column016 地盤と地震を考える

住宅などを建築する上で、どのような地盤に建てるのか?は非常に重要なことの1つです。それは、地盤の特性によって建物へ作用する地震による揺れ(以下、地震動)が変化するためです。
構造計算上も、地震力を検討する場合「振動特性係数/Rt」という係数に地盤の特性(硬質や軟弱など)を反映させます。また、「標準せん断力係数/Co」も地盤が軟弱な場合は高い係数をとることになっています。また、地盤の良し悪しは「硬軟」だけではなく「土質」も重要で、土の種類ごとに特性があり建物の沈下の仕方などに影響します。

土質区分には、礫質土・砂質土・粘性土・火山灰質粘性土などがあり、粒径などで区分されています。また地層区分としては、軟弱地盤であることが多い「沖積層」と、安定した地盤で沖積層よりは高台に見られる「洪積層」があります。
東京などで良く聞く「関東ローム層」は火山灰質粘性土に区分されますが、比較的良い地盤とされており、今のように地盤調査が必須ではない時代には「関東ローム層が出てくればOK」としていました。関東ローム層は、富士山や箱根が噴火した際の火山灰が堆積したものなので、東京以西にはこの層があることが多いかと思います。

ここまでは地盤の特徴などを書いてきましたが、要はこれらの情報を知る為に地盤調査をします。先程も書いたように、以前は住宅建築の規模では調査はしませんでしたが、住宅瑕疵担保履行法が出来てからは(一部例外を除いて)必須になりました。
地盤調査にはいくつかの種類がありますが、住宅建築で多い調査はスウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS試験)です。SWS試験は、地盤の硬軟と均質性を確認する小規模建築向けの建築基準法告示でも認められている調査方法で、安い費用で地盤の支持力を評価出来ます。木造2階建て程度の規模でよく行われる調査ですが、小規模建築物でも建物重量のあるRC造などで詳細な土質データが欲しい場合は、ボーリング・標準貫入試験を行います。
どちらが良い悪いはなく、各目的に適した調査を行うことになりますが、各調査で得られる情報が違うので、どの調査にするかは設計者の判断になります。

小規模建築物でしたら、これらのデータを元に建物基礎の形状や地盤改良の必要性を判断し、上部の耐震性能を決めて行けば良いですが、60mを超えるような超高層建築物の場合はもっと複雑です。私は構造設計者ではないので詳細の説明は出来ませんが、超高層建築物は地震による影響が大きいので、地盤の卓越周期や表層地盤増幅率なども調査し、建物に作用する地震動をより詳細に判断するなどが必要になります。
地盤の特性によって、地震動の大きさは変化します。また、先の熊本地震では「キラーパルス」なる言葉が話題になりましたが、地震動の大きさ以外の要素でも建築物に及ぼす影響が変化します。地震動は、実に多種多様な要素が絡み合って建築物に作用しますので、それに見合った構造設計をする必要がありますが、それは戸建住宅でも超高層建築物でも変わりません。

実際は、戸建住宅規模では「どんな地震動が作用するのか?」などの超高層建築物レベルの精細な検討は不要かもしれませんが、例えば表層地盤増幅率については「地震ハザードステーション」で確認が出来ますので、建築地の地盤特性の1つの情報として知っておくのも良いかもしれません。

column014 四号建築物を考える

非常に残念なことですが、大地震が来る度に何かしらの建物被害が報告されます。それは、築何十年という耐震性の低い多くの住宅が今なお使われているので、ある所では致し方ないことかもしれませんが、その原因として「4号建築物」や「耐震等級」なる言葉が世間を賑やかせたりします。
ここで、簡単にそれらの言葉を説明します。

始めに「4号建築物」について。これは、建築基準法6条第1項第1~3号までの規模にならない建築物のことを指していまして、建築基準法(以下、建基法)には第4号を「前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画~(以下続く。)」という表現で書かれていますが、この建基法の条文をとって4号建築物と呼びます。1つ例を上げると、延床面積500㎡以下の木造二階建ての建築物は4号建築物になります。要は、多くの2階建て木造住宅はそのカテゴリーに入ります。

次に「耐震等級」について。これは、品確法の性能表示基準の1つで「構造の安定に関すること」という評価で求められている「地震に対する構造躯体の強度レベル」のことを指しています。建基法に定めのある構造などの規定を満たしているものを「等級1」として、検討する地震力を1.25倍にしたものを「等級2」、1.5倍を「等級3」としています。要は、等級が上がるほど地震に強い建物になるということです。

