column010 仕上素材を考える-基本編

外壁や屋根などの外部から内壁・床や天井と言った内部まで面を構成する部分には、多くの場合に仕上材が存在します。外装材であれば、窯業系サイディングから石やタイル・塗装・木板など様々なものが存在しますし、内装材についても、ビニールや紙のクロス類から漆喰などの塗り材や塗装などこちらも様々存在します。
基本としては、建て主様の好みに合った材料を使えば良いと思いますが、実は法律上や建築環境の観点など材料の選定において検討すべきことはいろいろとあります。

まずは、外部について。主な注意すべき点は3つ、耐震性と耐久性と防火性です。
耐震性については、なるべく軽い材料が構造的には有利です。それは、石やタイルなど比較的荷重のある材料を選ぶと、地震時に躯体へ掛かる負荷が大きくなり、その分耐力が必要になるからです。したがって、耐震性という観点で選ぶなら、外壁で言えば、金属系サイディングや木板などが、屋根で言えば、板金葺きやコロニアルなどの軽い材料が有利でしょうか。
次に耐久性ですが、これは言い方を変えると維持管理のことです。外部用仕上材(周辺部材も含む)は基本的には紫外線劣化をするので、一定のサイクルでメンテナンスを行なう必要があります。フリーメンテナンスにするのはなかなか難しく、あえて言えば、新築時がベストの状態ではなく、使いながら良くなっていく(風合いが出てくる)様な材料を使うことでそれに近い状態になるかもしれませんが、それでもフリーと言う訳には行かないです。従って基本的には、耐久性のある・耐用年数の長い材料を選ぶことが、維持管理を楽にします。また、将来のメンテナンスや改修工事のことを考えると「足場を組むか、組まないか」が費用の面で最も重要な課題になります。言い方を変えると、なるべく足場を組む回数を減らしてメンテナンスを行っていきたいので、屋根・外壁などの仕上材の耐用年数を同じぐらいにしておくのも1つの手かと思います。
次は防火性についてです。これは都市計画上の地域などにもよりますが、都市部や郊外など住宅が多く立ち並ぶような地域では、外壁及び屋根に防火性が求められています。これは、外壁で言えば「外部からの延焼にある時間耐えうる(燃えない)外壁の構造にしなければならない」というもので、仕上材のみに言及しているわけではなく、仕上材を含む外壁としての構造を問われています。多くの場合は、各仕上材で認定工法がありますのでご希望の仕上材に見合った工法で検討しますが、1点だけ注意事項があります。それは、高断熱住宅にしたい場合です。在来木造で言えば、柱間の充填断熱と外部側に付加断熱をして高断熱とすることがありますが、その場合の認定工法(特に45分準耐火構造)が今現在あまり存在しません。認定工法の場合、認定書に書いてある部材以外使ってはいけないことになっており、特殊な外壁材と断熱材で高断熱住宅としたい場合は、注意が必要です。

次は、内部について。主な注意すべき点は2つ、室内環境と防火性です。
屋内環境とは、ホルムアルデヒドなど(以下、VOC等)によるシックハウス症候群対策と湿度対策です。VOC等については、昨今は材料への含有量が法律により規制され以前よりは安全になっておりますが、それでもなくなっているわけではありません。また、建基法で換気設備の設置も義務付けられているため安全性は高まっていますが、それでもより安全を期すならば、VOC類含有の可能性がある塗料や接着材を使った材料はなるべく使わない方が良いでしょう。対策としては、合板類をなるべく使わないことや漆喰や珪藻土と言った自然素材を仕上材で使うことが上げられます。また珪藻土の場合は調湿性能(JIS規格)がありますので、湿度対策にも有効です。尚、一日の湿度変化を考えると、その調湿性能がある材料の表面2~3mmぐらいしか効いていないため、なるべく調湿効果を持たせたいならば、材料の厚さではなく表面積を増やすのが得策です。
最後に防火性については、基本的には火気使用室(要は、キッチン)には不燃性の材料を使う必要がありますが、一般的な国産の仕上材は準不燃材料認定などを持っているので大きく問題になることはありません。ちなみに、木板や認定のない材料を使いたい場合は、国交省告示225号を使うと火気使用室内でも(告示の範囲内で)不燃仕上以外を使うことが可能になります。

