。
また、一般の方がいわゆる省エネ住宅を評価するのは難しいと思いますので、例えば住宅建築の依頼先を選ぶ際に「省エネ住宅の基本性能として、どのレベルが必要と思っているか?」を確認するために、下記の質問を設計事務所や工務店にされると1つの判断材料になるかと思います。
①「Ua値(ユーエーチ)」を質問し、0.46以下(G2レベル)を確認する
②「BELS(ベルス)」の評価を質問し、星5以上を確認する
この2つが狙える建物仕様がベースであれば、ひとまず及第点かと私は思います。

その他、私が所属しているパッシブハウス・ジャパンが監修している「建もの燃費ナビ」というソフトでは、「年間冷暖房負荷」という値で建物性能を評価出来ます。
この値は、Ua値に関する断熱性能に加え、換気負荷や日射熱取得量や日射遮蔽などいわゆる「パッシブデザイン」も数字に反映されますので、Ua値やBELSでは物足りない方は冷暖房負荷の検討も考えては如何でしょうか。

column018 断熱とUa値を考える

2020年に省エネ基準が住宅レベルでも法制度化されようとしていますが、未だ断熱性能を良くすることに二の足を踏んでいる方々がいらっしゃいます。初めから毛嫌いしている方もいれば、計算などが良くわからない為に思考停止している方もいるのかもしれません。
「そんな難しいことではないし、悪いものでもない」と思いますが、計算という数学的要素がコトをややこしくしているのかもしれません。
そこで今回は、そんな方々がまず何を目指したら良いか、が分かるようになるべく平たい計算を用いて答えを探してみようと思います。

フラット35や長期優良住宅などで住宅の断熱性を評価するために「Ua値」という指標を使います。
「Ua値」とは「外皮平均熱貫流率」のことで、外気等に接する天井・壁・床及び開口部からの熱の通しやすさの平均を表しており、単位を書くと「W/㎡・K」になります。これは、数字の大きい方が熱を通しやすいという意味であり、「数字が大きい=断熱性が悪い」と言うことも出来ます。

Ua値の基準には、公的な基準である省エネ等級(以下、断熱等級4)やZEH、又は民間のHEAT20(以下、G1若しくはG2)で定めている基準などがあります。「断熱等級4→ZEH→G1→G2」の順で厳しい値になりますが、東京23区で言えば「0.87、0.60、0.56、0.46」という値になります。
これだけ見ても、どんな断熱材や窓を使えば良いのかイマイチ分からないと思います。そこで「それぞれの値で断熱材や窓がどう違うのか?」を検証してみます。

基準は断熱等級4の0.87とし、その仕様(以下、基準仕様)は下記とします。
①木造2階建て 延床面積 116㎡、②窓面積の合計 ①の18%位、③天井断熱 高性能グラスウール16K(以下、HGW16)t=90、④壁断熱 HGW16 t=90、⑤床断熱 XPS t=30 ⑥窓性能 Uw=4.65、η=50
尚、使用ソフトは住宅性能評価・表示協会でDL出来る「外皮計算シートEXCEL」です。

因みにですが、上記の中で天井と床は「旧省エネ等級4」で使用すべきだった断熱材より薄くなっています。要は、多少断熱性能を落としても同じ等級4の評価がもらえることになった、ということです。これを知っていて、断熱性能を落として省エネ基準を得ているローコスト系ハウスメーカーもあります。

では、基準仕様を踏まえながら計算を始めてみましょう。
まずは、旧省エネ4等級の仕様規定を満たしていない天井と床を変更します。
・③:HGW16 t=160
・⑤:XPS t=65
結果、Ua値が0.79になりました。

次に、施工に無理のない範囲で種類や厚みを変えてみます。
・③:厚みが変えやすい吹込みタイプのGW10Kに変更し、t=300とします。
・④:柱太さ同等のt=120にします。また、性能をHGW40にUP。
・⑤:大引きや根太の成を踏まえ、t=90にします。
結果、Ua値が0.71になりました。

次は、施工上は何も変わらない窓を変えてみます。
・⑥:「アルミ樹脂複合枠+ペアガラス(A12)Uw=3.49」に変更。
結果、Ua値が0.62になりました。

ここまでで分かることは、窓変更が一番効果的(0.09削減)である、ということです。これは見方を変えると、今まで一般的に使っていた窓の性能が悪すぎる、ということです。窓性能で言えば、日本より寒い地域が多いヨーロッパの国々はまだしも、同じアジアの韓国や中国より悪いのが現状です。

