column021 何故断熱なのかを考える

我々の生活の中で感じる快適さに影響を及ぼす要因はいろいろありますが、基本的には聴覚や嗅覚などの五感にとってどう感じるか?が重要なことです。
それらは、建築の室内環境としては美的要因・心理的要因・生理的要因・機能的要因と表現され、それぞれに五感が単独で又は相互的に影響を与えながら、我々は快適さを判断しています。
その中で生理的要因(いわゆる五感に近い要因)が、主として建築環境工学で取り扱われており、我々が快適性の指標としている「熱と空気に関する温冷熱環境」もその中に含まれています。

さて、室内の温熱感覚の要素の中で、一番影響を与えているものは何でしょうか?
要素としては、気温(室温)を始め、相対湿度や放射(簡単に言うと、壁や天井の表面温度)、気流などが影響します。また、これら屋内環境側の要素の他に人体側の条件として、代謝量(Met/メット)と着衣量(clo/クロー)が関係します。
このように快適性に関わる要素はいくつもありますので、快適な温熱感覚を検討することは非常に複雑です。また、快適にはエネルギー代謝量や人種、老若男女などの違いによる個人差も影響するため、それらの検討をより難しくしています。
従って住宅建築をする場合は、その個人の感覚の違いもきちんと把握しておくことが重要ですが、同一建物内に暮らす方それぞれにベストな環境を作るのは容易ではありません。
では、どうすれば良いのか?
それは「温熱感覚の要素の中で、影響力のあるものから順番に対策を考えて行く」ことです。
そこで、先の質問に戻るわけですが、答えは「気温」です。当たり前の話しかもしれませんが例えば、服を着るとか脱ぐとかも、基本は気温によって決まります。運動して暑いや寒いも気温によって感じ方が違います。
このように、最も支配的となる気温をコントロールすること、が始めに対策すべきことです。

室温コントロールに最も有効なのが建物の断熱性能を向上させることです。この断熱をすることは、屋外環境からの影響を減らすことであり、夏であれば日射による熱が屋内に侵入してくることを減らします。高断熱であればあるほど効果があります。また、断熱することは快適な環境を作るためのふり幅を減らすことにも寄与します。これは、少ないエネルギー投入で快適性を得られることにもつながり、省エネにもなります。それに、高断熱にすると壁や天井からの放射温度も下がりますので、屋内環境側の2要素に対して効果があると考えられます。

ここで、断熱性能を上げないで快適性を得る方法を1つ考えてみますが、要素としては気流を使い検討します。
分かり易く例えると、通風で涼を得る方法です。
確かに春や秋は気温の快適性が高いので、通風により快適性を向上させることも可能かと思います。しかし、夏はどうでしょうか。夏の場合は、気温による快適性が低いので、それなりの通風がないと快適性は上がりません。更に、低断熱だとすると壁からの熱放射もあるため、通風による快適性の向上は相当厳しいと思います。
要は、断熱もしないで通風に頼ることは、もっとも効果のある要素を蔑ろにして、風が吹かなければ効果のない気流に快適性を委ねることを意味します。
さすがに、それは無理があると思いませんか。
家づくりとして通風での涼も大事な要素ですが、その前にやるべきことがあるのではないでしょうか。

温熱環境としての快適を得る方法はいろいろありますが、まずは断熱(と気密)をすることです。こうして建物性能としてベースを作っておくことで、このあとで検討すべき要素の解決が容易になったり、扱いやすくしてくれます。
一般的な木造住宅であれば、G2レベル(HEAT20)までの断熱性能ならデザイン性を損なうことなく可能だと思いますので、最低限はそのレベルを目指すべきかと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column019 Ua値と一次エネルギー

H27年に改正した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(通称、建築物省エネ法)」以前は、省エネ基準と言えば、主に断熱性能のことを示していました。しかし、先の改正で設備などの性能を評価した一次エネルギー消費量でも省エネ基準の1つとして示せることになりました。
因みに、一次エネルギーとは「石油や石炭、天然ガスなど」のことで、二次エネルギーとは一次エネルギーから作られる「電気や灯油、都市ガスなど」のことを言います。

一次エネルギー消費量の評価は、省エネ法以外にも「BELS」という第三者認証制度もあります。これは、星の数で性能を評価しますが、省エネ基準を1.0(BEI/評価のベース)として星2の評価としています。最高は星5の0.8以下(BEI)としており、一次エネルギー消費量を省エネ基準相当より2割以上削減した、という評価になります。