仕上材ぐらいは好きなものを使って良さそうに思いますが、意外に法律での決まりがあります。また、外装材などはいろいろな意味で周辺環境へも影響がありますので、総合的な判断で材料を選択できると良いですね。

column009 窓を考える-基本編

建物には、外部へ向かって開いている部分があります。それを「開口部」といいますが、換気の為のものだったり人が出入りする為のものだったりします。窓もその開口部の1つで、採光や通風、眺望といった目的のために設置されており、主にガラスで外と内を遮っているものを言いますが、今回はそんな窓についてのあれこれを書いていこうと思います。

まずは、窓採光について。建築基準法令(以下、建基法)上から説明しますと、居室には床面積に対してある割合以上の採光上有効(隣地との離れが関係します)な大きさの窓を設置するよう求められています。多少の例外はありますが、基本的には窓のない居室は建基法上認められておりません。これは、ある程度の敷地面積が確保されている場合はそれほど難しいことではありませんが、都市部の狭小敷地などでは意外とやっかいで、平面プランを検討するのに多大な影響を及ぼします。例えば、隣地に囲まれた場所に居室を計画すると、まず採光上必要な窓が確保出来ません。まあ、それでもいろいろなテクニックを使って建基法上有効な窓をひねり出しますが、正直この窓からの採光より照明の方が明るい、的なことは良くあります。従って、採光上有効な窓をちゃんと採光出来る様に作ろうと思うと、建築出来ないであろう土地が東京など都市部ではたくさん出来てしまうと思います。そもそも明るさの問題だけなら照明で代替出来るだろうといった意見もありますが、災害時なども考えると一概には言えないことです。また、多少隣地が迫った場所に設置する窓であっても、自然光が反射され木漏れ日のように室内に入って来ます。その良さは、私がここで書く必要もないほど皆さん体験上ご存知のことと思いますので、法律云々とは別に、どんな敷地条件であれ如何に家全体を窓からの採光で明るくするか、の工夫はすべきことかと思います。

次に、窓通風・換気について。また建基法上から説明しますと、これも採光と同じようにある割合以上の窓の設置を求められております。また詳細は省きますが、基本的には採光上有効な窓で換気も出来ることがベターです。それと換気の場合は、採光とは違い換気扇などの機械設備でも代替出来ることになっています。居室の換気だけを考えれば居室のどこに窓があってもある程度は機能すると思いますが、家全体の通風を考えるとなかなかそうもいきません。通風を考える場合は、まず風の入口と出口を適度な位置・距離を持って確保する必要があります。基本的には、その地域ごとにある卓越風を参考にして位置を決めると良いと思います。また(通)風は温度差でも起きますので、卓越風から入口を決めたらその反対側の上部に窓を設置すると風のないような日でも風通しを感じるような設えになると思います。

通風からも分かる通り、窓は開け閉めすることで簡単に建物の外と内をつなげることが出来る反面、温熱環境という面から見ると、主にガラスで出来ているために熱の移動が激しく、冬で言えば50%以上の熱が流出し、夏は70%以上の熱が流入します。最近はLow-Eガラス樹脂窓などの商品もありますので、だいぶ性能が良くなってきました。それでも例えば、APW430(YKKap)はUw値が0.9w/(㎡・K)※カタログ値ですが、一般的な断熱材である高性能グラスウール90mmのU値は0.42 w/(㎡・K)ですので、窓の方が倍以上の熱の出入りがあることになります。まあ、倍ぐらいしか違いがない所まで窓の性能が上がって来たことはすごいことなのですが、それでも壁等の断熱材は厚さを増やせばその数値はどんどん下げられますが、窓はそういう訳にもいかないことを考えると、やはり窓の設えをどうするのかが、温熱環境を考える上では重要なことかと思います。

これらのように、窓に求められる機能は多岐に渡ります。素材にしても、アルミ・樹脂・木製などいろいろと存在し、耐久性・メンテナンス性・防火性なども考慮しながら商品を決めて行かなければいけません。当たり前ですが、窓のない住宅は存在しませんので、住まう方それぞれに自分たちが求める窓の機能・性能をきちんと理解し考えるべきかと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column008 構造用面材の選び方

木造住宅の場合、地震に強い建物にするために「耐力壁」というものを設置します。
大まかにわけて「筋交」と「構造用面材」の2種類の方法がありますが、最近は構造用面材で造る方が地震に強い建物が出来ると言われています。
そんな構造用面材は構造用合板を始めとして、いくつもの種類がいまは使われています。どれを選んだらよいのか正直迷いますが、私は主に「透湿抵抗値」を基準に選んでいます。

