column017 温熱性能と準耐火構造

住宅などを建築する敷地には、建築基準法上の様々なルールがあり、敷地に対して建築出来る広さや高さ、用途などが制限されていますが、基本的にはその地域に適した環境が維持されるように制限を掛けています。
その中で、「防火・準防火地域」というルールがあり、その地域内の建築物はその規模によって各種の火に強い構造の建築物(以下、耐火・準耐火建築物など)にする必要があります。東京で言えば、23区内全域で準防火地域以上のルールが敷かれており、例えば防火地域内で101㎡の2階建て木造住宅を建築する場合は耐火建築物にする必要があります。

そのような状況を踏まえ今回は、準防火地域内に建築される「木造3階建て住宅」の外壁の仕様を決めて行く流れを断熱材にフォーカスして書いていこうと思いますが、この計画は準耐火建築物にする必要があります。
簡単に準耐火建築物を説明すると「壁や柱、床、階段などの主要構造部をある時間内の火災によって損傷などを生じないようにする必要がある」というものです。今回で言えば「45分準耐火建築物(以下、45準耐)」にする必要がありますが、目的の1つは火災などが起きた時に建築物から逃げる時間を確保することです。
45準耐の外壁仕様には2つの種類がありまして1)告示によるものと2)認定工法によるものですが、ここでは多くのシチュエーションで採用されている2)認定工法にて話しを進めます。

認定工法とは、試験等を経て耐火性が認められた構成のことですが、その使い方に注意があります。それは、試験等で指定していた材料以外の材料をその構成の外側にも途中にも使ってはいけない、というものです。ある意味当然と言えばそうですが、その加えたい材料が(耐火性能を損なわないと予想される)不燃材料だとしても使うことが出来ません。
外壁の認定工法は、外部側から①外装材②外付(付加)断熱材③柱間充填断熱材④内装下地材で構成されていることが殆どです。②や③については認定によって有無がありますが、認定の構成に外付断熱材が指定されていない場合は充填断熱しか出来ないということです。要は、私としては温熱環境を考慮して断熱材の厚みや種類を決めたいですが、実際は外壁の認定内容によって決まってしまうということです。これは、防火地域などで高断熱住宅を設計する際に大きな壁となります。

外壁-45準耐で一番有名な認定が「QF045BE-9226」です。これは、①外装材:窯業系サイディング張③柱間:グラスウール(以下、GW)若しくはロックウール(以下、RW)を充填断熱④室内側:石膏ボード張と言う構成ですが、この認定では柱間にしか断熱材が入れられないので、一般的な木造在来で言えば120mm厚までしか施工出来ません。また、外装材も窯業系サイディング以外は使えません。従って、サイディング以外の仕上げ材を使いたい場合は、例えばチャネルオリジナルの防火木材外壁材ウイルウォールの認定「QF045BE-0107」など別の認定を使うことになりますが、充填断熱しか出来ないことに変わりはありません。
高断熱を考えれば「付加+充填断熱」は必須なのですが、今現在は旭化成建材のネオマフォームを使った認定「QF045BE-0868」やStoJapanのEPSを使った認定「QF045BE-1370」など数えるほどしかありません。本来で言えば、GWやRWは不燃材料ですので「付加+充填断熱」としても何ら問題がないように思いますが、認定としては(2018.5までは)存在しません。

これらの状況について、いろいろなメーカーに話しを聞いていますが、45準耐で高断熱にする物件が全国レベルで数%しかなく、認定の為に必要な膨大な試験費用がペイ出来ないので、二の足を踏んでいるようです。
昨今は、社会的に省エネ住宅の必要性を説いていますが、大都市東京で建てる高断熱住宅は建築方法を制限されている状況です。先にも書きましたが、少なくても不燃材料であるGWやRWぐらいは「付加+充填断熱」と出来る認定を用意すべきかと思いますので、各メーカーさんには頑張って頂きたいですね。

column016 地盤と地震を考える

住宅などを建築する上で、どのような地盤に建てるのか?は非常に重要なことの1つです。それは、地盤の特性によって建物へ作用する地震による揺れ(以下、地震動)が変化するためです。
構造計算上も、地震力を検討する場合「振動特性係数/Rt」という係数に地盤の特性(硬質や軟弱など)を反映させます。また、「標準せん断力係数/Co」も地盤が軟弱な場合は高い係数をとることになっています。また、地盤の良し悪しは「硬軟」だけではなく「土質」も重要で、土の種類ごとに特性があり建物の沈下の仕方などに影響します。