話しを戻しますが、建築物省エネ法には、躯体の断熱性などを評価する「断熱等性能等級(以下、断熱等級)」と高効率設備の使用を評価する「一次エネルギー消費量等級(以下、エネルギー等級)」の2つの評価基準があります。
両者を単純に比較すると、例えば「フラット35SのBプラン」では、どちらの4等級でも省エネルギー性を満たすことになっていますので、同等級ならば同じような省エネ性であると言えます。しかし、エネルギー等級の方は高効率設備が評価されるので、断熱性が高いとは言い切れません。正直、今現在の一般的な設備機器でもそれなりに評価されてしまうので、断熱性をギリギリまで落としてフラット35Sの省エネルギー性を満たそうとしているローコスト系ハウスメーカーもあります。

各等級にはそのような違いがありますが、実際断熱性能を上げると一次エネルギー消費量がどう変わるのかは知っておくと良いかと思いますので、今回はそれらの比較をしてみたいと思います。
使用ソフトは、公的な評価で使われるWEB上の「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」です。
尚、プログラムに入力する各項目の値は、前回のコラム(column018)で使用した「断熱等級4→G1→G2(0.87→0.56→0.46)」時の計算結果及びその根拠数字を使用します。また、設備仕様(第三種換気、太陽熱やコージェネはなし)や使い方(部分間欠冷暖房)は一般的なもので比較します。

では、計算結果の設計一次エネルギー消費量を記載します。
尚、基準となる「基準一次エネルギー消費量」は78.2(GJ/戸・年)でした。
1)断熱等級4:74.7GJ(BEI:0.94) ※暖房設備が基準より多い。
2)G1:70.3GJ(BEI:0.87) ※暖房設備が基準と同程度になった。
3)G2:69.1GJ(BEI:0.85) ※暖房設備が基準より少なくなった。

結果としては、全ての項目が基準を下回るには、G1レベルの断熱性能が必要なことが分かりました。
また、その時のBEIは0.87ですのでけっこう良さそうに見えますが、実は照明設備を全てLEDにするだけで照明設備の消費量が半分ぐらいになるので、それを省くと0.96になります。

さて、はじめにBELSの最高評価はBEIで0.8以下だとご説明しましたが、先のG2レベルでは0.85までしか行かなかったので、まだ足りないことになります。なので、BELSで星5がもらえるように今度は設備を変えてみます。方法としては、給湯設備の消費量が多いので、それを減らすべく各水廻りの水栓を節水系の商品に変更してみます。
4)G2+節水設備:66.2GJ(BEI:0.80)
結果、66.2GJまで一次エネルギー消費量が下がり、星5の評価になりました。

ここでは、節水設備を多少特別扱いしましたが、実際は各メーカーのキッチンやユニットバスを使えば多くの商品が節水設備になっているので、特別なことではありません。
先にも書きましたが、現在一般的になっている設備を使うことでそれなりの評価を得られます。要は、室内の温熱環境を踏まえてG2レベルの断熱性能として、多少省エネを意識して設備を選んでもらえれば、BELSで星5の評価がもらえます。
尚、星5をねらうだけなら多少施工難易度が上がるG2より「G1+節水設備+αの高効率設備」という方法もあると思いますが、省エネに対する本来の考え方からすると躯体強化が先だと思いますので、やはり断熱性能をG2レベルまで上げる方が理にかなっていると思います。

このようにいろいろと紐解いていくと、一次エネルギー消費量計算結果を見るだけで「その住宅がどのような省エネ住宅なのか」が分かります。
確かに、設備による一次エネルギー消費量削減も必要なことですが、そこに住宅としての「居心地の良さ」が備わっていなければ、一般の方が省エネへの投資に意味を見出すのは少しハードルが高いと思います。
また、一般の方がいわゆる省エネ住宅を評価するのは難しいと思いますので、例えば住宅建築の依頼先を選ぶ際に「省エネ住宅の基本性能として、どのレベルが必要と思っているか?」を確認するために、下記の質問を設計事務所や工務店にされると1つの判断材料になるかと思います。
①「Ua値(ユーエーチ)」を質問し、0.46以下(G2レベル)を確認する
②「BELS(ベルス)」の評価を質問し、星5以上を確認する
この2つが狙える建物仕様がベースであれば、ひとまず及第点かと私は思います。

