column007 快適性を考える

住宅に限らず建物の「居室」と言う空間には、快適性が求められるのが一般的です。
しかし、この快適性という言葉は案外曲者で、何によってその空間を「快適だ」と感じるかは人それぞれで、例えばある夏の日、窓から入る心地よい風を感じて快適だと想像する人がいれば、空調により温湿度が心地よい状態に保たれた空間を快適だと想像するもいます。きっとどちらも快適に違いないと思いますが、ではそもそも「快適性とはなにか」ということですが、結論から言えば「違和感のない空気質」のことを主に指しています。それは、丁度いい温湿度で、臭いもなく、ほこりやカビなどが舞っていない、そんな状態です。また、視覚による快適性も考えられますが、ここでは体感によるものに着目したいと思います。

では、この違和感を少し整理すると「冬の寒さ」や「梅雨のジメジメ感」「夏の蒸し暑さ」、更には「花粉症」や「PM2.5」「ホルムアルデヒドなどのシックハウス物質」などのことを指すでしょうか。
私は東京などの都市部で設計することが多いのでそれを基準に書きますが、それらの違和感をなくす方法としてエアコンや換気扇などの機械を使います。しかし、単に機械に頼ってはエネルギーをたくさん使ってしまいますので躯体の性能として、きちんと断熱し気密をします。所謂、高断熱高気密住宅ですが、そうすることによりなるべく少ないエネルギーでより安定的な空気質の空間にすることが出来ます。念の為書きますが、私は「窓を開けるな!」とは言っていません。季節の良い時には窓を開けて外気を取り入れれば良いと思いますが、いかんせん東京などで考えると窓を開けることで新鮮空気が入って来るとは限りませんし、そもそも先の違和感からも想像出来る通り、窓を開けて快適を得られる日は1年を通じてあまりないのが現状です。
先ほど私は「東京を基準に」と書きましたが、実は郊外でも「高断熱高気密」とすることに変わりはありません。自然エネルギーを使って住宅を設計しても同じことで、ある程度の高断熱高気密とすることで屋内空間の安定感が向上します。この安定感は、さらなる快適性の向上に役立ちますので「高断熱高気密を目指さないという選択肢はない」というのが私の考えです。
また、高断熱高気密とすることで、日本の住宅で主流の部分間欠暖冷房から全館令暖房へと光熱費の増加を伴わないで移行出来ますし、それはヒートショックなどの健康被害も軽減されることにも寄与しますので、そういった観点からも重要なことだと認識しています。

話しが少し変わりますが、自然エネルギーをコントロールする手法を「パッシブデザイン」と言います。私も建物の基本性能を確保したあとにパッシブデザインを検討しますが、このパッシブデザインを主とする方々は、何故か高断熱高気密を嫌います。「息苦しい」と感じることが主な理由なようですが、気密が悪いと計画換気がうまくコントロール出来ないなどの弊害もあるのですが、あまりそこには頓着がないようです。このことは見方を変えると、パッシブデザイン主流派は曖昧な感じを残したいのかなと思います。それが、自然とゆるくつながっていることになる、そんな感じでしょうか。
反対に私は、なるべく曖昧な部分をなくし、しっかりコントロール出来る状況を目指すべきと考えています。今では、温熱などの環境シミュレーションが一設計事務所レベルでも出来る様になって来ていますので、それらを駆使すべきと思っています。
ここで言えることは、パッシブデザインもそうですが、シミュレーション結果を利用することも設計手段の1つでしかないということです。「それらをどう融合するのか?」が建築士に問われ、それが結果として快適性に現れると思っています。

最後に、皆それぞれに求める快適度合いの違いがあると私は考えていますが、これはどちらが良い悪いということではありません。立地環境でも目指すべき快適性が違うと思いますし、住まう人が体験してきたコトでも快適性が違います。そもそも、私を含め「自然とつながらなくて良い」と考える方はいないと思う反面、家とは「住まう人を雨風や寒暖から守るためにある」と私は思っていますので、その観点から考えるとそれらから身を守るためにより良い方法を模索すべきと考えますが、皆さんは如何でしょうか。