さて、施工に無理のない範囲で変更を繰り返し、Ua値が0.62まで来ました。ここまで来ると、ZEH基準0.60又はG1基準0.56までもう少しです。
では、効果の高い窓でもう少し良くしてみましょう。
・⑥:「樹脂枠+Low-Eペアガラス(A12)Uw=2.33」に南面のみ変更。
結果、Ua値が0.56になりました。

いよいよ最後の変更です。
ここまで来ると、同じような施工方法及びなるべく安価な商品で性能を良くしていくのも限界が来ます。
そこで、今回は壁を「充填断熱+付加断熱」に変更したいと思います。
・④:「充填 + 付加/HGW32 t=45」に変更。
・⑥:「樹脂枠+Low-Eペアガラス(A12)Uw=2.33」に北面も変更。
結果はUa値が0.46になり、G2基準をクリアする性能になりました。

付加断熱はハードルが高いように思いますが、t=45でしたらインゴー角(45×45)を壁に取り付ければ良いので、さほど難しいことではありません。また、付加断熱の材料としては「t=60」の商品もあります。施工上は「t=45」とさほど変わらず、値段も全体から見れば大した金額ではないので、採用に値するとは思います。更に、窓も全ての面を樹脂枠Low-Eとすれば、Ua値は0.43までは下がります。

※ここまでの計算で使用した数字は、材料として一般的なものを使っていますので、選択した商品によっては多少前後すると思います。

まとめです。
HEAT20では、下記のシミュレーションをしております。
1)冬期間の室内最低体感温度(4~7地域)
断熱等級4では概ね8℃を下回らないが、G2レベルでは概ね13℃を下回らない
2)全館連続暖房方式における暖房負荷削減率
断熱等級4レベルの部分間欠暖房方式と概ね同等のエネルギーで全館連続暖房が可能

部分間欠暖房によるヒートショックの問題は昨今話題となっておりますが、室温が低いことも健康被害があるために欧米では最低室温の規定などがあります。
断熱性能は、施工上は大きな変化を必要とせずにG2レベルまで上げることが可能です。
確かにイニシャルコストは掛かりますが、使用エネルギーの削減や健康被害が減ることによる医療費の削減なども考慮すれば、ランニングコストでペイ出来る可能性もあると思います。
そういったことを踏まえ、尚且つ、室内の温熱環境が改善するとなれば、少なくてもG2レベルの断熱性能を目指すことがその第一歩かと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column017 温熱性能と準耐火構造

住宅などを建築する敷地には、建築基準法上の様々なルールがあり、敷地に対して建築出来る広さや高さ、用途などが制限されていますが、基本的にはその地域に適した環境が維持されるように制限を掛けています。
その中で、「防火・準防火地域」というルールがあり、その地域内の建築物はその規模によって各種の火に強い構造の建築物(以下、耐火・準耐火建築物など)にする必要があります。東京で言えば、23区内全域で準防火地域以上のルールが敷かれており、例えば防火地域内で101㎡の2階建て木造住宅を建築する場合は耐火建築物にする必要があります。

そのような状況を踏まえ今回は、準防火地域内に建築される「木造3階建て住宅」の外壁の仕様を決めて行く流れを断熱材にフォーカスして書いていこうと思いますが、この計画は準耐火建築物にする必要があります。
簡単に準耐火建築物を説明すると「壁や柱、床、階段などの主要構造部をある時間内の火災によって損傷などを生じないようにする必要がある」というものです。今回で言えば「45分準耐火建築物(以下、45準耐)」にする必要がありますが、目的の1つは火災などが起きた時に建築物から逃げる時間を確保することです。
45準耐の外壁仕様には2つの種類がありまして1)告示によるものと2)認定工法によるものですが、ここでは多くのシチュエーションで採用されている2)認定工法にて話しを進めます。