その他、私が所属しているパッシブハウス・ジャパンが監修している「建もの燃費ナビ」というソフトでは、「年間冷暖房負荷」という値で建物性能を評価出来ます。
この値は、Ua値に関する断熱性能に加え、換気負荷や日射熱取得量や日射遮蔽などいわゆる「パッシブデザイン」も数字に反映されますので、Ua値やBELSでは物足りない方は冷暖房負荷の検討も考えては如何でしょうか。

column018 断熱とUa値を考える

2020年に省エネ基準が住宅レベルでも法制度化されようとしていますが、未だ断熱性能を良くすることに二の足を踏んでいる方々がいらっしゃいます。初めから毛嫌いしている方もいれば、計算などが良くわからない為に思考停止している方もいるのかもしれません。
「そんな難しいことではないし、悪いものでもない」と思いますが、計算という数学的要素がコトをややこしくしているのかもしれません。
そこで今回は、そんな方々がまず何を目指したら良いか、が分かるようになるべく平たい計算を用いて答えを探してみようと思います。

フラット35や長期優良住宅などで住宅の断熱性を評価するために「Ua値」という指標を使います。
「Ua値」とは「外皮平均熱貫流率」のことで、外気等に接する天井・壁・床及び開口部からの熱の通しやすさの平均を表しており、単位を書くと「W/㎡・K」になります。これは、数字の大きい方が熱を通しやすいという意味であり、「数字が大きい=断熱性が悪い」と言うことも出来ます。

Ua値の基準には、公的な基準である省エネ等級(以下、断熱等級4)やZEH、又は民間のHEAT20(以下、G1若しくはG2)で定めている基準などがあります。「断熱等級4→ZEH→G1→G2」の順で厳しい値になりますが、東京23区で言えば「0.87、0.60、0.56、0.46」という値になります。
これだけ見ても、どんな断熱材や窓を使えば良いのかイマイチ分からないと思います。そこで「それぞれの値で断熱材や窓がどう違うのか?」を検証してみます。

基準は断熱等級4の0.87とし、その仕様(以下、基準仕様)は下記とします。
①木造2階建て 延床面積 116㎡、②窓面積の合計 ①の18%位、③天井断熱 高性能グラスウール16K(以下、HGW16)t=90、④壁断熱 HGW16 t=90、⑤床断熱 XPS t=30 ⑥窓性能 Uw=4.65、η=50
尚、使用ソフトは住宅性能評価・表示協会でDL出来る「外皮計算シートEXCEL」です。

因みにですが、上記の中で天井と床は「旧省エネ等級4」で使用すべきだった断熱材より薄くなっています。要は、多少断熱性能を落としても同じ等級4の評価がもらえることになった、ということです。これを知っていて、断熱性能を落として省エネ基準を得ているローコスト系ハウスメーカーもあります。

では、基準仕様を踏まえながら計算を始めてみましょう。
まずは、旧省エネ4等級の仕様規定を満たしていない天井と床を変更します。
・③:HGW16 t=160
・⑤:XPS t=65
結果、Ua値が0.79になりました。

次に、施工に無理のない範囲で種類や厚みを変えてみます。
・③:厚みが変えやすい吹込みタイプのGW10Kに変更し、t=300とします。
・④:柱太さ同等のt=120にします。また、性能をHGW40にUP。
・⑤:大引きや根太の成を踏まえ、t=90にします。
結果、Ua値が0.71になりました。

次は、施工上は何も変わらない窓を変えてみます。
・⑥:「アルミ樹脂複合枠+ペアガラス(A12)Uw=3.49」に変更。
結果、Ua値が0.62になりました。

ここまでで分かることは、窓変更が一番効果的(0.09削減)である、ということです。これは見方を変えると、今まで一般的に使っていた窓の性能が悪すぎる、ということです。窓性能で言えば、日本より寒い地域が多いヨーロッパの国々はまだしも、同じアジアの韓国や中国より悪いのが現状です。

さて、施工に無理のない範囲で変更を繰り返し、Ua値が0.62まで来ました。ここまで来ると、ZEH基準0.60又はG1基準0.56までもう少しです。
では、効果の高い窓でもう少し良くしてみましょう。
・⑥:「樹脂枠+Low-Eペアガラス(A12)Uw=2.33」に南面のみ変更。
結果、Ua値が0.56になりました。

いよいよ最後の変更です。
ここまで来ると、同じような施工方法及びなるべく安価な商品で性能を良くしていくのも限界が来ます。
そこで、今回は壁を「充填断熱+付加断熱」に変更したいと思います。
・④:「充填 + 付加/HGW32 t=45」に変更。
・⑥:「樹脂枠+Low-Eペアガラス(A12)Uw=2.33」に北面も変更。
結果はUa値が0.46になり、G2基準をクリアする性能になりました。