ここまででは、何故それらの言葉が賑やかになるのか疑問だと思いますが、四号建築物に対する構造耐力の基準を知ると少し分かってきます。
まず四号建築物は、構造計算に依らないで建物を建築することが出来ます。これは「構造耐力を検討しない」ということではなく、建基法の「仕様規定」に適合させる必要があり、壁量設計により地震力や耐風力に対する必要壁量を計算し、耐力壁をバランス良く設置することによって構造の安全性を担保させることを指します。仕様規定自体は建基法に則っているので問題はありませんが、構造に疎い意匠設計者でも出来てしまうことに一抹の不安があります。それでも、構造的な問題が少ない真四角の総二階建てなどなら良いでしょうが、実際はそのような建物ばかりではなく、以前とある雑誌に設計者の知識不足が起因と思われる記事が載っていました。
その記事では、関東地方の地場工務店がプレカット工場に渡した4号建築物の図面から、100件を無作為抽出して構造計算(許容応力度計算)を実施したところ、設計応力が許容応力を上回る「エラー」が全ての事例に発生していた、とのことでした。全てにエラーがあったということに驚いたのですが、その主たる原因が、柱直下率(梁上耐力壁率※梁下に柱がない状態を含む)の低さと吹抜けなどによる水平剛性不足です。これは、仕様規定による設計では対応出来ない項目で、設計者の知識と経験が如実に表れます。

話しをまとめると「四号建築物は構造計算による検討が行われていない(可能性がある)ので、構造的に問題が起きることがあるし、更にそれが原因と疑われることで地震により建物が倒壊することがある」ということです。また、仕様規定による建物のことを「耐震等級1」と表現していることが多く(詳細は違うが、ここでの説明は割愛)これらの言葉が大地震の度に世間を賑やかすことになります。
ちなみに、耐震等級が上がると水平構面の検討が必要になり、構造計算に依らないものだとしても先の懸念事項が低減されることになります。
建基法は、あくまで最低限の基準です。それを遵守することは当然ですが、その先の構造耐力を一建築士としてどう考えて行くのか?が非常に重要になると思っています。
弊社の場合は、全棟を構造設計者による構造計算(許容応力度計算)を最低限の検討としていますが、皆さんは如何でしょうか。

column008 構造用面材の選び方

木造住宅の場合、地震に強い建物にするために「耐力壁」というものを設置します。
大まかにわけて「筋交」と「構造用面材」の2種類の方法がありますが、最近は構造用面材で造る方が地震に強い建物が出来ると言われています。
そんな構造用面材は構造用合板を始めとして、いくつもの種類がいまは使われています。どれを選んだらよいのか正直迷いますが、私は主に「透湿抵抗値」を基準に選んでいます。

構造用面材なのに何故?と思われるかと思いますが、耐震性能という意味では面材そのもので決まるわけではなく、トータルの考え方や面材の施工状況などによることが多く、良い悪いが簡単に決められるものではありません。また、強度を表す「壁倍率」の数字そのものを信じ、その建物に必要な耐力壁長が満たせるとすれば、どれも違いがないとも言えます。しかし、各面材で違いがある項目があります。それが、透湿抵抗値です。

昨今、一戸建て住宅の耐力壁に面材が使われていることや高断熱・高気密住宅の普及のため、住宅の気密性が上がっています。気密性が良くなること自体は悪い事ではないですが、今まで隙間から(ある意味)勝手に出入りしていた湿気が壁の中などに留まるという現象が起こります。この現象は「結露」を引き起こす原因にもなり、それは構造躯体やグラスウールなどの繊維系断熱材の劣化につながります。そのため、なるべく壁内には湿気を入れず又入ってしまった湿気を速やかに外部へ排出する必要があります。最近は、外壁通気工法が一般的になり湿気を外部へ排出し易くなってはいますが、ここで透湿抵抗の高い構造用面材を外壁側に使うとそれらの妨げになる恐れがあります。
これらのことを踏まえ、躯体性能にも影響を及ぼす可能性があることを避ける為、なるべく透湿抵抗の低い材料を使うようにしています。
参考までに、ポピュラーな構造用面材の特徴をまとめました。

 

 

基本的には、耐震性及び耐久性の向上を念頭において設計しますし、面材の壁倍率や大壁仕様や真壁仕様などの納め方、防火構造への対応、防腐防蟻への対応などその住宅ごとに考えるべき内容や重要とすべき要件が違いますので、その都度その状況に見合った面材を採用するようには心掛けています。

column006 木材の耐久性を考える②

木材の耐久性を損なうものは、主に「害虫と菌」です。

ここでいう菌とは、木材腐朽菌のことを指します。要するにキノコ類のことですが、それらが原因で起こる木材腐朽とは、そういった菌類に木材の細胞壁を構成する「セルローズ・セミセルローズ・リグニン」が分解され組織構造が崩壊し、木材の強度が低下することです。