構造用面材なのに何故?と思われるかと思いますが、耐震性能という意味では面材そのもので決まるわけではなく、トータルの考え方や面材の施工状況などによることが多く、良い悪いが簡単に決められるものではありません。また、強度を表す「壁倍率」の数字そのものを信じ、その建物に必要な耐力壁長が満たせるとすれば、どれも違いがないとも言えます。しかし、各面材で違いがある項目があります。それが、透湿抵抗値です。

昨今、一戸建て住宅の耐力壁に面材が使われていることや高断熱・高気密住宅の普及のため、住宅の気密性が上がっています。気密性が良くなること自体は悪い事ではないですが、今まで隙間から(ある意味)勝手に出入りしていた湿気が壁の中などに留まるという現象が起こります。この現象は「結露」を引き起こす原因にもなり、それは構造躯体やグラスウールなどの繊維系断熱材の劣化につながります。そのため、なるべく壁内には湿気を入れず又入ってしまった湿気を速やかに外部へ排出する必要があります。最近は、外壁通気工法が一般的になり湿気を外部へ排出し易くなってはいますが、ここで透湿抵抗の高い構造用面材を外壁側に使うとそれらの妨げになる恐れがあります。
これらのことを踏まえ、躯体性能にも影響を及ぼす可能性があることを避ける為、なるべく透湿抵抗の低い材料を使うようにしています。
参考までに、ポピュラーな構造用面材の特徴をまとめました。

 

 

基本的には、耐震性及び耐久性の向上を念頭において設計しますし、面材の壁倍率や大壁仕様や真壁仕様などの納め方、防火構造への対応、防腐防蟻への対応などその住宅ごとに考えるべき内容や重要とすべき要件が違いますので、その都度その状況に見合った面材を採用するようには心掛けています。

column007 快適性を考える

住宅に限らず建物の「居室」と言う空間には、快適性が求められるのが一般的です。
しかし、この快適性という言葉は案外曲者で、何によってその空間を「快適だ」と感じるかは人それぞれで、例えばある夏の日、窓から入る心地よい風を感じて快適だと想像する人がいれば、空調により温湿度が心地よい状態に保たれた空間を快適だと想像するもいます。きっとどちらも快適に違いないと思いますが、ではそもそも「快適性とはなにか」ということですが、結論から言えば「違和感のない空気質」のことを主に指しています。それは、丁度いい温湿度で、臭いもなく、ほこりやカビなどが舞っていない、そんな状態です。また、視覚による快適性も考えられますが、ここでは体感によるものに着目したいと思います。

では、この違和感を少し整理すると「冬の寒さ」や「梅雨のジメジメ感」「夏の蒸し暑さ」、更には「花粉症」や「PM2.5」「ホルムアルデヒドなどのシックハウス物質」などのことを指すでしょうか。
私は東京などの都市部で設計することが多いのでそれを基準に書きますが、それらの違和感をなくす方法としてエアコンや換気扇などの機械を使います。しかし、単に機械に頼ってはエネルギーをたくさん使ってしまいますので躯体の性能として、きちんと断熱し気密をします。所謂、高断熱高気密住宅ですが、そうすることによりなるべく少ないエネルギーでより安定的な空気質の空間にすることが出来ます。念の為書きますが、私は「窓を開けるな!」とは言っていません。季節の良い時には窓を開けて外気を取り入れれば良いと思いますが、いかんせん東京などで考えると窓を開けることで新鮮空気が入って来るとは限りませんし、そもそも先の違和感からも想像出来る通り、窓を開けて快適を得られる日は1年を通じてあまりないのが現状です。
先ほど私は「東京を基準に」と書きましたが、実は郊外でも「高断熱高気密」とすることに変わりはありません。自然エネルギーを使って住宅を設計しても同じことで、ある程度の高断熱高気密とすることで屋内空間の安定感が向上します。この安定感は、さらなる快適性の向上に役立ちますので「高断熱高気密を目指さないという選択肢はない」というのが私の考えです。
また、高断熱高気密とすることで、日本の住宅で主流の部分間欠暖冷房から全館令暖房へと光熱費の増加を伴わないで移行出来ますし、それはヒートショックなどの健康被害も軽減されることにも寄与しますので、そういった観点からも重要なことだと認識しています。