土質区分には、礫質土・砂質土・粘性土・火山灰質粘性土などがあり、粒径などで区分されています。また地層区分としては、軟弱地盤であることが多い「沖積層」と、安定した地盤で沖積層よりは高台に見られる「洪積層」があります。
東京などで良く聞く「関東ローム層」は火山灰質粘性土に区分されますが、比較的良い地盤とされており、今のように地盤調査が必須ではない時代には「関東ローム層が出てくればOK」としていました。関東ローム層は、富士山や箱根が噴火した際の火山灰が堆積したものなので、東京以西にはこの層があることが多いかと思います。

ここまでは地盤の特徴などを書いてきましたが、要はこれらの情報を知る為に地盤調査をします。先程も書いたように、以前は住宅建築の規模では調査はしませんでしたが、住宅瑕疵担保履行法が出来てからは(一部例外を除いて)必須になりました。
地盤調査にはいくつかの種類がありますが、住宅建築で多い調査はスウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS試験)です。SWS試験は、地盤の硬軟と均質性を確認する小規模建築向けの建築基準法告示でも認められている調査方法で、安い費用で地盤の支持力を評価出来ます。木造2階建て程度の規模でよく行われる調査ですが、小規模建築物でも建物重量のあるRC造などで詳細な土質データが欲しい場合は、ボーリング・標準貫入試験を行います。
どちらが良い悪いはなく、各目的に適した調査を行うことになりますが、各調査で得られる情報が違うので、どの調査にするかは設計者の判断になります。

小規模建築物でしたら、これらのデータを元に建物基礎の形状や地盤改良の必要性を判断し、上部の耐震性能を決めて行けば良いですが、60mを超えるような超高層建築物の場合はもっと複雑です。私は構造設計者ではないので詳細の説明は出来ませんが、超高層建築物は地震による影響が大きいので、地盤の卓越周期や表層地盤増幅率なども調査し、建物に作用する地震動をより詳細に判断するなどが必要になります。
地盤の特性によって、地震動の大きさは変化します。また、先の熊本地震では「キラーパルス」なる言葉が話題になりましたが、地震動の大きさ以外の要素でも建築物に及ぼす影響が変化します。地震動は、実に多種多様な要素が絡み合って建築物に作用しますので、それに見合った構造設計をする必要がありますが、それは戸建住宅でも超高層建築物でも変わりません。

実際は、戸建住宅規模では「どんな地震動が作用するのか?」などの超高層建築物レベルの精細な検討は不要かもしれませんが、例えば表層地盤増幅率については「地震ハザードステーション」で確認が出来ますので、建築地の地盤特性の1つの情報として知っておくのも良いかもしれません。

column015 設計者の区分を考える

先日のこと、一般の方とお話しをしている際に「えっ、意匠設計者って何ですか?」と質問を受けました。私としては、特別なことではなくその言葉を使ったのですが、まさかそれについて質問をされるとは思っていませんでした。いつも一般の方とお話しをする時は、分かりにくい専門用語を使わないように気をつけていましたが、まだまだ配慮が足りませんでした。
そんな出来事があったこともあり、今日は設計者のあれこれについて少し書かせて頂きます。

それでは、そもそも設計者とは何なのかを、建築基準法(以下、建基法)の観点を交えながら簡単にご説明致します。
まずは、建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書を「設計図書」と言いますが、それらを作成することが「設計」です。また、その設計や工事監理(工事が設計図書の通り実施されているかいないかを確認すること)その他の業務を行う者を「建築士」と言いまして、建基法の資格者になります。建築士の種別として「一級、二級、木造」の三種類がありますが、簡単に言うと従事出来る業務の規模が違います。
要は、建築士が行う業務の1つである設計図書を作成する者を「設計者」と呼び、工事監理についても同じでそれらを行う者を「工事監理者」と呼びます。
従いまして、設計者とは建築士の中でより業務内容にフォーカスした呼び名だと思って頂ければと思います。

設計者とは、設計する者のことを言いますが、設計にはいくつか種類がありまして、それが「意匠設計」と「構造設計」と「設備設計」です。

構造設計とは、伏図・構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書を設計することです。住宅などの小規模建築物でも、建基法にある技術的基準に適合していることを構造計算によって確かめなければいけませんが、それらの設計を行う者が構造設計者となります。
ここで問題になるのが、先のコラム(column014)でも書きましたが四号建築物の扱いです。四号建築物は構造計算に依らず建築することが出来るので、その建物には構造設計者が存在しないことになりますので、誰かが代わりをすることになります。

