column030 パッシブ建築とは何か

先日、とあるミーティングで「パッシブ建築って、結局何なの?」という議論になりました。
その場では、「通風と躯体強化で言えば、どっちが正解?」的な話しも上がっていましたが、それも余り的を射ていない考え方だな、と思いながら聞いていました。

本来「パッシブ(デザイン)」とは、特別な動力機器を用いず、自然の要素である太陽光や風・雨水などを建築的に利用して屋内の環境調整を行う設計手法のことを指しています。従って、パッシブ建築とは「自然の要素で屋内環境と整える建築」ということになりますが、今の時代を考えれば電気のない生活は成り立たないわけで、何の動力も使わないことは現実的ではありません。
それらを踏まえ、パッシブをもう少し噛み砕いて考えると、要は「なるべく省エネに屋内の快適性を得る」ことではないでしょうか。

ここで大事なことは、省エネで快適を得ることです。「省エネと快適の両立」と言い換えても良いですが、両方が揃って初めて「パッシブ」だということです。
例えば、先にも上がった通風ですが、自然の要素そのものですので省エネには違いないですが、風が吹かなければ快適が得られないので、風任せな「欲しい時にあるとは限らない」快適ということです。そう考えると、ちゃんと両立しているのか?はいささか疑問です。
では、躯体強化はどうでしょうか。躯体強化とは、いわゆる断熱・気密のことですが、効果としては屋外環境からの影響をなるべく減らすことに寄与します。従って、これは(直接的に)省エネか?と問われれば違うかもしれませんが、快適を得るために何か(化石でも自然でも)エネルギーを投入する時には少ないエネルギーで済むので、そういった観点からは省エネに寄与しています。分かり易く言えば、躯体強化とは屋内環境を整えるためのベースを作ることにつながります。

さて「通風と躯体強化で言えば、どっちが正解?」の答えですが、どちらも正解で不正解だと私は思います。要は、パッシブ建築にするための優先順位があるだけで、通風も躯体強化も必要でどちらかを選ぶものでもありません。ちなみに、優先順位で言えば、まずは躯体強化をしてベースを作ることが重要です。通風は、時と場所を選ぶ要素ですので、付加価値程度に考えておくと良いかもしれません。

先日のセミナーで近畿大の岩前先生が仰っておりましたが、裸の人間は自然の中で過ごした場合、30年ほどしか生きられないそうです。しかし、日本人の平均寿命は80年以上あるわけで、それを実現していることの1つが快適な屋内環境にあります。昔からパッシブデザインを謳って建築設計をしている方は「自然との共存」を良く言いますが、先の話しからも分かるように実は人間にとって自然は脅威である側面もあり、共存を目指すことが人の暮らしにとって良いこととも言えません。

自然の要素だけで今の時代に添った快適が得られるなら良いですが、それを目指すことはある意味で時代錯誤になる可能性もあり、余り特別な動力を使わないことに執着し過ぎると、本来目指していたことが見えなくなることもあるかと思います。

太陽や風といった自然の要素と上手に向き合いながら、省エネと快適が両立している今の時代に添ったパッシブ建築を目指すべきかと思いますが、如何でしょうか。

column029 湿気と結露を考える

住宅の屋内環境を考える上で、湿度管理はとても重要な議題です。
湿度には「相対湿度」と「絶対湿度」がありますが、一般的に耳にする湿度とは相対湿度のことを指しています。どちらの湿度も空気中の水蒸気の量を示すものですが、この水蒸気のことや建築材料中の水蒸気・水分を総称して「湿気」といいます。
また、空気中の水蒸気がいっぱいになった状態を相対湿度100%と言いますが、空気は温度によって保有出来る水蒸気の量が決まっており、温度が高いほど保有量が多いです。従って、温度が下がると余分な水蒸気が凝結し、大気中では「霧」となり、地表では「露」となり、ガラスや壁面では「結露」となるような現象が起きます。

例えば、夏場にアイスコーヒーなどのグラスが結露を起こすのは、湿った暖かい空気がグラスの表面で冷やされ余分な水蒸気が凝結した結果です。冬場でも石油ファンヒーターなどで暖を採った場合は、水蒸気(と二酸化炭素)が発生するため、相対湿度が高くなります。その高湿な空気が冷えた窓ガラスにふれると、同じように結露が起こります。尚、この結露を起こす温度を元の空気の「露点温度」と言います。