認定工法とは、試験等を経て耐火性が認められた構成のことですが、その使い方に注意があります。それは、試験等で指定していた材料以外の材料をその構成の外側にも途中にも使ってはいけない、というものです。ある意味当然と言えばそうですが、その加えたい材料が(耐火性能を損なわないと予想される)不燃材料だとしても使うことが出来ません。
外壁の認定工法は、外部側から①外装材②外付(付加)断熱材③柱間充填断熱材④内装下地材で構成されていることが殆どです。②や③については認定によって有無がありますが、認定の構成に外付断熱材が指定されていない場合は充填断熱しか出来ないということです。要は、私としては温熱環境を考慮して断熱材の厚みや種類を決めたいですが、実際は外壁の認定内容によって決まってしまうということです。これは、防火地域などで高断熱住宅を設計する際に大きな壁となります。

外壁-45準耐で一番有名な認定が「QF045BE-9226」です。これは、①外装材:窯業系サイディング張③柱間:グラスウール(以下、GW)若しくはロックウール(以下、RW)を充填断熱④室内側:石膏ボード張と言う構成ですが、この認定では柱間にしか断熱材が入れられないので、一般的な木造在来で言えば120mm厚までしか施工出来ません。また、外装材も窯業系サイディング以外は使えません。従って、サイディング以外の仕上げ材を使いたい場合は、例えばチャネルオリジナルの防火木材外壁材ウイルウォールの認定「QF045BE-0107」など別の認定を使うことになりますが、充填断熱しか出来ないことに変わりはありません。
高断熱を考えれば「付加+充填断熱」は必須なのですが、今現在は旭化成建材のネオマフォームを使った認定「QF045BE-0868」やStoJapanのEPSを使った認定「QF045BE-1370」など数えるほどしかありません。本来で言えば、GWやRWは不燃材料ですので「付加+充填断熱」としても何ら問題がないように思いますが、認定としては(2018.5までは)存在しません。

これらの状況について、いろいろなメーカーに話しを聞いていますが、45準耐で高断熱にする物件が全国レベルで数%しかなく、認定の為に必要な膨大な試験費用がペイ出来ないので、二の足を踏んでいるようです。
昨今は、社会的に省エネ住宅の必要性を説いていますが、大都市東京で建てる高断熱住宅は建築方法を制限されている状況です。先にも書きましたが、少なくても不燃材料であるGWやRWぐらいは「付加+充填断熱」と出来る認定を用意すべきかと思いますので、各メーカーさんには頑張って頂きたいですね。

column016 地盤と地震を考える

住宅などを建築する上で、どのような地盤に建てるのか?は非常に重要なことの1つです。それは、地盤の特性によって建物へ作用する地震による揺れ(以下、地震動)が変化するためです。
構造計算上も、地震力を検討する場合「振動特性係数/Rt」という係数に地盤の特性(硬質や軟弱など)を反映させます。また、「標準せん断力係数/Co」も地盤が軟弱な場合は高い係数をとることになっています。また、地盤の良し悪しは「硬軟」だけではなく「土質」も重要で、土の種類ごとに特性があり建物の沈下の仕方などに影響します。

土質区分には、礫質土・砂質土・粘性土・火山灰質粘性土などがあり、粒径などで区分されています。また地層区分としては、軟弱地盤であることが多い「沖積層」と、安定した地盤で沖積層よりは高台に見られる「洪積層」があります。
東京などで良く聞く「関東ローム層」は火山灰質粘性土に区分されますが、比較的良い地盤とされており、今のように地盤調査が必須ではない時代には「関東ローム層が出てくればOK」としていました。関東ローム層は、富士山や箱根が噴火した際の火山灰が堆積したものなので、東京以西にはこの層があることが多いかと思います。

ここまでは地盤の特徴などを書いてきましたが、要はこれらの情報を知る為に地盤調査をします。先程も書いたように、以前は住宅建築の規模では調査はしませんでしたが、住宅瑕疵担保履行法が出来てからは(一部例外を除いて)必須になりました。
地盤調査にはいくつかの種類がありますが、住宅建築で多い調査はスウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS試験)です。SWS試験は、地盤の硬軟と均質性を確認する小規模建築向けの建築基準法告示でも認められている調査方法で、安い費用で地盤の支持力を評価出来ます。木造2階建て程度の規模でよく行われる調査ですが、小規模建築物でも建物重量のあるRC造などで詳細な土質データが欲しい場合は、ボーリング・標準貫入試験を行います。
どちらが良い悪いはなく、各目的に適した調査を行うことになりますが、各調査で得られる情報が違うので、どの調査にするかは設計者の判断になります。