住宅で被害の多い木材腐朽菌は、主に「褐色腐朽菌」と「白色腐朽菌」です。
褐色腐朽菌は、セルローズとセミセルローズをほぼ同じ比率で分解します。リグニンにも作用しますが、完全には分解しないため、褐色であるリグニンの色に木材が変色します。セルローズは鉄筋コンクリートに例えると鉄筋に例えられますが、その鉄筋が分解されるため、乾燥するとセルローズの配列方向である繊維方向と垂直に割れが発生します。腐朽初期から木材の強度低下が著しく、針葉樹をよく分解します。
白色腐朽菌は、セルローズ・セミセルローズ・リグニンをほぼ同じ比率で分解する菌と、リグニンを優先的に分解する菌がいます。褐色腐朽菌とは違いリグニンが分解されるため、白色であるセルローズ・セミセルローズの色に木材が変色します。また、強度も褐色腐朽菌とは違い、重量減少に伴い徐々に低下します。広葉樹をよく分解しますが、シイタケやエノキタケなどの食用キノコはこの菌です。

木材腐朽を進行させるには、「酸素」「温度」「栄養(木材)」「水分」が必要ですが、どれか1つでも欠けると木材腐朽は発生しません。結論から言えば、壁内の水分を管理することで木材腐朽を防ぐことが出来ます。
壁内で注意する水分は主に2つです。
まず1つが、雨水の侵入です。多くは、屋根や外壁等の防水がきちんと施工されていないために起こることです。最低限として、瑕疵担保責任保険で定められている設計・施工基準を守ることが重要ですが、なるべくシンプルで効果的な納まりと適切なメンテナンスを心掛けたいです。
もう一つが、壁内結露による水分発生です。基本的には、外壁の室内側に防湿シートを張り、外気側は透湿防水シートによる外壁通気工法を採用することで防ぐことが出来ますが、近年は省エネ化による高気密・高断熱住宅が多くなり、外壁の仕様も多様化しています。しっかりとした施工をすると共に結露計算などにより理論的な確認をすることで、壁内結露のリスクを少しでも回避するようにしたいです。
また、菌の発芽には相対湿度75%以上が必要とされ、60%以下ではほとんど繁殖しませんが、使用する木材を平衡含水率である15%付近まで乾燥させることで初期リスクを少しでも下げておくことも重要です。

その他の対処法としては、耐久性の高い木材を使うことと適切な木材保存処理をすることです。
まず、単に耐久性で言えば、ヒノキやヒバが高く、スギやカラマツなどは中程度です。保存処理薬剤の浸潤度規準における耐久性樹種区分においては、ヒノキ・ヒバ・スギ・カラマツなどはD1という区分に入りますが、芯材の浸透性区分では「ヒバ→スギ→ヒノキ→カラマツ」の順で困難になって行きます。要するに、同じD1区分でも性質がけっこう違うためまったく同じとは言えませんので、参考程度に知っておくと良いかと思います。
その他、木材種の選択や薬剤処理等の基本的なことは、防蟻と変わりませんので割愛します。

最後に、耐久性は建物が完成すると見えなくなってしまう部分のことですので、設計・施工段階で適切な検討と施工を心掛ける必要があるかと思います。

column005 木材の耐久性を考える①

木材の耐久性を損なうものは、主に「害虫と菌」です。

害虫には、ヒラタキクイムシなどの甲虫や白蟻などがいますが、その中にも乾燥を好むものや湿潤を好むものなど様々な種類が存在します。
ヒラタキクイムシは、乾燥を好み湿潤状態に弱いのが特徴です。ラワンやケヤキ、ナラ等の広葉樹の辺材を加害しますが、栄養が少ない針葉樹には加害しません。したがって、構造材である桧や杉からの発生よりは複合フローリングなどの造作材からの被害が主です。

シロアリは、腸内原生生物を体に持っていて他の生物が栄養と出来ないセルロースを分解し栄養とします。次にそのシロアリを食べて栄養としている生物がいるわけですが、要するにシロアリは食物連鎖の始まりです。我々には害虫と呼ばれてしまうシロアリですが、地球環境という視点でみれば益虫です。ですから、土の中にさえ居てくれれば良いものを、わざわざ地表に出て来て悪さをするばっかりに害虫と呼ばれてしまう訳です。

国内で建築物を加害するシロアリは、地下シロアリと呼ばれるヤマトシロアリとイエシロアリ、乾材シロアリと呼ばれるアメリカカンザイシロアリが有名です。
地下シロアリはその名の通り、地下に生息し主に湿潤な材を好んで食害します。イエシロアリは温暖な地域に生息しますが、長い移動距離と大きなコロニーを持つことなどを理由に、被害が大きくなりやすいです。
アメリカカンザイシロアリは、そもそも家具などの輸入などによって日本に持ち込まれた移入種なので、被害が地域限定の側面もあります。建物への侵入方法も地下シロアリとは違い、羽アリが軒先などから屋根へ侵入し、乾燥材を食害します。