ちなみに、結露を起こしにくくする方法として「高気密高断熱住宅にする」という方法を聞くことがあると思いますが、これは窓ガラスの性能が良くなったので温度が下がり難くなるためです。しかし、実際は条件さえ整えばどんな高性能な住宅でも結露は起こります。

ここまでのように、グラスや窓ガラスで結露している分には目に見えているので、実はさほど問題ではありません。問題なのは、壁の中で結露を起こした時です。窓ガラスなどで起こる結露を「表面結露」、壁の間で起こる結露を「内部結露」と言いますが、この内部結露が起こると目視出来ないために様々な問題へつながります。例えば、凝結した水のせいでグラスウールが劣化する、柱や土台などの木材が腐朽するなど、躯体性能に影響を及ぼします。また、結露まではいかないにしろ相対湿度70%以上の高湿度状態が続くと、カビやダニの発生を助長し、それが喘息などのアレルギー疾患につながります。

注意点として、表面結露はさほど問題でないと書きましたが、結露状態が続けば窓の周辺部材が劣化したりするので、きちんと窓を拭いたり、なるべく結露が起きないよう対策は必要です。また、窓ガラスが表面結露していた既存住宅を内窓などで温熱改修した時は、窓ガラスでの結露はなくなったかもしれませんが、別の場所、要は内部結露へ状況が変化していることがありますので、総合的な判断が必要です。

では、湿気が全くなければ結露もしないということも言えますが、低湿度状態は例えばウィルスにとっては好条件であり、今度は我々人間にとって快適な環境ではなくなります。要は、低湿度でもなく高湿度でもない、大よそ相対湿度40~60%ぐらいが健康な居住環境を維持出来る湿度ということになります。

始めにも書きましたが、この湿度を維持することが快適な屋内環境にとって非常に重要ですが、実際目指してみると非常に難しいことが分かります。また、少なくても湿度を気にする前に、しっかりとした断熱性能により屋内温度管理が出来ていることが必要であり、快適な住環境を作るには確かな知識と技術が必要です。

結局は、断熱・気密・換気をしっかりと行うことが快適な住環境への近道ですので、1つずつ丁寧に設計することが肝要です。

column028 換気と通風を考える

住宅建築を考える時に「換気」と「通風」を混同している設計者を見かけます。更に言えば「漏気」も加わって、3つの違いをきちんと理解して設計出来ていないことが多いと思います。

ここで、それぞれについて簡単に説明したいと思います。
換気について、悪化した室内空気を清浄な外気と入れ替えることを指します。方法としては、自然換気と機械換気に大別されます。
通風について、夏などに気流によって在室者の体感温度を下げ、室温上昇を抑制する自然換気を指します。一般的には0.5~1.0m/sぐらいの気流速度が必要です。
漏気について、いわゆる隙間風です。昔の住宅(今でも多くの住宅がそうですが)は気密性が悪いため、特に冬場などは暖められた空気が上昇するのに合わせ、床の隙間から冷たい外気が入って来るため、非常に不快な現象となります。ちなみに、漏気も自然換気の1つと言えます。

ここまでで分かる通り、通風も漏気もある意味換気の役割を果たしているので、混同しても仕方がない所はありますが、換気については在室者のために清浄な空気状態を作ることが目的であり、目標となる値があります。それを「必要換気量」と言います。しかし、通風の目的は温熱的に快適にすることで、漏気に関しては勝手に出入りするものであり、人が制御することすら出来ません。

換気には、キッチンやトイレなど汚れた空気が発生しやすい箇所のみを換気する「局所換気」と家全体を換気する「全般換気」があります。現在、全般換気と言えば、シックハウス法に示されている通り化学物質(VOC)を排出することを目的として行われています。本来は、CO₂や臭い、細菌、熱、水蒸気なども含んだ汚染空気を希釈することも含まれておりますが、この空気汚染について「家の気密性を上げるから(隙間から空気の入れ替えが出来ず)空気が汚れる」などと説明する設計者がいます。先ほども書いた通り、勝手に出入りしてしまう漏気に必要換気量が決まっている換気の代わりをすることは無理があると思うのですが、その無理をどのように解釈しているのか?いつも疑問です。

それと、多くの設計者が思っていることに、省エネルギーのために「夏はなるべく通風で涼を取った方が良い」という意見がありますが、本当にそうでしょうか。
そもそも通風には「体感温度を下げ、室温上昇を抑制する」ことが必要です。従って、ただ窓を開けただけの状態を通風とは言わず、それは換気です。また、空気に一定以上の動きが出ることで通風効果が得られますが、外気が高温・高湿だった場合も必要な効果を期待できるでしょうか。確かに、通風はエネルギーを使っていませんから省エネに間違いはありませんが、屋内環境の快適性がきちんと担保出来ないとすれば、果たしてそれでいいのか?は良く考える必要があると思います。