設備設計とは、主に建築設備に関する設計図書を設計することです。建築設備とは、電気・ガス・給排水などのインフラ系設備に始まり、換気空調や消火、エレベータなどの設備を言いますが、それらの平面図や構造詳細図などの設計を行う者が設備設計者となります。尚、設備設計に関しては、構造設計とは違い「延床面積が2,000㎡を超える建築物の建築設備に係る設計を行う場合においては、建築設備士(建築設備の専門家)の意見を聞くよう努める」となっておりますので、例えば住宅に関しては建築設備士が係ることは一般的にはありません。

いよいよ最後に意匠設計についてです。
始めの「えっ、意匠設計者って何ですか?」の答えは、「構造設計図書と設備設計図書以外の設計図書を設計する者」のことになります。建築設計においてキーパーソンとなるのが意匠設計者で、建築物のトータルデザインを行います。
意匠設計者の役割は多岐にわたり、お客様との打合せを重ね希望・要望などをくみ取り、実用的にあるいは美的にその建物をデザインすることに始まり、構造設計・設備設計のとりまとめ、建築確認などの申請業務、更には工事監理に至るまで、総合的に取りまとめて行く事を担います。
一戸建ての住宅などのお施主様がお会いになる設計者は、ほぼ意匠設計者です。それが呼称として「建築士」や「建築家」になったりするだけです。

意匠設計者は、お施主様のご希望などの情報を基に、設計する建築物の方向性を考え決定します。従いまして、その建築物の出来栄えは、構造設計者や設備設計者などの技術的な裏付けが有ってのことは当然ですが、意匠設計者の知識や経験あるいはマネージメント力で決まってしまうと言っても過言ではありませんので、とても重要なポジションです。

column014 四号建築物を考える

非常に残念なことですが、大地震が来る度に何かしらの建物被害が報告されます。それは、築何十年という耐震性の低い多くの住宅が今なお使われているので、ある所では致し方ないことかもしれませんが、その原因として「4号建築物」や「耐震等級」なる言葉が世間を賑やかせたりします。
ここで、簡単にそれらの言葉を説明します。

始めに「4号建築物」について。これは、建築基準法6条第1項第1~3号までの規模にならない建築物のことを指していまして、建築基準法(以下、建基法)には第4号を「前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画~(以下続く。)」という表現で書かれていますが、この建基法の条文をとって4号建築物と呼びます。1つ例を上げると、延床面積500㎡以下の木造二階建ての建築物は4号建築物になります。要は、多くの2階建て木造住宅はそのカテゴリーに入ります。

次に「耐震等級」について。これは、品確法の性能表示基準の1つで「構造の安定に関すること」という評価で求められている「地震に対する構造躯体の強度レベル」のことを指しています。建基法に定めのある構造などの規定を満たしているものを「等級1」として、検討する地震力を1.25倍にしたものを「等級2」、1.5倍を「等級3」としています。要は、等級が上がるほど地震に強い建物になるということです。

ここまででは、何故それらの言葉が賑やかになるのか疑問だと思いますが、四号建築物に対する構造耐力の基準を知ると少し分かってきます。
まず四号建築物は、構造計算に依らないで建物を建築することが出来ます。これは「構造耐力を検討しない」ということではなく、建基法の「仕様規定」に適合させる必要があり、壁量設計により地震力や耐風力に対する必要壁量を計算し、耐力壁をバランス良く設置することによって構造の安全性を担保させることを指します。仕様規定自体は建基法に則っているので問題はありませんが、構造に疎い意匠設計者でも出来てしまうことに一抹の不安があります。それでも、構造的な問題が少ない真四角の総二階建てなどなら良いでしょうが、実際はそのような建物ばかりではなく、以前とある雑誌に設計者の知識不足が起因と思われる記事が載っていました。
その記事では、関東地方の地場工務店がプレカット工場に渡した4号建築物の図面から、100件を無作為抽出して構造計算(許容応力度計算)を実施したところ、設計応力が許容応力を上回る「エラー」が全ての事例に発生していた、とのことでした。全てにエラーがあったということに驚いたのですが、その主たる原因が、柱直下率(梁上耐力壁率※梁下に柱がない状態を含む)の低さと吹抜けなどによる水平剛性不足です。これは、仕様規定による設計では対応出来ない項目で、設計者の知識と経験が如実に表れます。