小規模建築物でしたら、これらのデータを元に建物基礎の形状や地盤改良の必要性を判断し、上部の耐震性能を決めて行けば良いですが、60mを超えるような超高層建築物の場合はもっと複雑です。私は構造設計者ではないので詳細の説明は出来ませんが、超高層建築物は地震による影響が大きいので、地盤の卓越周期や表層地盤増幅率なども調査し、建物に作用する地震動をより詳細に判断するなどが必要になります。
地盤の特性によって、地震動の大きさは変化します。また、先の熊本地震では「キラーパルス」なる言葉が話題になりましたが、地震動の大きさ以外の要素でも建築物に及ぼす影響が変化します。地震動は、実に多種多様な要素が絡み合って建築物に作用しますので、それに見合った構造設計をする必要がありますが、それは戸建住宅でも超高層建築物でも変わりません。

実際は、戸建住宅規模では「どんな地震動が作用するのか?」などの超高層建築物レベルの精細な検討は不要かもしれませんが、例えば表層地盤増幅率については「地震ハザードステーション」で確認が出来ますので、建築地の地盤特性の1つの情報として知っておくのも良いかもしれません。

column015 設計者の区分を考える

先日のこと、一般の方とお話しをしている際に「えっ、意匠設計者って何ですか?」と質問を受けました。私としては、特別なことではなくその言葉を使ったのですが、まさかそれについて質問をされるとは思っていませんでした。いつも一般の方とお話しをする時は、分かりにくい専門用語を使わないように気をつけていましたが、まだまだ配慮が足りませんでした。
そんな出来事があったこともあり、今日は設計者のあれこれについて少し書かせて頂きます。

それでは、そもそも設計者とは何なのかを、建築基準法(以下、建基法)の観点を交えながら簡単にご説明致します。
まずは、建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書を「設計図書」と言いますが、それらを作成することが「設計」です。また、その設計や工事監理(工事が設計図書の通り実施されているかいないかを確認すること)その他の業務を行う者を「建築士」と言いまして、建基法の資格者になります。建築士の種別として「一級、二級、木造」の三種類がありますが、簡単に言うと従事出来る業務の規模が違います。
要は、建築士が行う業務の1つである設計図書を作成する者を「設計者」と呼び、工事監理についても同じでそれらを行う者を「工事監理者」と呼びます。
従いまして、設計者とは建築士の中でより業務内容にフォーカスした呼び名だと思って頂ければと思います。

設計者とは、設計する者のことを言いますが、設計にはいくつか種類がありまして、それが「意匠設計」と「構造設計」と「設備設計」です。

構造設計とは、伏図・構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書を設計することです。住宅などの小規模建築物でも、建基法にある技術的基準に適合していることを構造計算によって確かめなければいけませんが、それらの設計を行う者が構造設計者となります。
ここで問題になるのが、先のコラム(column014)でも書きましたが四号建築物の扱いです。四号建築物は構造計算に依らず建築することが出来るので、その建物には構造設計者が存在しないことになりますので、誰かが代わりをすることになります。

設備設計とは、主に建築設備に関する設計図書を設計することです。建築設備とは、電気・ガス・給排水などのインフラ系設備に始まり、換気空調や消火、エレベータなどの設備を言いますが、それらの平面図や構造詳細図などの設計を行う者が設備設計者となります。尚、設備設計に関しては、構造設計とは違い「延床面積が2,000㎡を超える建築物の建築設備に係る設計を行う場合においては、建築設備士(建築設備の専門家)の意見を聞くよう努める」となっておりますので、例えば住宅に関しては建築設備士が係ることは一般的にはありません。

いよいよ最後に意匠設計についてです。
始めの「えっ、意匠設計者って何ですか?」の答えは、「構造設計図書と設備設計図書以外の設計図書を設計する者」のことになります。建築設計においてキーパーソンとなるのが意匠設計者で、建築物のトータルデザインを行います。
意匠設計者の役割は多岐にわたり、お客様との打合せを重ね希望・要望などをくみ取り、実用的にあるいは美的にその建物をデザインすることに始まり、構造設計・設備設計のとりまとめ、建築確認などの申請業務、更には工事監理に至るまで、総合的に取りまとめて行く事を担います。
一戸建ての住宅などのお施主様がお会いになる設計者は、ほぼ意匠設計者です。それが呼称として「建築士」や「建築家」になったりするだけです。