本来の設計とは、換気・通風・漏気に限らず様々な事象を複合的に考える必要がありますが、どれか1つだけにフォーカスして良し悪しを判断しているケースが非常に多いように感じます。また、複合的に考えないことは、ある事象の不具合に対して根本的な解決に至らないことにつながると思います。

1つ1つの事象に対しての役割をきちんと理解し、その住宅建築に必要な性能とは何なのか?を複合的に考えることが快適な住環境につながると思いますが、如何でしょうか。

column026 高性能住宅のコスト

先月行われた「社会資本整備審議会 建築分科会 第17回建築環境部会」にて、2020年に予定していた300㎡以下の小規模住宅に対する省エネ基準義務化が延期(中止?)されることが報告されました。
その理由はいくつかあるのですが、1つが「省エネ基準適合への追加コストを光熱費の低減により回収すると仮定した場合の期間が35年と比較的長期間である」というものです。

それは、適合義務化は効率性の低い投資を強いる面があり、慎重に考える必要があるとのことらしいですが、その根拠の試算例を見るとびっくりします。例えば、外壁の断熱材は、従来が「グラスウール(以下、GW)10K・35mm」で適合が「GW16K・85mm」となっていますが、そもそもGW10K・35mmはもう市場にありません。開口部についても、従来が「アルミサッシ/シングルガラス」となっており、これも新築住宅で使っている会社はほぼないと思います。
これは、コスト増をアピールしたいがために無理やり出した数字としか言いようがありませんが、そもそもの話として、元々の住宅においての断熱性能の低さが無視されていることが、話しをややこしくしている原因ではないでしょうか。

例えば、、、ギアが2速までしかない自動車が一般的な世の中で、5速まである自動車の方が快適でエネルギー効率がよい、という議論があったとします。それは「5速まであった方がいいのは分かるけど、それって本当に快適で効率がいいの?」と疑問に思う世の中です。
きっとほとんどの方が「えっ、何言ってんの?」と思うはず。それは「5速がいらない」という驚きではなく「有って当たり前じゃん」という驚きです。これは、経験上知りうることであり、そこに疑う余地はありません。

住宅業界の高性能住宅(ここでは、HEAT20・G2レベルとします)化は、この例え話と同じだと思っています。要は、今までの家は本来必要な家の性能が担保されていない住宅なので、きちんと断熱された快適で健康な住宅を造りませんか、という話しです。言い方を変えれば、2速から5速にすることによる費用耐効果を考えることがそもそもナンセンスで、そもそも5速は必要な性能ではないですか?ということです。

自動車業界では、2速から5速にすることによる費用対効果を検証した結果今があると思いますが、住宅建築業界では性能を数字で評価するということを怠って来たため、今はその価値観にありません。これは、モノづくりの過程が違うため比較すべきことではないかもしれませんが、「評価することを怠ってきた」という事実を我々業界関係者は真摯に受け止める必要があると思います。

今現在、住宅の温熱性能を評価出来るソフトがたくさんあります。更に、性能だけでなくコストにおいても「どのぐらいの性能の住宅を何年使うと費用対効果が良い」などがシミュレーション出来ますが、35年以上の長期使用を望むのであれば、高性能住宅の費用対効果が良いことは検証結果として出ています。

この国では未だルール化も出来ないことですが、高性能住宅の重要性はすでに多くの方が認識していると思います。確かに、従来の住宅に比べイニシャルコスト(建築時に掛かる費用)は上がりますし、住宅は高額であるがゆえに費用対効果に目が行きがちですが、本来は必要な性能が備わっていることが大前提であるはずです。
私は、新しい価値観で家づくりをする時代が来たと感じていますが、皆さんは如何でしょうか。

column025 第4回日本エコハウス大賞

建築業界には、いろいろな団体で主催するたくさんの賞(アワード)があります。
例えば、日本建築家協会(JIA)では「日本建築大賞」や「環境建築賞」、東京建築士会では「住宅建築賞」や「住宅課題賞」などを開催しています。
その意味合いにおいても、建築士が世の中に認知されるために挑戦したり、より多くの方々に良い建築を知ってもらうために団体が開催したりと様々です。