話しが少し変わりますが、自然エネルギーをコントロールする手法を「パッシブデザイン」と言います。私も建物の基本性能を確保したあとにパッシブデザインを検討しますが、このパッシブデザインを主とする方々は、何故か高断熱高気密を嫌います。「息苦しい」と感じることが主な理由なようですが、気密が悪いと計画換気がうまくコントロール出来ないなどの弊害もあるのですが、あまりそこには頓着がないようです。このことは見方を変えると、パッシブデザイン主流派は曖昧な感じを残したいのかなと思います。それが、自然とゆるくつながっていることになる、そんな感じでしょうか。
反対に私は、なるべく曖昧な部分をなくし、しっかりコントロール出来る状況を目指すべきと考えています。今では、温熱などの環境シミュレーションが一設計事務所レベルでも出来る様になって来ていますので、それらを駆使すべきと思っています。
ここで言えることは、パッシブデザインもそうですが、シミュレーション結果を利用することも設計手段の1つでしかないということです。「それらをどう融合するのか?」が建築士に問われ、それが結果として快適性に現れると思っています。

最後に、皆それぞれに求める快適度合いの違いがあると私は考えていますが、これはどちらが良い悪いということではありません。立地環境でも目指すべき快適性が違うと思いますし、住まう人が体験してきたコトでも快適性が違います。そもそも、私を含め「自然とつながらなくて良い」と考える方はいないと思う反面、家とは「住まう人を雨風や寒暖から守るためにある」と私は思っていますので、その観点から考えるとそれらから身を守るためにより良い方法を模索すべきと考えますが、皆さんは如何でしょうか。

column006 木材の耐久性を考える②

木材の耐久性を損なうものは、主に「害虫と菌」です。

ここでいう菌とは、木材腐朽菌のことを指します。要するにキノコ類のことですが、それらが原因で起こる木材腐朽とは、そういった菌類に木材の細胞壁を構成する「セルローズ・セミセルローズ・リグニン」が分解され組織構造が崩壊し、木材の強度が低下することです。

住宅で被害の多い木材腐朽菌は、主に「褐色腐朽菌」と「白色腐朽菌」です。
褐色腐朽菌は、セルローズとセミセルローズをほぼ同じ比率で分解します。リグニンにも作用しますが、完全には分解しないため、褐色であるリグニンの色に木材が変色します。セルローズは鉄筋コンクリートに例えると鉄筋に例えられますが、その鉄筋が分解されるため、乾燥するとセルローズの配列方向である繊維方向と垂直に割れが発生します。腐朽初期から木材の強度低下が著しく、針葉樹をよく分解します。
白色腐朽菌は、セルローズ・セミセルローズ・リグニンをほぼ同じ比率で分解する菌と、リグニンを優先的に分解する菌がいます。褐色腐朽菌とは違いリグニンが分解されるため、白色であるセルローズ・セミセルローズの色に木材が変色します。また、強度も褐色腐朽菌とは違い、重量減少に伴い徐々に低下します。広葉樹をよく分解しますが、シイタケやエノキタケなどの食用キノコはこの菌です。

木材腐朽を進行させるには、「酸素」「温度」「栄養(木材)」「水分」が必要ですが、どれか1つでも欠けると木材腐朽は発生しません。結論から言えば、壁内の水分を管理することで木材腐朽を防ぐことが出来ます。
壁内で注意する水分は主に2つです。
まず1つが、雨水の侵入です。多くは、屋根や外壁等の防水がきちんと施工されていないために起こることです。最低限として、瑕疵担保責任保険で定められている設計・施工基準を守ることが重要ですが、なるべくシンプルで効果的な納まりと適切なメンテナンスを心掛けたいです。
もう一つが、壁内結露による水分発生です。基本的には、外壁の室内側に防湿シートを張り、外気側は透湿防水シートによる外壁通気工法を採用することで防ぐことが出来ますが、近年は省エネ化による高気密・高断熱住宅が多くなり、外壁の仕様も多様化しています。しっかりとした施工をすると共に結露計算などにより理論的な確認をすることで、壁内結露のリスクを少しでも回避するようにしたいです。
また、菌の発芽には相対湿度75%以上が必要とされ、60%以下ではほとんど繁殖しませんが、使用する木材を平衡含水率である15%付近まで乾燥させることで初期リスクを少しでも下げておくことも重要です。