シロアリ被害を防ぐ方法はいろいろありますが、まずは侵入させないことが重要です。当たり前のようですが、浸入しなければ被害にあいません。
地下シロアリは体表の乾燥を嫌うので、浸入経路になりやすい基礎廻りの風通しを確保します。また、地中からの侵入を防ぐためにベタ基礎等を採用しますが、0.6~1.3mm程度の隙間があれば侵入を許してしまうので、基礎の打継や地中からの配管等の隙間も適宜処理する必要があります。
こうして侵入を防ぐわけですが、それでもシロアリは侵入してくるので、今度は木材が食害されないようにします。それにはまず、土台を耐蟻性が高い樹種のヒバなどの芯材にします。桧に関しては耐蟻性で言えばスギと変わりませんが、後述します耐腐朽性が高いので、桧も使われる材料です。柱も同様に、耐腐朽性・耐蟻性を考慮した材料にします。木材に気を使ったあとは、それらに薬剤処理を施します。未だ、ハウスメーカーを始め多くの会社で合成殺虫剤系の防蟻処理を施していますが、効果が3~5年で切れてしまいますのでお勧め出来ません。私の事務所では、全構造材のホウ酸処理が標準です。水に溶けるという弱点はありますが、建物が完成してしまえば構造材が雨等にさらされる心配はありませんので、施工時に配慮すれば問題ありません。ホウ酸は効果が切れることもなく、また代謝を止めて害虫を殺すため耐性を持たれることもありませんので、非常に良い防腐防蟻材だと思っています。

シロアリはどこにでもいる、と思った方が良いです。適切な処理と定期的な点検で被害の発生を抑えるようにすることが肝要です。

column002 耐力壁

何時何処で大きな地震が来るのか分からない日本の住宅には耐震性が求められます。
そんな耐震性の基本を成すのが「耐力壁」と言われる壁です。
通常、耐力壁と言えば、、、
1)筋交によるもの(横架材及び柱間に入れる斜めの木材等)
2)面材張りによるもの(構造用合板その他)
のどちらかのことを指します。

更に、(財)日本住宅・木材技術センター出版の解説書によると、、、
1)筋交:耐力壁の幅、最小値90cm 以上かつ階高/幅は3.5 以下
2)面材:単独耐力壁として60cm 以上かつ(高さ/幅≦5)が有効
3)おおむね2m以下に柱を設ける
と基本となる大きさなどが記されています。
また、建築基準法(以下、建基法)では建物に必要な耐力壁の数を「壁長」として長さで表しますが、耐力壁の仕様によって壁倍率なるものが決まっています。

これらは「耐力壁」の基本的な考え方ですが、実はこれ以上の決まりもありません。したがって、この決まり以外のことは実際に設計される方の(良くも悪くも)さじ加減で決まっているという実情がありますが、これらは下記するような問題をはらんでいます。

建基法に記された筋交の壁倍率は「高さ2730mm・柱間隔910mm」の筋交を強度試験した結果で定めています。しかし、実際は「高さ3000mm・柱間隔1820mm」の筋交が施工されることもあります。要するに、試験の形状と違う方法で施工が行われています。一見問題のように思われますが、角度や高さ、柱間隔に関する規定は建基法には記されていない為、法律違反ではありません。

筋交は、角度が急に(若しくは緩く)なると、負担する軸力が大きくなります。また、材が長くなるので圧縮方向に対しては更に負担が増します。
以前とある雑誌に「厚さ45mmの筋交を柱間隔910mm・1365mm・1820mm、いずれも高さ2730mmとした3種類の試験体」を強度試験した結果が掲載されていましたが、1365mmと1820mmはそれほど差がないようですが、そのどちらも910mmの約7割の強度しかないそうです。
『試験体は910mmのように筋交がねばらず、端部金物のビスが抜けたり筋交が座屈したりし、厚さ45mmの片筋交の基準強度も下回った。』とのこと。

これらのことは、前記したように建基法上は問題ありません。
しかし、先の解説書の質疑回答欄に「設計の簡素化、技術的合理性、法令上の妥当性を総合的に勘案して『筋かい耐力壁では長さ比例則が適用できる』としていますが、設計者の判断で安全側に設計することは望ましいと考えます。」とある通り、設計者は法律を遵守しつつ更に良い建物にすべく、ある意味、哲学をもって設計に臨まなくては行けない、ということではないでしょうか。

我々設計者に委ねられている責任は大きく重い、ということを改めて感じさせられます。