日本エコハウス大賞もそんなアワードの1つで、建築知識ビルダーズという住宅専門誌が主催しています。
この賞の特徴は、意匠性が重要視される賞が多い中で、意匠と(温熱)性能の両面において優れた住宅を評価しているところです。国の基準を超えたレベルで温熱的に優れた住宅建築を設計または施工する全国の実務者が応募する賞で、今現在、建物性能をきちんと評価してくれる唯一の賞だと思います。
この賞のように、性能という部分にフォーカスを当てている建築賞が殆んどないことを考えると、今の時代背景を反映した大変貴重な賞といっても過言ではありません。

その第4回日本エコハウス大賞ですが、先月ビッグサイトで大賞の公開審査と表彰式が行われました。
弊社の設計監理した「木と樹の家@小日向」は大賞にノミネートされ、公開審査の結果、優秀賞を頂くことが出来ました。また、協賛賞である「オスモ&エーデル賞」も頂き、ダブル受賞という嬉しい結果となりました。

この「木と樹の家@小日向」は、東京都文京区という都市部の住宅街に位置する計画でしたが、敷地周辺を隣地建物に囲まれており、温熱環境を検討する上で大変厳しい条件でした。
その条件下でも快適に暮らしたいとのお施主様のご要望に応えるべく「都市部らしい開放感を目指す、躯体強化型エコハウス」をコンセプトに設計しました。
分かり易い「開放感」で言えば窓を大きく取ることですが、隣地建物に囲まれた条件では窓を大きくとることが快適に繋がるとも限りません。
従って本計画では、開閉を明確にすることで開放感にメリハリを出し、快適な環境を作ることを目指した結果、1階と2階のプライベートエリアは「都会の喧騒から逃れて静かに暮らす」イメージとして、窓は必要最低限としました。また、その数少ない窓からは緑が見えるように工夫をすることで、外部とのつながりも意識しました。
反対に、屋上と地下のドライエリアへの出入口は大きな窓を設置して開放感が出るように演出。地下アトリエにおいては、地下とは思えない開放した空間を得ることとなりました。

高断熱高気密住宅に代表されるように躯体性能を上げることは、住宅建築にとって重要な要素の1つですが、それだけでは良いものにはなりません。本計画でも、様々な要素と1つ1つ丁寧に複合的に向き合いながら、答えを導き出しました。そして、その結果が受賞につながったとすれば、大変意味のあることだと改めて思います。

先にも書きましたが、今ある多くの建築賞は、意匠性が重要視されていることが多いです。それは「環境」と名のつく賞でもその傾向は払拭されません。
確かに意匠性も建築において大事な要素ではありますが、本当に住まい手のことを考えて設計しているのか疑わしい建築が多いのも事実です。
日本エコハウス大賞では、意匠と性能が評価されます。
これはとても重要なことで、この賞を通じて一般の方々が「あるべき住宅建築の姿とは?」を考える良いきっかけになって欲しいと思います。

column024 エコハウスとは何か

温室効果ガスの影響により地球温暖化が叫ばれてずいぶん経ちますが、近年は日本においても台風などの災害による影響が全国でみられるように異常気象の話しもよく耳にします。

そんな時代背景もあり住宅業界でも、省エネルギー住宅や低炭素住宅、ZEHなど(以下、省エネ住宅と呼ぶ)、地球温暖化に配慮した住宅の造り方を推奨しています。また、これらの省エネ住宅は国の住宅政策の一環でもあるので、何らかの基準が存在します。
エコハウスも省エネ住宅の1つとして使われることがある呼称だと思いますが、その使われ方はまちまちです。ただ自然素材を使った住宅をエコハウスと呼ぶ会社もあれば、パッシブデザインの住宅をエコハウスと呼ぶこともあります。
何故そういったことが起きるかというと、明確な基準がないからです。しかし、字面として分かり易く親しみやすいため、いろいろな場面で使われることになります。
従って、エンドユーザーが家づくりのパートナーを探す場面において、エコハウスという言葉がそれなりの頻度で出て来るため、「エコハウス=良い住宅」のように理解してしまっても仕方がないことでもあります。
そこで、エコハウスの基準的なものがないか少し調べてみると、環境省で「エコハウスモデル事業」という政策があり、そこではいくつか基準というか方針みたいなものを示しています。
1)環境基本性能の確保・・・断熱や気密、日射導入、通風などのパッシブデザインを十分理解し実践すること。また、自然素材の利用。
2)自然・再生可能エネルギー活用・・・地域の特徴をよく読み取り、太陽光、太陽熱、風、地中熱、水、バイオマス、温度差を上手に生かす技術や工夫の活用。
3)エコライフスタイルと住まい方・・・集まって住むための新しい仕組みづくりや、農地付き住宅のような新しいライフスタイルの提案。
4)地域らしさ・・・周辺環境、材料、工法、デザインなど、地域の特色を生かした住宅であること。