その他の対処法としては、耐久性の高い木材を使うことと適切な木材保存処理をすることです。
まず、単に耐久性で言えば、ヒノキやヒバが高く、スギやカラマツなどは中程度です。保存処理薬剤の浸潤度規準における耐久性樹種区分においては、ヒノキ・ヒバ・スギ・カラマツなどはD1という区分に入りますが、芯材の浸透性区分では「ヒバ→スギ→ヒノキ→カラマツ」の順で困難になって行きます。要するに、同じD1区分でも性質がけっこう違うためまったく同じとは言えませんので、参考程度に知っておくと良いかと思います。
その他、木材種の選択や薬剤処理等の基本的なことは、防蟻と変わりませんので割愛します。

最後に、耐久性は建物が完成すると見えなくなってしまう部分のことですので、設計・施工段階で適切な検討と施工を心掛ける必要があるかと思います。

column005 木材の耐久性を考える①

木材の耐久性を損なうものは、主に「害虫と菌」です。

害虫には、ヒラタキクイムシなどの甲虫や白蟻などがいますが、その中にも乾燥を好むものや湿潤を好むものなど様々な種類が存在します。
ヒラタキクイムシは、乾燥を好み湿潤状態に弱いのが特徴です。ラワンやケヤキ、ナラ等の広葉樹の辺材を加害しますが、栄養が少ない針葉樹には加害しません。したがって、構造材である桧や杉からの発生よりは複合フローリングなどの造作材からの被害が主です。

シロアリは、腸内原生生物を体に持っていて他の生物が栄養と出来ないセルロースを分解し栄養とします。次にそのシロアリを食べて栄養としている生物がいるわけですが、要するにシロアリは食物連鎖の始まりです。我々には害虫と呼ばれてしまうシロアリですが、地球環境という視点でみれば益虫です。ですから、土の中にさえ居てくれれば良いものを、わざわざ地表に出て来て悪さをするばっかりに害虫と呼ばれてしまう訳です。

国内で建築物を加害するシロアリは、地下シロアリと呼ばれるヤマトシロアリとイエシロアリ、乾材シロアリと呼ばれるアメリカカンザイシロアリが有名です。
地下シロアリはその名の通り、地下に生息し主に湿潤な材を好んで食害します。イエシロアリは温暖な地域に生息しますが、長い移動距離と大きなコロニーを持つことなどを理由に、被害が大きくなりやすいです。
アメリカカンザイシロアリは、そもそも家具などの輸入などによって日本に持ち込まれた移入種なので、被害が地域限定の側面もあります。建物への侵入方法も地下シロアリとは違い、羽アリが軒先などから屋根へ侵入し、乾燥材を食害します。

シロアリ被害を防ぐ方法はいろいろありますが、まずは侵入させないことが重要です。当たり前のようですが、浸入しなければ被害にあいません。
地下シロアリは体表の乾燥を嫌うので、浸入経路になりやすい基礎廻りの風通しを確保します。また、地中からの侵入を防ぐためにベタ基礎等を採用しますが、0.6~1.3mm程度の隙間があれば侵入を許してしまうので、基礎の打継や地中からの配管等の隙間も適宜処理する必要があります。
こうして侵入を防ぐわけですが、それでもシロアリは侵入してくるので、今度は木材が食害されないようにします。それにはまず、土台を耐蟻性が高い樹種のヒバなどの芯材にします。桧に関しては耐蟻性で言えばスギと変わりませんが、後述します耐腐朽性が高いので、桧も使われる材料です。柱も同様に、耐腐朽性・耐蟻性を考慮した材料にします。木材に気を使ったあとは、それらに薬剤処理を施します。未だ、ハウスメーカーを始め多くの会社で合成殺虫剤系の防蟻処理を施していますが、効果が3~5年で切れてしまいますのでお勧め出来ません。私の事務所では、全構造材のホウ酸処理が標準です。水に溶けるという弱点はありますが、建物が完成してしまえば構造材が雨等にさらされる心配はありませんので、施工時に配慮すれば問題ありません。ホウ酸は効果が切れることもなく、また代謝を止めて害虫を殺すため耐性を持たれることもありませんので、非常に良い防腐防蟻材だと思っています。