話しをまとめると「四号建築物は構造計算による検討が行われていない(可能性がある)ので、構造的に問題が起きることがあるし、更にそれが原因と疑われることで地震により建物が倒壊することがある」ということです。また、仕様規定による建物のことを「耐震等級1」と表現していることが多く(詳細は違うが、ここでの説明は割愛)これらの言葉が大地震の度に世間を賑やかすことになります。
ちなみに、耐震等級が上がると水平構面の検討が必要になり、構造計算に依らないものだとしても先の懸念事項が低減されることになります。
建基法は、あくまで最低限の基準です。それを遵守することは当然ですが、その先の構造耐力を一建築士としてどう考えて行くのか?が非常に重要になると思っています。
弊社の場合は、全棟を構造設計者による構造計算(許容応力度計算)を最低限の検討としていますが、皆さんは如何でしょうか。

column013 住宅建築で解決すべきこと

極論を言えば、住宅建築とは、
「エネルギー問題と住宅ローン問題にどう向き合うのか」
にあると思っております。
エネルギー問題とはパブリックなこと、住宅ローン問題とはプライベートなことと捉えています。

エネルギー問題は、地球温暖化問題を起因とする省エネ・省CO₂社会実現への取り組みのことです。日本の省エネへの取り組みについては、1973年のオイルショックの頃より進められています。その当時は技術開発とエネルギー利用の徹底的な見直しで省エネを達成しましたが、バブル景気と重なるようにして起こった地球温暖化問題への対応は、その後の生活スタイルの変化も手伝い、京都議定書で約束した1990年比6%減の温室効果ガス排出削減は出来ていません。また、エネルギー需要に関しても、2013年度時点で産業部門や運輸部門は削減出来ていますが、住宅が関わる民生部門では33.5%増となっており、全体のシェアにおいても民生部門が1/3を占めています。従いまして、住宅レベルでも建築物の省エネ化をすることが重要なこととなっております。

このように書いてしまうと、いざ住宅建築をする際に、少し話しが大きすぎて他人ごとにように感じてしまうかもしれませんが、光熱費で考えれば身近に感じることが出来るかもしれません。
今現在も、東日本大震災の影響により、電気代は上がっています。また、電気代上昇の原因にもなっている化石燃料についても、長期的に見れば価格が上昇していくことは予想され、光熱費は上がることはあっても下がる可能性は少ないと思います。
少し話しがそれますが、日本は2000年頃に比べ年あたりの化石エネルギー輸入額が10~20兆円も増えているそうです。以前この話しを聞いた時は、日本は大丈夫か?とさすがに思わざるをえませんでした。
生活のために光熱費は必要ですが、その行き先が化石燃料を買う(国外にお金が流れる)ことだと思うと、さすがにもったいないと思います。上がり続ける光熱費を少しでも減らす為、なるべく省エネな暮らしが出来るような家づくりや住まい方を目指すべきだと思います。
省エネな家づくりの第一歩は、世帯当たりのエネルギー消費量の1/4を占める暖房需要を減らすことです。それには、高気密高断熱化と日射取得を増やすことが重要で、早い話しパッシブハウスにするのが良いと思います。また、パッシブハウスにすることは、体感温度に優れた居心地の良い空間とすることも出来、より健康的に暮らすことが出来ます。更に、パッシブハウスにすることは、30年後の資産価値向上へも寄与します。これは、プライベートなことと書いた住宅ローン問題の解決にも関わっており、パッシブハウスにすることは多岐にわたる問題が解決するポテンシャルがあると言っても過言ではありません。
あと世帯当たりのエネルギー消費量を減らすのに重要なことが「動力・照明他」の消費量削減です。バブル経済以降、インターネットの普及などにより大変便利な世の中になりましたが、パソコン関連含め家電などによる消費量が増大しました。これは、家の性能そのものよりも住まい方によるところが大きいため、皆様一人一人の努力が不可欠な内容です。

さて、次は住宅ローン問題です。
多くの方が、住宅を手に入れる為に住宅ローンを組みます。住宅ローンを組むということは、当たり前ですが利息が発生します。現在は、超低金利時代ですが、それでもトータルで考えれば家の価値(価格)以上のお金を払うことになります。しかも、払い終わった頃には家の価値がなくなっている、というのが今の日本の実情です。
価値がないという評価を的確に説明するのは難しいですが、その先も暮らしていくには建物の状態が悪くなっていることとするならば、スクラップ&ビルドすることになります。これは、先のコラム(column011)でも書きましたが余り良い状況ではありませんし、新たな住宅ローンを組んでそれを支払っていくことを考えると、何という悪循環でしょうか。初めの方が住宅ローンを組んで家の価値以上のお金を払うのは仕方がないとしても、次の方、ご自身のお子様やお孫様がその悪循環から脱するためには、初めの住宅ローンが払い終わった頃にまだ価値が維持されていることや少しの修繕で暮らしていける状態の家を残していく必要があります。要は、少しでもその住宅が長く使えるように、先のことを考えて住宅建築する、ということです。
住宅の価値が維持出来る様な社会であれば、住宅ローンで利息を払うことになっても、それがペイ出来る可能性もあります。将来的にはそのような社会になると良いですが、それはまだまだ先のお話しであり、なるとも言えません。そう考えると、住宅ローンというものにきちんと向き合い、なるべく余計なお金を払わなくても良いような住宅建築を考えることも必要かと思います。