多少端折りましたが、何となく言わんとしていることは理解して頂けるでしょうか。
確かに、日本で言われる「エコ」っぽい感じは伝わってきますが、基準としては曖昧と言わざるを得ません。

省エネ住宅を語る上で重要なことは、数字で性能を示すことです。
国の政策では、Ua値(熱の伝わり易さ)を使うことが多いですが、それではパッシブデザインは評価されていません。また、一次エネルギー消費量で評価する場合もありますが、それでは範囲が広すぎて家の快適度合いは伝わりにくいです。
やはり、暖冷房負荷での評価が、Ua値の先の評価方法としては妥当だと思います。

住宅に比べれば価格が圧倒的に安い自動車でも、ガソリン1Lでどのぐらい走行出来るか?が数字で分かります。住宅でも、どのぐらいのエネルギーを投入したら家を暖かく涼しく維持出来るか?が分かる方が良いと思います。
エンドユーザーの方々は、エコハウスが良いのでなく「何がどのぐらいエコなのか?」をしっかり確認させてもらえるパートナーを選ぶようにすることが、本当のエコハウスに出会える一歩です。

column023 パッシブハウスの間取り

家の大きさや広さを表す言葉として、○LDKや床面積□坪などがありますが、それだけではどんな家なのかは分かりません。
そのどんな家なのか確認するのに良い方法が、間取りを見ることです。
間取りとは、どんな空間構成(部屋の集まり)で出来ているかを、平面的に確認出来るものです。プランニングやゾーニングなどと言ったりもします。

間取りを検討する上で大事なことは、各空間がどのようにつながっているのか?です。その空間のつながり方によっては狭く暗く感じたり、その逆に広く明るく感じたりします。
そして、その中でも大事なことは、玄関と階段の位置だと、私は考えています。
両方とも空間を動く距離とデザイン性に影響を及ぼします。また、階段は上下階をつなぐもので、当たり前ですが1階と2階で同じ位置にある必要があるので、上下階の間取りを考慮して位置を決めなくてはいけません。また階段の見方を変えると、空間を緩やかに隔てたり遮ったり、デザインのアクセントなどにもなりますので、用途以外に意味を持たせるのか否かも考えたりします。

さて、パッシブハウスに代表されるような高気密高断熱な高性能住宅は、家中どこにいても温度を一定に保つことが出来るので、各部屋の室温を保つために空間を閉じる必要がありません。これは、間取りを検討する上で大事な要素で、パッシブハウスにすると空間を緩やかにつなげたり閉じたりするような間取りをやり易くして、家族の存在を感じやすい家づくりの可能性が広がります。

壁などの隔たりがなく空間をつなげるということは、広く明るく感じさせることにつながります。それは、狭小敷地などで家の広さを確保出来ないとしても、間取りの工夫で広くも明るくも感じれることを意味し、それを可能にするのがパッシブハウスではないかと考えます。

パッシブハウスにする為には、少なからず今現在一般的に建てられている家よりイニシャルコストが掛かります。なので、費用が高額なので建てられないとの話しもよく聞きます。
しかし、ランニングコストも考えて検証すれば、トータルコストでは高額にはなりません。
また、家を狭くしても間取りの工夫で同じような広がりを感じることが出来れば、家を小さくすることで費用を捻出し、パッシブハウスにすることも可能です。

単純な広さによる満足度もありますが、工夫によって得た満足度にこそ心を惹かることがある、と私は思っています。
パッシブハウスは、健康で快適に暮らせます。
間取りを工夫することによって、その恩恵を感じてみませんか。

column022 住み替えられる街づくり

住み替えられる街づくり、これは私が10年ほど前に思いついたことですが、もう少し詳しく書くと「様々な世代の人々が、その時の生活スタイルに合わせて家を住み替えられる街」のことです。