シロアリはどこにでもいる、と思った方が良いです。適切な処理と定期的な点検で被害の発生を抑えるようにすることが肝要です。

column004 断熱材の選び方

昨今、住宅の外皮性能が注目されていますが、その核を成すものの1つが断熱材です。断熱材とは、伝導・対流・放射による熱移動を防ぐ材料のことですが、その種類は様々です。大きくは繊維系と発砲プラスチック系に分かれますが、その中にもいくつかの種類が存在します。また、木造住宅の場合は施工方法として充填断熱か外張(付加)断熱、又はその両方があります。

まず、繊維系の代表格といえばグラスウール(以下、GW)です。安価で種類も豊富な断熱材で不燃性や吸音性にも優れているため、使用頻度も自ずと上がりシェアも高いと思います。GWは細かい繊維質中に静止空気があることで断熱性能を発揮しますが、その性能を担保するために防湿気密シートの施工が必要です。GWはこの防湿気密シートの施工がキモと言えるのですが、どのようにその性能が担保されるのかということが認識されていないためか、シート施工がずさんな現場を今でも見かけます。GWは費用対効果の良い材料ですが、性能を担保するためには高い施工精度が求められる材料という認識が必要かと思います。
GWと同じ鉱物繊維系にロックウール(以下、RW)という断熱材があります。ほとんどGWと同じような特徴ですが、違うのが耐水性に優れているという点です。したがって、何らかの理由で壁内が結露した場合も、断熱性能が維持されやすい材料です。
繊維系で施工精度を求めたいならセルローズファイバー(以下、CF)という断熱材があります。専用業者が吹き込み施工をするので精度が出ます。また、CFには調湿機能があるところも魅力の1つですが、GWと比べ多少高価な材料です。
その他、繊維系には羊毛断熱材やウッドファイバーのように天然素材を使った断熱材もありますが、高価な割に熱伝導率が優れているわけではないので、調湿性能や環境性能が良いなど付加価値に重きをおく場合に採用される傾向があると思います。

鉱物繊維系は、断熱・気密性能を確保するためにそれなりの技術が要りますが、ある意味手軽に高気密・高断熱住宅をやりたい場合は、発砲プラスチック系の吹付硬質ウレタンフォーム(以下、PUF)で断熱する方法があります。GWやCFに比べ高い断熱性能を有しつつ、現場発泡による施工のため気密性を確保しやすい特徴があります。
他に発砲プラスチック系と言えば、押出法ポリスチレンフォーム(以下、XPS)、ピーズ法ポリスチレンフォーム(以下、EPS)、フェノールフォーム(以下、PF)などがあります。基本的には、独立気泡内の空気又は空気と発泡剤(ガス)を使って断熱していますので、同じような仕組みの断熱材と言えます。しかしながらそれぞれに特徴があり、例えばXPSとPFは「発泡剤が抜けると性能が落ちる」という懸念がありますが、EPSは空気のみですのでそういった懸念はありません。その他にも、熱伝導率や透湿率・材料強度・吸水性などに違いがあり、熱伝導率にこだわるならPFがよいでしょうが、耐圧スラブ下などに敷く場合は、PFよりは材料強度があり吸水量がすくないXPSが良かったりします。参考までに、一般的な特性表を添付します。

 

 

ここまでに書いた内容でも分かるように、これが良い、という材料はありません。全ての断熱材にそれぞれ特徴があり得手不得手があります。要するに、使う側がどういう建物にしたいのか?ということを考え、目指すべき断熱性能や使用環境などを考慮し、それぞれの材料の特性を踏まえた上で選択する必要がある、ということだと思います。
私もお施主様のご要望をお聞きする前からどんな断熱材を使うかは決めていません。打合せを重ねる上で最適な材料を選択していくことになりますが、基本設計中には冷暖房負荷を検討し性能を決めていきますので、建物のボリュームを考える段階では何となく予想はしている感じです。
このあたりの話しはまた別の機会に書かせて頂ければと思います。

あなたにとっての良い断熱材を見つけて頂きたいと思います。

column003 設計事務所と工務店の違い

家を建てる場合、基本的には設計事務所・工務店・ハウスメーカーのいずれかへ依頼する必要があります。どこが良い・悪いはなくそれぞれに一長一短があり、自分にあった会社に頼むのが一番良いと思います。