意匠設計者は、お施主様のご希望などの情報を基に、設計する建築物の方向性を考え決定します。従いまして、その建築物の出来栄えは、構造設計者や設備設計者などの技術的な裏付けが有ってのことは当然ですが、意匠設計者の知識や経験あるいはマネージメント力で決まってしまうと言っても過言ではありませんので、とても重要なポジションです。

column014 四号建築物を考える

非常に残念なことですが、大地震が来る度に何かしらの建物被害が報告されます。それは、築何十年という耐震性の低い多くの住宅が今なお使われているので、ある所では致し方ないことかもしれませんが、その原因として「4号建築物」や「耐震等級」なる言葉が世間を賑やかせたりします。
ここで、簡単にそれらの言葉を説明します。

始めに「4号建築物」について。これは、建築基準法6条第1項第1~3号までの規模にならない建築物のことを指していまして、建築基準法(以下、建基法)には第4号を「前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画~(以下続く。)」という表現で書かれていますが、この建基法の条文をとって4号建築物と呼びます。1つ例を上げると、延床面積500㎡以下の木造二階建ての建築物は4号建築物になります。要は、多くの2階建て木造住宅はそのカテゴリーに入ります。

次に「耐震等級」について。これは、品確法の性能表示基準の1つで「構造の安定に関すること」という評価で求められている「地震に対する構造躯体の強度レベル」のことを指しています。建基法に定めのある構造などの規定を満たしているものを「等級1」として、検討する地震力を1.25倍にしたものを「等級2」、1.5倍を「等級3」としています。要は、等級が上がるほど地震に強い建物になるということです。

ここまででは、何故それらの言葉が賑やかになるのか疑問だと思いますが、四号建築物に対する構造耐力の基準を知ると少し分かってきます。
まず四号建築物は、構造計算に依らないで建物を建築することが出来ます。これは「構造耐力を検討しない」ということではなく、建基法の「仕様規定」に適合させる必要があり、壁量設計により地震力や耐風力に対する必要壁量を計算し、耐力壁をバランス良く設置することによって構造の安全性を担保させることを指します。仕様規定自体は建基法に則っているので問題はありませんが、構造に疎い意匠設計者でも出来てしまうことに一抹の不安があります。それでも、構造的な問題が少ない真四角の総二階建てなどなら良いでしょうが、実際はそのような建物ばかりではなく、以前とある雑誌に設計者の知識不足が起因と思われる記事が載っていました。
その記事では、関東地方の地場工務店がプレカット工場に渡した4号建築物の図面から、100件を無作為抽出して構造計算(許容応力度計算)を実施したところ、設計応力が許容応力を上回る「エラー」が全ての事例に発生していた、とのことでした。全てにエラーがあったということに驚いたのですが、その主たる原因が、柱直下率(梁上耐力壁率※梁下に柱がない状態を含む)の低さと吹抜けなどによる水平剛性不足です。これは、仕様規定による設計では対応出来ない項目で、設計者の知識と経験が如実に表れます。

話しをまとめると「四号建築物は構造計算による検討が行われていない(可能性がある)ので、構造的に問題が起きることがあるし、更にそれが原因と疑われることで地震により建物が倒壊することがある」ということです。また、仕様規定による建物のことを「耐震等級1」と表現していることが多く(詳細は違うが、ここでの説明は割愛)これらの言葉が大地震の度に世間を賑やかすことになります。
ちなみに、耐震等級が上がると水平構面の検討が必要になり、構造計算に依らないものだとしても先の懸念事項が低減されることになります。
建基法は、あくまで最低限の基準です。それを遵守することは当然ですが、その先の構造耐力を一建築士としてどう考えて行くのか?が非常に重要になると思っています。
弊社の場合は、全棟を構造設計者による構造計算(許容応力度計算)を最低限の検討としていますが、皆さんは如何でしょうか。

column013 住宅建築で解決すべきこと

極論を言えば、住宅建築とは、
「エネルギー問題と住宅ローン問題にどう向き合うのか」
にあると思っております。
エネルギー問題とはパブリックなこと、住宅ローン問題とはプライベートなことと捉えています。