付加断熱はハードルが高いように思いますが、t=45でしたらインゴー角(45×45)を壁に取り付ければ良いので、さほど難しいことではありません。また、付加断熱の材料としては「t=60」の商品もあります。施工上は「t=45」とさほど変わらず、値段も全体から見れば大した金額ではないので、採用に値するとは思います。更に、窓も全ての面を樹脂枠Low-Eとすれば、Ua値は0.43までは下がります。

※ここまでの計算で使用した数字は、材料として一般的なものを使っていますので、選択した商品によっては多少前後すると思います。

まとめです。
HEAT20では、下記のシミュレーションをしております。
1)冬期間の室内最低体感温度(4~7地域)
断熱等級4では概ね8℃を下回らないが、G2レベルでは概ね13℃を下回らない
2)全館連続暖房方式における暖房負荷削減率
断熱等級4レベルの部分間欠暖房方式と概ね同等のエネルギーで全館連続暖房が可能

部分間欠暖房によるヒートショックの問題は昨今話題となっておりますが、室温が低いことも健康被害があるために欧米では最低室温の規定などがあります。
断熱性能は、施工上は大きな変化を必要とせずにG2レベルまで上げることが可能です。
確かにイニシャルコストは掛かりますが、使用エネルギーの削減や健康被害が減ることによる医療費の削減なども考慮すれば、ランニングコストでペイ出来る可能性もあると思います。
そういったことを踏まえ、尚且つ、室内の温熱環境が改善するとなれば、少なくてもG2レベルの断熱性能を目指すことがその第一歩かと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column017 温熱性能と準耐火構造

住宅などを建築する敷地には、建築基準法上の様々なルールがあり、敷地に対して建築出来る広さや高さ、用途などが制限されていますが、基本的にはその地域に適した環境が維持されるように制限を掛けています。
その中で、「防火・準防火地域」というルールがあり、その地域内の建築物はその規模によって各種の火に強い構造の建築物(以下、耐火・準耐火建築物など)にする必要があります。東京で言えば、23区内全域で準防火地域以上のルールが敷かれており、例えば防火地域内で101㎡の2階建て木造住宅を建築する場合は耐火建築物にする必要があります。

そのような状況を踏まえ今回は、準防火地域内に建築される「木造3階建て住宅」の外壁の仕様を決めて行く流れを断熱材にフォーカスして書いていこうと思いますが、この計画は準耐火建築物にする必要があります。
簡単に準耐火建築物を説明すると「壁や柱、床、階段などの主要構造部をある時間内の火災によって損傷などを生じないようにする必要がある」というものです。今回で言えば「45分準耐火建築物(以下、45準耐)」にする必要がありますが、目的の1つは火災などが起きた時に建築物から逃げる時間を確保することです。
45準耐の外壁仕様には2つの種類がありまして1)告示によるものと2)認定工法によるものですが、ここでは多くのシチュエーションで採用されている2)認定工法にて話しを進めます。

認定工法とは、試験等を経て耐火性が認められた構成のことですが、その使い方に注意があります。それは、試験等で指定していた材料以外の材料をその構成の外側にも途中にも使ってはいけない、というものです。ある意味当然と言えばそうですが、その加えたい材料が(耐火性能を損なわないと予想される)不燃材料だとしても使うことが出来ません。
外壁の認定工法は、外部側から①外装材②外付(付加)断熱材③柱間充填断熱材④内装下地材で構成されていることが殆どです。②や③については認定によって有無がありますが、認定の構成に外付断熱材が指定されていない場合は充填断熱しか出来ないということです。要は、私としては温熱環境を考慮して断熱材の厚みや種類を決めたいですが、実際は外壁の認定内容によって決まってしまうということです。これは、防火地域などで高断熱住宅を設計する際に大きな壁となります。

外壁-45準耐で一番有名な認定が「QF045BE-9226」です。これは、①外装材:窯業系サイディング張③柱間:グラスウール(以下、GW)若しくはロックウール(以下、RW)を充填断熱④室内側:石膏ボード張と言う構成ですが、この認定では柱間にしか断熱材が入れられないので、一般的な木造在来で言えば120mm厚までしか施工出来ません。また、外装材も窯業系サイディング以外は使えません。従って、サイディング以外の仕上げ材を使いたい場合は、例えばチャネルオリジナルの防火木材外壁材ウイルウォールの認定「QF045BE-0107」など別の認定を使うことになりますが、充填断熱しか出来ないことに変わりはありません。
高断熱を考えれば「付加+充填断熱」は必須なのですが、今現在は旭化成建材のネオマフォームを使った認定「QF045BE-0868」やStoJapanのEPSを使った認定「QF045BE-1370」など数えるほどしかありません。本来で言えば、GWやRWは不燃材料ですので「付加+充填断熱」としても何ら問題がないように思いますが、認定としては(2018.5までは)存在しません。