例えとして、建て主に明確な家づくりへの考えがあれば、どこに依頼しても同じ家を造ることも可能だと思います。しかし、建築関係者でもないかぎり(もっと言えば、建築関係者でも)そこまで明確なものを持つことは難しく、大抵はいくつかのキーワードを持っている程度かと思います。従って、各会社はそのキーワードを聞いて家づくりをするわけですが、ここでそれぞれの会社で違いが出ますし、一長一短が現れてきます。

では、その違いや一長一短って何だろう、ということですが、今はインターネットなどで基本的な違いは調べられると思いますので、今回は私見を書ければと思います。
また、ハウスメーカーについては「工務店が全国各地で均一化された会社」ということで割り切り、「設計事務所」と「工務店」の違いに絞ってまとめさせて頂きます。

簡潔に言うと、、、
・設計事務所は、新しいことを積極的に取り入れて家を設計する
・工務店は、ポピュラーな技術を使いコストバランスをみて家を建てる
ということに尽きると思います。

もちろん、新しいことを積極的に取り入れる工務店もありますし、同じことを繰り返す設計事務所もあります。しかし、工務店が家を造ることで報酬を得ている限りコストは気になりますし、同じことを繰り返す設計事務所がポピュラーな技術を繰り返しているとは限りません。また、設計事務所とて建て主の予算を見て設計するわけでコストは気にしますが、新しい技術が高かろうが安かろうが自分の報酬には関係ないため、そこまでシビアに考えていなかったりします。(施工単価で設計報酬を決めている会社は別ですが・・)それに、工務店の気にするコストはそれらが高いか安いかだけではなく掛け率も含まれます。

分かりやすい例として、例えば断熱材を何にするか?となった時に、同じ性能なら、工務店はより安く手に入る材料を選ぶが、設計事務所は目新しさや環境に良いなど付加価値に基準をおく。設計事務所は高いと言われる所以はこういったことの積み重ねにある、と私は思っています。

まとめるとこうです。

デザインや付加価値に家づくりの基準がある建て主は設計事務所に、建物性能そのものに基準がある建て主は工務店に頼むのが基本的な選び方かと考えます。ちなみに、設計事務所に「デザイン」という項目を選んだのは、デザインを求めることも付加価値と考えるからです。かっこいい建物は一般的な納まりをしていないことが多く、お金がかかっていると思ってほぼ間違いないです。
実はここに工務店はかっこよくない、となる理由も含まれます。何故か?デザインすることは利益率が下がることに繋がるからです。また、かっこよく難しいデザインを考えても造るのが自分たちなので、納まりを知っているがゆえに一般的な方へ行きがちになります。
念のため付け加えますが、一般的ということは施工精度の均一化や防水性等の建物性能の担保につながる要因でもあるので悪いことではありません。

何度も書きますが、設計事務所と工務店で良い・悪いはありません。目指すべきことや報酬の得方が違うだけで多くの皆さんが真面目に家づくりに取り組んでいます。
なので、あなたが建て主であるならば自分の目指すべきことを知り、設計事務所や工務店の特性を知ることも家づくりの大事な要素の1つかと思いますが、皆さん如何でしょうか。

column002 耐力壁

何時何処で大きな地震が来るのか分からない日本の住宅には耐震性が求められます。
そんな耐震性の基本を成すのが「耐力壁」と言われる壁です。
通常、耐力壁と言えば、、、
1)筋交によるもの(横架材及び柱間に入れる斜めの木材等)
2)面材張りによるもの(構造用合板その他)
のどちらかのことを指します。

更に、(財)日本住宅・木材技術センター出版の解説書によると、、、
1)筋交:耐力壁の幅、最小値90cm 以上かつ階高/幅は3.5 以下
2)面材:単独耐力壁として60cm 以上かつ(高さ/幅≦5)が有効
3)おおむね2m以下に柱を設ける
と基本となる大きさなどが記されています。
また、建築基準法(以下、建基法)では建物に必要な耐力壁の数を「壁長」として長さで表しますが、耐力壁の仕様によって壁倍率なるものが決まっています。

これらは「耐力壁」の基本的な考え方ですが、実はこれ以上の決まりもありません。したがって、この決まり以外のことは実際に設計される方の(良くも悪くも)さじ加減で決まっているという実情がありますが、これらは下記するような問題をはらんでいます。