エネルギー問題は、地球温暖化問題を起因とする省エネ・省CO₂社会実現への取り組みのことです。日本の省エネへの取り組みについては、1973年のオイルショックの頃より進められています。その当時は技術開発とエネルギー利用の徹底的な見直しで省エネを達成しましたが、バブル景気と重なるようにして起こった地球温暖化問題への対応は、その後の生活スタイルの変化も手伝い、京都議定書で約束した1990年比6%減の温室効果ガス排出削減は出来ていません。また、エネルギー需要に関しても、2013年度時点で産業部門や運輸部門は削減出来ていますが、住宅が関わる民生部門では33.5%増となっており、全体のシェアにおいても民生部門が1/3を占めています。従いまして、住宅レベルでも建築物の省エネ化をすることが重要なこととなっております。

このように書いてしまうと、いざ住宅建築をする際に、少し話しが大きすぎて他人ごとにように感じてしまうかもしれませんが、光熱費で考えれば身近に感じることが出来るかもしれません。
今現在も、東日本大震災の影響により、電気代は上がっています。また、電気代上昇の原因にもなっている化石燃料についても、長期的に見れば価格が上昇していくことは予想され、光熱費は上がることはあっても下がる可能性は少ないと思います。
少し話しがそれますが、日本は2000年頃に比べ年あたりの化石エネルギー輸入額が10~20兆円も増えているそうです。以前この話しを聞いた時は、日本は大丈夫か?とさすがに思わざるをえませんでした。
生活のために光熱費は必要ですが、その行き先が化石燃料を買う(国外にお金が流れる)ことだと思うと、さすがにもったいないと思います。上がり続ける光熱費を少しでも減らす為、なるべく省エネな暮らしが出来るような家づくりや住まい方を目指すべきだと思います。
省エネな家づくりの第一歩は、世帯当たりのエネルギー消費量の1/4を占める暖房需要を減らすことです。それには、高気密高断熱化と日射取得を増やすことが重要で、早い話しパッシブハウスにするのが良いと思います。また、パッシブハウスにすることは、体感温度に優れた居心地の良い空間とすることも出来、より健康的に暮らすことが出来ます。更に、パッシブハウスにすることは、30年後の資産価値向上へも寄与します。これは、プライベートなことと書いた住宅ローン問題の解決にも関わっており、パッシブハウスにすることは多岐にわたる問題が解決するポテンシャルがあると言っても過言ではありません。
あと世帯当たりのエネルギー消費量を減らすのに重要なことが「動力・照明他」の消費量削減です。バブル経済以降、インターネットの普及などにより大変便利な世の中になりましたが、パソコン関連含め家電などによる消費量が増大しました。これは、家の性能そのものよりも住まい方によるところが大きいため、皆様一人一人の努力が不可欠な内容です。

さて、次は住宅ローン問題です。
多くの方が、住宅を手に入れる為に住宅ローンを組みます。住宅ローンを組むということは、当たり前ですが利息が発生します。現在は、超低金利時代ですが、それでもトータルで考えれば家の価値(価格)以上のお金を払うことになります。しかも、払い終わった頃には家の価値がなくなっている、というのが今の日本の実情です。
価値がないという評価を的確に説明するのは難しいですが、その先も暮らしていくには建物の状態が悪くなっていることとするならば、スクラップ&ビルドすることになります。これは、先のコラム(column011)でも書きましたが余り良い状況ではありませんし、新たな住宅ローンを組んでそれを支払っていくことを考えると、何という悪循環でしょうか。初めの方が住宅ローンを組んで家の価値以上のお金を払うのは仕方がないとしても、次の方、ご自身のお子様やお孫様がその悪循環から脱するためには、初めの住宅ローンが払い終わった頃にまだ価値が維持されていることや少しの修繕で暮らしていける状態の家を残していく必要があります。要は、少しでもその住宅が長く使えるように、先のことを考えて住宅建築する、ということです。
住宅の価値が維持出来る様な社会であれば、住宅ローンで利息を払うことになっても、それがペイ出来る可能性もあります。将来的にはそのような社会になると良いですが、それはまだまだ先のお話しであり、なるとも言えません。そう考えると、住宅ローンというものにきちんと向き合い、なるべく余計なお金を払わなくても良いような住宅建築を考えることも必要かと思います。