住宅建築とは、シーンの積み重ねで出来ています。でも、そのシーンが一瞬のことしか考えていないと良いものにはなりません。当たり前ですが、一日は24時間であり、一年は365日あります。また、年月の積み重ねは住宅に変化を与え、住まい手にも変化(歳を重ねる)を与えます。「先のことを考えて住宅建築をする」ということは、そのシーンへの向き合い方にも変化を与えます。この変化は、住宅建築をより良いものへと導き、結果としてエネルギー問題やローン問題を解決することにもつながります。
エネルギー問題や住宅ローン問題は、プロ側が意識として持っていれば良いことでもありますが、エンドユーザー(住まい手)側も頭の片隅に置いていないと、それらを意識してくれるプロとの出会いもありません。
「暖かい家や自然素材を使った家を設計してくれるプロが、何を意識してそれらを考えているのか?」、この見極めが良い建築士を探せるポイントになると私は考えていますが、皆さん如何でしょうか。

column012 新築と改修を考える

住宅建築のあり方を大きくわけると「新築」と「改修」です。
建て替えは「新築」であり、中古住宅を購入することは規模の大小はあれ「改修」することが前提になると思います。
現在の日本で住宅購入を検討する場合、注文住宅であれ建売住宅であれ、多くの方が選択する方法が新築です。また、その後の流れとして多いのは、25~35年ぐらい(以下、1世代ほど)住むと設備が古くなったり建物そのものも劣化して来るという状況と、家族関係のイベント(世代交代など)が重なることで、何となく心機一転建て替えようか?みたいなことになります。

私は、先の世代(ご自身の子供や孫以外も含む)のことを考えて住宅建築をするなら「新築」が、その世代限りの利用しか想定しないなら「改修」が良いと考えています。

新築する場合は、所謂「高性能住宅」にすることが前提です。
高性能住宅とは?という論議はあろうかと思いますが、少なくても1世代ほど生活して中古住宅となった時点で、その時代でも一般的な住宅性能や建物価値を有している必要はあろうかと思います。温熱性能で言えば、パッシブハウス(ドイツ・パッシブハウス研究所による省エネ基準)性能であれば十分だと思いますし、耐久性や耐震性についても現在の一般的な性能ではなく、先のことを考えた性能が必要だと思います。検討事項としては、やるべきことをしっかり吟味して設計すれば一概には言えませんが、高性能住宅はイニシャルコストが現在の住宅価格相場より上がることは予想されます。したがって、その支払いの準備は必要としますが、高性能住宅にしておくことは、各世代でのランニングコストを軽減できるメリットがありますので、イニシャルコストのUPについては長い目で吟味することが重要です。

改修の場合は、ご自身のことだけを考えれば良いので、新築よりは検討条件はシンプルです。
簡単にいえば、住宅購入時のご自身の年齢を踏まえ「あと何年住みたいのか?」を考えて改修すれば良いことになります。
ここで少し話題を変えますが、現在の日本には住宅ストック数が約6,000万戸ありますが、そのうちの約820万戸が空き家の状況です。空き家率で言えば、実に13.5%が空き家です。ここで(詳細は省きますが)戸建て空き家調査の内で、一時利用や2次的住宅を除く「その他住宅(解体予定、長期不在、物置利用など)」のデータを2つご紹介します。1つ目が、75%が昭和55年以前の建物であること。2つ目が、腐朽や破損がない建物は25%程度しかないこと、です。
(以上、データは国交省HPより)
中古住宅を改修して利用する場合、建物の状態で改修に掛かるコストがだいぶ違います。例えば、昭和55年以前の建物ですと、新耐震基準以前の建物ですので、耐震補強にお金が掛かります。また、構造体に腐朽や破損があると使える部分が少なくなってしまうため、中古住宅を改修して利用するメリットが殆どありません。先の国交省データは、中古住宅として購入可能な建物の一部でしかありませんが「新耐震基準(昭和56年以降)+躯体が健全」という中古住宅はあまり存在しない可能性があります。そういった意味では、改修を選択した時の検討条件はシンプルですが、適当な建物を探すことに苦労があるかもしれません。