日本人の多くが「住宅購入は、一生に一度の買い物」と思っています。そのような考えに至る理由は簡単で、家の価値が下がるからです。例えば、住宅購入の10年後に生活環境が変わったから新居が欲しい、となっても価値の下がった今の住まいを元手に新しい家を買うことは出来ません。従って、その家に一生住み続けることを前提に家を買います。
従って、多くの方は一生に一度の買い物だと思い、どうなるのか分からない20年後30年後を占い師の如く予想して今払える限界の金額を払い、家を造ります。
ここで誤解がないように書いておきますが、家の耐久性や耐震性をきちんと考え、長く(子供や孫の世代まで)住まわれる家を造る様な場合は価値観が変わって来るので、いわゆる「一生に一度」とは違う意識が強くなって来ると思っています。
私の言う価値が下がる家は「古くなる=悪くなる」そんな家のことを言っています。

ここで少し視点を変えますが、今の日本の家づくりは愛着が持ちにくいものになっていると思います。それは何故かと言うと、内外装に使うサイディングやビニールクロスは、安くてそれっぽく見える材料として重宝されていますが、結局それらは石でもタイルでもなければ、漆喰や木材でもありません。造った時がその材料のピーク(一番いい状態)で、要は「古くなる=悪くなる」でしかありません。
愛着とは「古くなるごとに味わいが出てこそ湧く」と私は思っています。それには「古くなる=味わいが出る」ような、いわゆる自然素材の材料を使わないとそうはなりません。そういった材料を使った家は、メンテナンスを繰り返し手塩にかけると味わいが出て、それが愛着となって表れてくると思います。

ハウスメーカー(以下、HM)に代表するような建売住宅は、安価でメンテナンス性に優れたそれっぽく見える材料で造っています。メンテナンス性に優れた材料は、HM側から見ると「クレームが少ない材料」とも言えます。HMの設計者も自然素材の良さは知っていますが、例えば無垢材などは季節によって変形したりするので、それがクレームにつながるので使いません。見方を変えれば、きちんと説明すれば良い気もしますが、そもそも建売住宅購入者は自然素材の良さを求めていないので、説明してもクレームになってしまう背景はあると思います。

こうして出来た建売住宅は、基本的にターゲット世代を決めて計画をするので、大体同じ世代の方々が購入します。また、間取りや広さなども同じようなものが多いです。これは、近隣関係として価値観が合い易いと思う反面、多様性に欠けているとも言えます。建売住宅は、一次所得者が購入することが多いので始めは皆若くて良いですが、時と共に年齢を重ね、いつしか「古くなる=悪くなる」街並みと共に廃れて行くことにもつながります。

これって、何か悲しくないでしょうか?

そこで私が考えたのが「住み替えられる街」です。
・その街は、耐久性や耐震性、温熱性をきちんと考え、長く住まわれる住宅で構成されています。
・その街は、長く愛されるような自然素材で造られた住宅で構成されています。
・その街は、小さい住宅から大きい住宅まで、いろいろな世代の方が住めるような家で構成されています。

そんな街で、私はこんな物語を想像しています。
 夫婦とまだ小さい樹くんの3人家族の新井さんは、その街で2LDKの小さいお家を買いました。子供はもう一人ぐらいは欲しいですが、今のところその予定はないですし、子供が二人になったとしても10年ぐらいは住めそうなので、当面は問題がありません。
 その後、子宝には恵まれなかったのでそのまま住み続けられそうでしたが、5年後のある日、夫の両親と同居せざるを得ないことになりました。さすがに、その小さいお家では手狭になるので、少し大きなお家を探すことにしました。その街で探したところ、3LDKで1階に和室のある程よい広さのお家が見つかりました。きちんと手入れをしていた小さいお家は適正に評価され、程よい広さのお家を買うのに十分な元手となりました。新井さんは小さいお家を売却し、程よい広さのお家を購入しました。
 更に10年が経ったある日、小さい子供だった樹くんも大きくなり、就職して会社の寮に住むことになったので、家を出て行くことになりました。
 また更に10年後、両親が共に他界し程よい広さのお家に夫婦二人になりました。樹くんも会社の寮は出ましたが、今はアパートで独り暮らしをしています。いろいろ検討した結果、夫婦は自分たちが元気なうちに小さいお家に引っ越すことにしました。始めに暮らした2LDKのお家が一番良かったですが、現在は別の家族が暮らしていたので、別の2LDKのお家を見つけ購入することにしました。もちろん、きちんと手入れをしていた程よい広さのお家を元手に買うことが出来ました。
 その5年後、樹くんもいつしか結婚し、子供が一人の家族を持っていました。そんな樹くんは今の自分たちに見合った家を買おうとしていますが、1つの思いがありました。
「会社の寮や独り暮らしのアパートは、住み心地が悪かった。家を買う時は、住み心地が良い家にしたい。」
そうです、住み心地が良い家で暮らした経験のある樹くんは、またそういった家で暮らしたと思っていました。樹くんは、その街とは別の「住み替えられる街」に小さいお家を買いました。