住宅建築とは、シーンの積み重ねで出来ています。でも、そのシーンが一瞬のことしか考えていないと良いものにはなりません。当たり前ですが、一日は24時間であり、一年は365日あります。また、年月の積み重ねは住宅に変化を与え、住まい手にも変化(歳を重ねる)を与えます。「先のことを考えて住宅建築をする」ということは、そのシーンへの向き合い方にも変化を与えます。この変化は、住宅建築をより良いものへと導き、結果としてエネルギー問題やローン問題を解決することにもつながります。
エネルギー問題や住宅ローン問題は、プロ側が意識として持っていれば良いことでもありますが、エンドユーザー(住まい手)側も頭の片隅に置いていないと、それらを意識してくれるプロとの出会いもありません。
「暖かい家や自然素材を使った家を設計してくれるプロが、何を意識してそれらを考えているのか?」、この見極めが良い建築士を探せるポイントになると私は考えていますが、皆さん如何でしょうか。

column012 新築と改修を考える

住宅建築のあり方を大きくわけると「新築」と「改修」です。
建て替えは「新築」であり、中古住宅を購入することは規模の大小はあれ「改修」することが前提になると思います。
現在の日本で住宅購入を検討する場合、注文住宅であれ建売住宅であれ、多くの方が選択する方法が新築です。また、その後の流れとして多いのは、25~35年ぐらい(以下、1世代ほど)住むと設備が古くなったり建物そのものも劣化して来るという状況と、家族関係のイベント(世代交代など)が重なることで、何となく心機一転建て替えようか?みたいなことになります。

私は、先の世代(ご自身の子供や孫以外も含む)のことを考えて住宅建築をするなら「新築」が、その世代限りの利用しか想定しないなら「改修」が良いと考えています。

新築する場合は、所謂「高性能住宅」にすることが前提です。
高性能住宅とは?という論議はあろうかと思いますが、少なくても1世代ほど生活して中古住宅となった時点で、その時代でも一般的な住宅性能や建物価値を有している必要はあろうかと思います。温熱性能で言えば、パッシブハウス(ドイツ・パッシブハウス研究所による省エネ基準)性能であれば十分だと思いますし、耐久性や耐震性についても現在の一般的な性能ではなく、先のことを考えた性能が必要だと思います。検討事項としては、やるべきことをしっかり吟味して設計すれば一概には言えませんが、高性能住宅はイニシャルコストが現在の住宅価格相場より上がることは予想されます。したがって、その支払いの準備は必要としますが、高性能住宅にしておくことは、各世代でのランニングコストを軽減できるメリットがありますので、イニシャルコストのUPについては長い目で吟味することが重要です。

改修の場合は、ご自身のことだけを考えれば良いので、新築よりは検討条件はシンプルです。
簡単にいえば、住宅購入時のご自身の年齢を踏まえ「あと何年住みたいのか?」を考えて改修すれば良いことになります。
ここで少し話題を変えますが、現在の日本には住宅ストック数が約6,000万戸ありますが、そのうちの約820万戸が空き家の状況です。空き家率で言えば、実に13.5%が空き家です。ここで(詳細は省きますが)戸建て空き家調査の内で、一時利用や2次的住宅を除く「その他住宅(解体予定、長期不在、物置利用など)」のデータを2つご紹介します。1つ目が、75%が昭和55年以前の建物であること。2つ目が、腐朽や破損がない建物は25%程度しかないこと、です。
(以上、データは国交省HPより)
中古住宅を改修して利用する場合、建物の状態で改修に掛かるコストがだいぶ違います。例えば、昭和55年以前の建物ですと、新耐震基準以前の建物ですので、耐震補強にお金が掛かります。また、構造体に腐朽や破損があると使える部分が少なくなってしまうため、中古住宅を改修して利用するメリットが殆どありません。先の国交省データは、中古住宅として購入可能な建物の一部でしかありませんが「新耐震基準(昭和56年以降)+躯体が健全」という中古住宅はあまり存在しない可能性があります。そういった意味では、改修を選択した時の検討条件はシンプルですが、適当な建物を探すことに苦労があるかもしれません。

私は、ストック住宅を活用した方が良いと思っておりますが、言葉は悪いですが、利用価値のない建物を無理やり改修して活用することには反対です。実情としては簡易調査のみで判断されていることが多いかと思いますが、価値のある・ないを詳細調査を実施した上でしっかりと吟味すべきかと思います。詳細調査については、(一社)住宅医協会が行う「既存ドック」が最適です。一般的なインスペクションでは見ないような部分もしっかりと調査してくれますので、価値判断に役立つと思います。

ここで言えることは、住宅を建築する方法はいろいろとある、ということです。
あまり素人考えで決めつけることなくプロの建築士などに相談し、ご自身に合った住宅建築を見つけてほしいと思います。