私は、ストック住宅を活用した方が良いと思っておりますが、言葉は悪いですが、利用価値のない建物を無理やり改修して活用することには反対です。実情としては簡易調査のみで判断されていることが多いかと思いますが、価値のある・ないを詳細調査を実施した上でしっかりと吟味すべきかと思います。詳細調査については、(一社)住宅医協会が行う「既存ドック」が最適です。一般的なインスペクションでは見ないような部分もしっかりと調査してくれますので、価値判断に役立つと思います。

ここで言えることは、住宅を建築する方法はいろいろとある、ということです。
あまり素人考えで決めつけることなくプロの建築士などに相談し、ご自身に合った住宅建築を見つけてほしいと思います。

column011 design concept

住居とは「私たちの生活を雨風や寒暖から守る」ためのものです。古くは竪穴式住居から始まった私たちの住居は、自然の驚異に晒されながらも、時にはそれらの力を利用して「如何にして快適性を得るか」ということを考えながら生活してきました。
吉田兼好の徒然草「家のつくりやうは、夏を旨とすべし」は有名ですが、今では技術が発展し夏のことも冬のことも考えて住居を考える時代になりました。

技術が発展してきて私たちの暮らしは大変便利になりましたが、それは「電気なしの生活が考えられない時代になった」とも言えます。正に、吉田兼好の自然の力を利用する世の中から、地球が長い時間を掛けて作ってきた化石燃料を利用する世の中への変化です。更に、地球温暖化が叫ばれる昨今は、二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーと称し、制御困難な原子力が使われるという世の中にまでなってしまいました。

現状では、多くの電気を再生可能エネルギーではなく化石燃料で作っています。原発は事故によってずっと先の世代まで損失をもたらしますが、有限である化石燃料を我々の世代でどんどん使うことは何れ枯渇する可能性を意味し、先の世代を考えればある意味原発と同じです。
要は、再生可能エネルギーで世界の電力量が賄えるその日までは、少しでも化石燃料の使用量を減らさなければなりません。
それらにおいて住宅で出来ることは、吉田兼好の時代に戻り自然の力のみを利用し快適性を得ることではなく、所謂パッシブデザインによって創意工夫をしながら、なるべく少ないエネルギー消費で快適性が得られるよう建築することです。

住居を考える上で、もう一つ大事なことがあります。それは、建物寿命です。今の多くの住宅は建物寿命が欧米に比べ短いです。それには、日本が地震大国なことなどいろいろな背景が絡んでいますが、そもそも「長く使うことを前提として建築していない」ことは大きな理由の一つです。また、そのことで住宅ローン問題を生んだり、頻繁にスクラップ&ビルドする結果として、その度に思い出までもがスクラップされることになります。
それらを解決する方法の1つは、先のことを見据えて耐久性と耐震性を考えることによって、建物の価値が無くならないよう建築することです。
そうすれば、「価値あるものを残し、手を加えながら住み続ける」ことが選択肢となり、あなたがその住居で過ごした数々の思い出も生き続けることにつながります。

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末永く暮らせる・住まわれる
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私たちはそんな住環境をご提案いたします。

column010 仕上素材を考える-基本編

外壁や屋根などの外部から内壁・床や天井と言った内部まで面を構成する部分には、多くの場合に仕上材が存在します。外装材であれば、窯業系サイディングから石やタイル・塗装・木板など様々なものが存在しますし、内装材についても、ビニールや紙のクロス類から漆喰などの塗り材や塗装などこちらも様々存在します。
基本としては、建て主様の好みに合った材料を使えば良いと思いますが、実は法律上や建築環境の観点など材料の選定において検討すべきことはいろいろとあります。