建基法に記された筋交の壁倍率は「高さ2730mm・柱間隔910mm」の筋交を強度試験した結果で定めています。しかし、実際は「高さ3000mm・柱間隔1820mm」の筋交が施工されることもあります。要するに、試験の形状と違う方法で施工が行われています。一見問題のように思われますが、角度や高さ、柱間隔に関する規定は建基法には記されていない為、法律違反ではありません。

筋交は、角度が急に(若しくは緩く)なると、負担する軸力が大きくなります。また、材が長くなるので圧縮方向に対しては更に負担が増します。
以前とある雑誌に「厚さ45mmの筋交を柱間隔910mm・1365mm・1820mm、いずれも高さ2730mmとした3種類の試験体」を強度試験した結果が掲載されていましたが、1365mmと1820mmはそれほど差がないようですが、そのどちらも910mmの約7割の強度しかないそうです。
『試験体は910mmのように筋交がねばらず、端部金物のビスが抜けたり筋交が座屈したりし、厚さ45mmの片筋交の基準強度も下回った。』とのこと。

これらのことは、前記したように建基法上は問題ありません。
しかし、先の解説書の質疑回答欄に「設計の簡素化、技術的合理性、法令上の妥当性を総合的に勘案して『筋かい耐力壁では長さ比例則が適用できる』としていますが、設計者の判断で安全側に設計することは望ましいと考えます。」とある通り、設計者は法律を遵守しつつ更に良い建物にすべく、ある意味、哲学をもって設計に臨まなくては行けない、ということではないでしょうか。

我々設計者に委ねられている責任は大きく重い、ということを改めて感じさせられます。

column001 家づくりの始まり

皆さんが家を造ろう(以下、買うを含む)と思う理由って一体何でしょうか。
家族が出来た、賃貸は家賃が勿体ない、親と一緒に暮らすことになった、など理由は様々かと思いますが、家を造ろうと思う理由に正解なんてありませんから、各々が必要性を感じた時に行動すれば良いとは思います。

しかし、いざ行動に移す段階で「どうしたらよいか分からない。」というのが多くの方が思うことではないでしょうか。そして、その方々が行うことの1つが「住宅展示場」若しくは「建売住宅」を見に行くことかと思います。
まずは現物を観てみよう、ということでしょうか。

確かに、現物を観ることで何かのインスピレーションを得て、家造りのことをより考え出す、となれば意味のあることですが「何社かの展示場の営業マンの話しを聞いて、何となく良さそうなところで造った。」みたいな話しを聞くと、何か大事なものをなくしていると感じてしまいます。

そんな私が思う、家を造ろうと思った方(以下、建て主)がまず行うべきことの1つに「どんな家が欲しいのか、考え・勉強すること」というものがあります。
「やっているよ」と思われる方も多くいらっしゃるような当たり前のことかもしれませんが、業界内にいる私には建て主が行っているそれらが物足りなく感じます。
今の時代、わざわざ住宅展示場に行かなくても、家造りに対する知識はインターネットで幾らでも得ることが出来ます。住宅に関わる雑誌も多く出ていますので、それらを見ることでも知識は得られます。正直、建築業界は分かり難いことが多く吟味が大変ですが、それでもいろいろ勉強してみると家の違いが少し分かってきます。
すると、自分の欲しい家を造ってくれそうな良い設計事務所や工務店があることを知ったり、住宅展示場へもお目当てのハウスメーカーを選んでから足を運ぶことが出来ると思います。

家造りというものは、自分が欲しい家を造ってくれる会社(人)を探すことから始まります。ここで重要なのは「欲しい家」です。やはり、家というのは何となく造っていいものではないと私は思っています。欲しい家に対するキーワードはあればあるほどいいと思います。そうすると、自分が探すべき会社も探しやすくなります。
こうして家造りの良きパートナーを探すわけですが、この会社を探すプロセスに近道はありませんし、近道をすると失敗(納得する家が造れない)も多くなると私は思っています。

私としては、本来のあり方である設計事務所をパートナーに選んで欲しいと思いますが、どこへ頼むにしても重要なのはその会社の方とフィーリングが合うか、と言うことです。こればかりは、多くの会社に足を運び会って話しを聞くしか判断方法がないと思いますが、きっと殆どの方が人生で一番高い買い物だと思いますので、その努力は惜しまないで欲しいです。
きっと、あなたに合う設計事務所や工務店、ハウスメーカーがあるはずですので、根気よく探して頂けると良いと思います。

造ってよかったと思える「自分の欲しい家」を建てましょう。