これらの状況について、いろいろなメーカーに話しを聞いていますが、45準耐で高断熱にする物件が全国レベルで数%しかなく、認定の為に必要な膨大な試験費用がペイ出来ないので、二の足を踏んでいるようです。
昨今は、社会的に省エネ住宅の必要性を説いていますが、大都市東京で建てる高断熱住宅は建築方法を制限されている状況です。先にも書きましたが、少なくても不燃材料であるGWやRWぐらいは「付加+充填断熱」と出来る認定を用意すべきかと思いますので、各メーカーさんには頑張って頂きたいですね。

column004 断熱材の選び方

昨今、住宅の外皮性能が注目されていますが、その核を成すものの1つが断熱材です。断熱材とは、伝導・対流・放射による熱移動を防ぐ材料のことですが、その種類は様々です。大きくは繊維系と発砲プラスチック系に分かれますが、その中にもいくつかの種類が存在します。また、木造住宅の場合は施工方法として充填断熱か外張(付加)断熱、又はその両方があります。

まず、繊維系の代表格といえばグラスウール(以下、GW)です。安価で種類も豊富な断熱材で不燃性や吸音性にも優れているため、使用頻度も自ずと上がりシェアも高いと思います。GWは細かい繊維質中に静止空気があることで断熱性能を発揮しますが、その性能を担保するために防湿気密シートの施工が必要です。GWはこの防湿気密シートの施工がキモと言えるのですが、どのようにその性能が担保されるのかということが認識されていないためか、シート施工がずさんな現場を今でも見かけます。GWは費用対効果の良い材料ですが、性能を担保するためには高い施工精度が求められる材料という認識が必要かと思います。
GWと同じ鉱物繊維系にロックウール(以下、RW)という断熱材があります。ほとんどGWと同じような特徴ですが、違うのが耐水性に優れているという点です。したがって、何らかの理由で壁内が結露した場合も、断熱性能が維持されやすい材料です。
繊維系で施工精度を求めたいならセルローズファイバー(以下、CF)という断熱材があります。専用業者が吹き込み施工をするので精度が出ます。また、CFには調湿機能があるところも魅力の1つですが、GWと比べ多少高価な材料です。
その他、繊維系には羊毛断熱材やウッドファイバーのように天然素材を使った断熱材もありますが、高価な割に熱伝導率が優れているわけではないので、調湿性能や環境性能が良いなど付加価値に重きをおく場合に採用される傾向があると思います。

鉱物繊維系は、断熱・気密性能を確保するためにそれなりの技術が要りますが、ある意味手軽に高気密・高断熱住宅をやりたい場合は、発砲プラスチック系の吹付硬質ウレタンフォーム(以下、PUF)で断熱する方法があります。GWやCFに比べ高い断熱性能を有しつつ、現場発泡による施工のため気密性を確保しやすい特徴があります。
他に発砲プラスチック系と言えば、押出法ポリスチレンフォーム(以下、XPS)、ピーズ法ポリスチレンフォーム(以下、EPS)、フェノールフォーム(以下、PF)などがあります。基本的には、独立気泡内の空気又は空気と発泡剤(ガス)を使って断熱していますので、同じような仕組みの断熱材と言えます。しかしながらそれぞれに特徴があり、例えばXPSとPFは「発泡剤が抜けると性能が落ちる」という懸念がありますが、EPSは空気のみですのでそういった懸念はありません。その他にも、熱伝導率や透湿率・材料強度・吸水性などに違いがあり、熱伝導率にこだわるならPFがよいでしょうが、耐圧スラブ下などに敷く場合は、PFよりは材料強度があり吸水量がすくないXPSが良かったりします。参考までに、一般的な特性表を添付します。

 

 

ここまでに書いた内容でも分かるように、これが良い、という材料はありません。全ての断熱材にそれぞれ特徴があり得手不得手があります。要するに、使う側がどういう建物にしたいのか?ということを考え、目指すべき断熱性能や使用環境などを考慮し、それぞれの材料の特性を踏まえた上で選択する必要がある、ということだと思います。
私もお施主様のご要望をお聞きする前からどんな断熱材を使うかは決めていません。打合せを重ねる上で最適な材料を選択していくことになりますが、基本設計中には冷暖房負荷を検討し性能を決めていきますので、建物のボリュームを考える段階では何となく予想はしている感じです。
このあたりの話しはまた別の機会に書かせて頂ければと思います。

あなたにとっての良い断熱材を見つけて頂きたいと思います。