まずは、外部について。主な注意すべき点は3つ、耐震性と耐久性と防火性です。
耐震性については、なるべく軽い材料が構造的には有利です。それは、石やタイルなど比較的荷重のある材料を選ぶと、地震時に躯体へ掛かる負荷が大きくなり、その分耐力が必要になるからです。したがって、耐震性という観点で選ぶなら、外壁で言えば、金属系サイディングや木板などが、屋根で言えば、板金葺きやコロニアルなどの軽い材料が有利でしょうか。
次に耐久性ですが、これは言い方を変えると維持管理のことです。外部用仕上材(周辺部材も含む)は基本的には紫外線劣化をするので、一定のサイクルでメンテナンスを行なう必要があります。フリーメンテナンスにするのはなかなか難しく、あえて言えば、新築時がベストの状態ではなく、使いながら良くなっていく(風合いが出てくる)様な材料を使うことでそれに近い状態になるかもしれませんが、それでもフリーと言う訳には行かないです。従って基本的には、耐久性のある・耐用年数の長い材料を選ぶことが、維持管理を楽にします。また、将来のメンテナンスや改修工事のことを考えると「足場を組むか、組まないか」が費用の面で最も重要な課題になります。言い方を変えると、なるべく足場を組む回数を減らしてメンテナンスを行っていきたいので、屋根・外壁などの仕上材の耐用年数を同じぐらいにしておくのも1つの手かと思います。
次は防火性についてです。これは都市計画上の地域などにもよりますが、都市部や郊外など住宅が多く立ち並ぶような地域では、外壁及び屋根に防火性が求められています。これは、外壁で言えば「外部からの延焼にある時間耐えうる(燃えない)外壁の構造にしなければならない」というもので、仕上材のみに言及しているわけではなく、仕上材を含む外壁としての構造を問われています。多くの場合は、各仕上材で認定工法がありますのでご希望の仕上材に見合った工法で検討しますが、1点だけ注意事項があります。それは、高断熱住宅にしたい場合です。在来木造で言えば、柱間の充填断熱と外部側に付加断熱をして高断熱とすることがありますが、その場合の認定工法(特に45分準耐火構造)が今現在あまり存在しません。認定工法の場合、認定書に書いてある部材以外使ってはいけないことになっており、特殊な外壁材と断熱材で高断熱住宅としたい場合は、注意が必要です。

次は、内部について。主な注意すべき点は2つ、室内環境と防火性です。
屋内環境とは、ホルムアルデヒドなど(以下、VOC等)によるシックハウス症候群対策と湿度対策です。VOC等については、昨今は材料への含有量が法律により規制され以前よりは安全になっておりますが、それでもなくなっているわけではありません。また、建基法で換気設備の設置も義務付けられているため安全性は高まっていますが、それでもより安全を期すならば、VOC類含有の可能性がある塗料や接着材を使った材料はなるべく使わない方が良いでしょう。対策としては、合板類をなるべく使わないことや漆喰や珪藻土と言った自然素材を仕上材で使うことが上げられます。また珪藻土の場合は調湿性能(JIS規格)がありますので、湿度対策にも有効です。尚、一日の湿度変化を考えると、その調湿性能がある材料の表面2~3mmぐらいしか効いていないため、なるべく調湿効果を持たせたいならば、材料の厚さではなく表面積を増やすのが得策です。
最後に防火性については、基本的には火気使用室(要は、キッチン)には不燃性の材料を使う必要がありますが、一般的な国産の仕上材は準不燃材料認定などを持っているので大きく問題になることはありません。ちなみに、木板や認定のない材料を使いたい場合は、国交省告示225号を使うと火気使用室内でも(告示の範囲内で)不燃仕上以外を使うことが可能になります。

仕上材ぐらいは好きなものを使って良さそうに思いますが、意外に法律での決まりがあります。また、外装材などはいろいろな意味で周辺環境へも影響がありますので、総合的な判断で材料を選択できると良いですね。

column009 窓を考える-基本編

建物には、外部へ向かって開いている部分があります。それを「開口部」といいますが、換気の為のものだったり人が出入りする為のものだったりします。窓もその開口部の1つで、採光や通風、眺望といった目的のために設置されており、主にガラスで外と内を遮っているものを言いますが、今回はそんな窓についてのあれこれを書いていこうと思います。

まずは、窓採光について。建築基準法令(以下、建基法)上から説明しますと、居室には床面積に対してある割合以上の採光上有効(隣地との離れが関係します)な大きさの窓を設置するよう求められています。多少の例外はありますが、基本的には窓のない居室は建基法上認められておりません。これは、ある程度の敷地面積が確保されている場合はそれほど難しいことではありませんが、都市部の狭小敷地などでは意外とやっかいで、平面プランを検討するのに多大な影響を及ぼします。例えば、隣地に囲まれた場所に居室を計画すると、まず採光上必要な窓が確保出来ません。まあ、それでもいろいろなテクニックを使って建基法上有効な窓をひねり出しますが、正直この窓からの採光より照明の方が明るい、的なことは良くあります。従って、採光上有効な窓をちゃんと採光出来る様に作ろうと思うと、建築出来ないであろう土地が東京など都市部ではたくさん出来てしまうと思います。そもそも明るさの問題だけなら照明で代替出来るだろうといった意見もありますが、災害時なども考えると一概には言えないことです。また、多少隣地が迫った場所に設置する窓であっても、自然光が反射され木漏れ日のように室内に入って来ます。その良さは、私がここで書く必要もないほど皆さん体験上ご存知のことと思いますので、法律云々とは別に、どんな敷地条件であれ如何に家全体を窓からの採光で明るくするか、の工夫はすべきことかと思います。