これは1つの例えで、「住み替える」ことと「愛着」がそぐわない気もします。確かに、ご自身の身内で代々住み継いで行ければ、それが一番良いことだと思いますが、今の時代背景を考えるとそういう訳にもいかない気がします。だとすれば、他人だとしても愛着を持って住まわれた家を住み継いで行くことも大事だと思います。
その街の住民が皆それぞれの家に愛着を持ち、住み替え住み継いで行く。
いずれ同じ家に住む時が来れば、それはそれで懐かしさという愛着が湧くことであり、いつの日か自分たちが暮らした家に孫たちが住むことになれば、そんなうれしいことはないでしょう。

この街づくりで私が重要視していることは、多様性と経験です。
この多様性を実現するには、未来を見据える想像力を持った建築士の知識とそれを形にする職人の技術が必要です。それにより家の価値が上がり、一生に一度的な意識とは違うものの見方で家づくりが出来ると思っています。また、居心地の良い住まいの経験は、それ以下の家に住めなくなるという価値観を生み出します。

最後に、これらの感性を持つには「家とは自分たちのモノではなく、地域社会のモノだ!」との観点が大事でこれからの世の中に必要なことだと思いますが、皆さんの思いは如何でしょうか。

column020 空間と建築費を考える

「必要なものだけを単純化して、美しいところを備えていれば、居心地よい家になる」
これは、志賀直哉が「住宅に就いて」書いた随筆の一文です。

何を持って居心地が良いかは人それぞれかと思いますが、この一文から感じられる居心地の良さが私は好きです。
私は設計する上でお客様のご要望を伺いながら、それらを如何にシンプルにまとめられるかを考えます。中にはなかなか答えにたどり着けず、考えを2つも3つも只々重ねることがありますが、そういった時はだいたいうまく行っていない証拠です。なので、あるところまで考えるともっとシンプルな考えがあるはずだと初心に帰ります。そして、頭を整理し本当に必要なモノ・コトは何なのかを考えます。
住宅設計とはこれの連続であり、そこへたどり着くには技術や知識、経験が必要だと思っています。

住宅に必要な要素は、耐久性や耐震性、温熱性能など多岐に渡ります。また、それらにお客様のご要望が加わり、更に考える要素を複雑にしていきます。しかし、それら必要な要素やご要望をただ単純に重ねていくだけでは、建築費がどんどん膨らみます。如何に同じ性能の建物を、よりシンプルで合理的な方法で、美的な建築をデザインするのか、が重要だと思いますし、それらを考えるのが我々建築士の仕事です。
家を建てる・造る状況において夢や希望が無い人はいないと思いますが、それらが合理的に考えられている方はほとんどいません。我々はプロとして様々な提案やアイディアを出すわけですが、それらがお客様の意にそぐわないと思わせることもあります。そういった場合、お客様側も夢や希望に縛られず、フラットに物事を捉えられる状況にないとより良い選択が難しくなります。

その選択を難しくする要素の1つに「今の生活スタイルをそのまま維持したい」という要望があります。確かにそれが重要な時もありますが、それは今までの家に合わせて培ってきたスタイルであって、継続すべきスタイルとは限りません。家を建てる・造るということは、いろいろな事をリセットして新たなスタイルを築いていけるチャンスでもあります。
次に多いのは、広さに対するこだわりです。狭くて良いとの希望を持たれる方は余りおらず「広くしたいが、安く建てたい」が多くの方が思われる事だと思います。希望としては十分理解しますが、それは多くの建築費が掛かることにもつながり、広さを維持したまま安くすることは、性能や品質が下がることを意味します。ここで、性能や品質が下がることを伝えてくれる設計事務所なり工務店は良心的かと思いますが、金額で勝負しているような工務店はそのことを言ってくれるとは限りません。

念の為書きますが、真摯に住宅建築に取り組んでいる多くの会社は、性能や品質が下がらずに安くする努力(VE/バリューエンジニアリング)を行っていますが、それには限界があるということはいつも心のどこかに留めておいて頂きたいと思います。