次に、窓通風・換気について。また建基法上から説明しますと、これも採光と同じようにある割合以上の窓の設置を求められております。また詳細は省きますが、基本的には採光上有効な窓で換気も出来ることがベターです。それと換気の場合は、採光とは違い換気扇などの機械設備でも代替出来ることになっています。居室の換気だけを考えれば居室のどこに窓があってもある程度は機能すると思いますが、家全体の通風を考えるとなかなかそうもいきません。通風を考える場合は、まず風の入口と出口を適度な位置・距離を持って確保する必要があります。基本的には、その地域ごとにある卓越風を参考にして位置を決めると良いと思います。また(通)風は温度差でも起きますので、卓越風から入口を決めたらその反対側の上部に窓を設置すると風のないような日でも風通しを感じるような設えになると思います。

通風からも分かる通り、窓は開け閉めすることで簡単に建物の外と内をつなげることが出来る反面、温熱環境という面から見ると、主にガラスで出来ているために熱の移動が激しく、冬で言えば50%以上の熱が流出し、夏は70%以上の熱が流入します。最近はLow-Eガラス樹脂窓などの商品もありますので、だいぶ性能が良くなってきました。それでも例えば、APW430(YKKap)はUw値が0.9w/(㎡・K)※カタログ値ですが、一般的な断熱材である高性能グラスウール90mmのU値は0.42 w/(㎡・K)ですので、窓の方が倍以上の熱の出入りがあることになります。まあ、倍ぐらいしか違いがない所まで窓の性能が上がって来たことはすごいことなのですが、それでも壁等の断熱材は厚さを増やせばその数値はどんどん下げられますが、窓はそういう訳にもいかないことを考えると、やはり窓の設えをどうするのかが、温熱環境を考える上では重要なことかと思います。

これらのように、窓に求められる機能は多岐に渡ります。素材にしても、アルミ・樹脂・木製などいろいろと存在し、耐久性・メンテナンス性・防火性なども考慮しながら商品を決めて行かなければいけません。当たり前ですが、窓のない住宅は存在しませんので、住まう方それぞれに自分たちが求める窓の機能・性能をきちんと理解し考えるべきかと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column008 構造用面材の選び方

木造住宅の場合、地震に強い建物にするために「耐力壁」というものを設置します。
大まかにわけて「筋交」と「構造用面材」の2種類の方法がありますが、最近は構造用面材で造る方が地震に強い建物が出来ると言われています。
そんな構造用面材は構造用合板を始めとして、いくつもの種類がいまは使われています。どれを選んだらよいのか正直迷いますが、私は主に「透湿抵抗値」を基準に選んでいます。

構造用面材なのに何故?と思われるかと思いますが、耐震性能という意味では面材そのもので決まるわけではなく、トータルの考え方や面材の施工状況などによることが多く、良い悪いが簡単に決められるものではありません。また、強度を表す「壁倍率」の数字そのものを信じ、その建物に必要な耐力壁長が満たせるとすれば、どれも違いがないとも言えます。しかし、各面材で違いがある項目があります。それが、透湿抵抗値です。

昨今、一戸建て住宅の耐力壁に面材が使われていることや高断熱・高気密住宅の普及のため、住宅の気密性が上がっています。気密性が良くなること自体は悪い事ではないですが、今まで隙間から(ある意味)勝手に出入りしていた湿気が壁の中などに留まるという現象が起こります。この現象は「結露」を引き起こす原因にもなり、それは構造躯体やグラスウールなどの繊維系断熱材の劣化につながります。そのため、なるべく壁内には湿気を入れず又入ってしまった湿気を速やかに外部へ排出する必要があります。最近は、外壁通気工法が一般的になり湿気を外部へ排出し易くなってはいますが、ここで透湿抵抗の高い構造用面材を外壁側に使うとそれらの妨げになる恐れがあります。
これらのことを踏まえ、躯体性能にも影響を及ぼす可能性があることを避ける為、なるべく透湿抵抗の低い材料を使うようにしています。
参考までに、ポピュラーな構造用面材の特徴をまとめました。

 

 

基本的には、耐震性及び耐久性の向上を念頭において設計しますし、面材の壁倍率や大壁仕様や真壁仕様などの納め方、防火構造への対応、防腐防蟻への対応などその住宅ごとに考えるべき内容や重要とすべき要件が違いますので、その都度その状況に見合った面材を採用するようには心掛けています。