建築費で言うと、その目安として坪単価というものがあります。おおよその広さに対する総額を知りたい時に確認することが多いですが、坪単価は性能や品質によって大きく変わります。なので、本来であれば「どのぐらいの性能で、品質はどのグレードを求めているのか」をきちんと伝えないと、その単価はあまり意味を成しません。
また、広さについても「何故その広さが必要なのか?」を考える必要があります。確かに、最低限として必要な広さはありますし、空間の広さが豊かさをもたらすこともあると思います。しかし、住宅に必要な広さとは空間の寄せ集めではなく、奥行感や陰影などによって豊かに表現された空間ではないでしょうか。

住宅建築には、多くの費用が掛かります。更に言えば、やみくもに造るだけではいくら予算があっても足りません。従って、「シンプルで合理的=必要なものだけを単純化」で「美的な建築をデザインする=美しいところを備える」ことは、建築費を削減しながらも居心地の良い家へとつながることかと思いますが、皆さんはどのように感じたでしょうか。

column015 設計者の区分を考える

先日のこと、一般の方とお話しをしている際に「えっ、意匠設計者って何ですか?」と質問を受けました。私としては、特別なことではなくその言葉を使ったのですが、まさかそれについて質問をされるとは思っていませんでした。いつも一般の方とお話しをする時は、分かりにくい専門用語を使わないように気をつけていましたが、まだまだ配慮が足りませんでした。
そんな出来事があったこともあり、今日は設計者のあれこれについて少し書かせて頂きます。

それでは、そもそも設計者とは何なのかを、建築基準法(以下、建基法)の観点を交えながら簡単にご説明致します。
まずは、建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書を「設計図書」と言いますが、それらを作成することが「設計」です。また、その設計や工事監理(工事が設計図書の通り実施されているかいないかを確認すること)その他の業務を行う者を「建築士」と言いまして、建基法の資格者になります。建築士の種別として「一級、二級、木造」の三種類がありますが、簡単に言うと従事出来る業務の規模が違います。
要は、建築士が行う業務の1つである設計図書を作成する者を「設計者」と呼び、工事監理についても同じでそれらを行う者を「工事監理者」と呼びます。
従いまして、設計者とは建築士の中でより業務内容にフォーカスした呼び名だと思って頂ければと思います。

設計者とは、設計する者のことを言いますが、設計にはいくつか種類がありまして、それが「意匠設計」と「構造設計」と「設備設計」です。

構造設計とは、伏図・構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書を設計することです。住宅などの小規模建築物でも、建基法にある技術的基準に適合していることを構造計算によって確かめなければいけませんが、それらの設計を行う者が構造設計者となります。
ここで問題になるのが、先のコラム(column014)でも書きましたが四号建築物の扱いです。四号建築物は構造計算に依らず建築することが出来るので、その建物には構造設計者が存在しないことになりますので、誰かが代わりをすることになります。

設備設計とは、主に建築設備に関する設計図書を設計することです。建築設備とは、電気・ガス・給排水などのインフラ系設備に始まり、換気空調や消火、エレベータなどの設備を言いますが、それらの平面図や構造詳細図などの設計を行う者が設備設計者となります。尚、設備設計に関しては、構造設計とは違い「延床面積が2,000㎡を超える建築物の建築設備に係る設計を行う場合においては、建築設備士(建築設備の専門家)の意見を聞くよう努める」となっておりますので、例えば住宅に関しては建築設備士が係ることは一般的にはありません。

いよいよ最後に意匠設計についてです。
始めの「えっ、意匠設計者って何ですか?」の答えは、「構造設計図書と設備設計図書以外の設計図書を設計する者」のことになります。建築設計においてキーパーソンとなるのが意匠設計者で、建築物のトータルデザインを行います。
意匠設計者の役割は多岐にわたり、お客様との打合せを重ね希望・要望などをくみ取り、実用的にあるいは美的にその建物をデザインすることに始まり、構造設計・設備設計のとりまとめ、建築確認などの申請業務、更には工事監理に至るまで、総合的に取りまとめて行く事を担います。
一戸建ての住宅などのお施主様がお会いになる設計者は、ほぼ意匠設計者です。それが呼称として「建築士」や「建築家」になったりするだけです。

意匠設計者は、お施主様のご希望などの情報を基に、設計する建築物の方向性を考え決定します。従いまして、その建築物の出来栄えは、構造設計者や設備設計者などの技術的な裏付けが有ってのことは当然ですが、意匠設計者の知識や経験あるいはマネージメント力で決まってしまうと言っても過言ではありませんので、とても重要なポジションです。