column015 設計者の区分を考える

先日のこと、一般の方とお話しをしている際に「えっ、意匠設計者って何ですか?」と質問を受けました。私としては、特別なことではなくその言葉を使ったのですが、まさかそれについて質問をされるとは思っていませんでした。いつも一般の方とお話しをする時は、分かりにくい専門用語を使わないように気をつけていましたが、まだまだ配慮が足りませんでした。
そんな出来事があったこともあり、今日は設計者のあれこれについて少し書かせて頂きます。

それでは、そもそも設計者とは何なのかを、建築基準法(以下、建基法)の観点を交えながら簡単にご説明致します。
まずは、建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書を「設計図書」と言いますが、それらを作成することが「設計」です。また、その設計や工事監理(工事が設計図書の通り実施されているかいないかを確認すること)その他の業務を行う者を「建築士」と言いまして、建基法の資格者になります。建築士の種別として「一級、二級、木造」の三種類がありますが、簡単に言うと従事出来る業務の規模が違います。
要は、建築士が行う業務の1つである設計図書を作成する者を「設計者」と呼び、工事監理についても同じでそれらを行う者を「工事監理者」と呼びます。
従いまして、設計者とは建築士の中でより業務内容にフォーカスした呼び名だと思って頂ければと思います。

設計者とは、設計する者のことを言いますが、設計にはいくつか種類がありまして、それが「意匠設計」と「構造設計」と「設備設計」です。

構造設計とは、伏図・構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書を設計することです。住宅などの小規模建築物でも、建基法にある技術的基準に適合していることを構造計算によって確かめなければいけませんが、それらの設計を行う者が構造設計者となります。
ここで問題になるのが、先のコラム(column014)でも書きましたが四号建築物の扱いです。四号建築物は構造計算に依らず建築することが出来るので、その建物には構造設計者が存在しないことになりますので、誰かが代わりをすることになります。

設備設計とは、主に建築設備に関する設計図書を設計することです。建築設備とは、電気・ガス・給排水などのインフラ系設備に始まり、換気空調や消火、エレベータなどの設備を言いますが、それらの平面図や構造詳細図などの設計を行う者が設備設計者となります。尚、設備設計に関しては、構造設計とは違い「延床面積が2,000㎡を超える建築物の建築設備に係る設計を行う場合においては、建築設備士(建築設備の専門家)の意見を聞くよう努める」となっておりますので、例えば住宅に関しては建築設備士が係ることは一般的にはありません。

いよいよ最後に意匠設計についてです。
始めの「えっ、意匠設計者って何ですか?」の答えは、「構造設計図書と設備設計図書以外の設計図書を設計する者」のことになります。建築設計においてキーパーソンとなるのが意匠設計者で、建築物のトータルデザインを行います。
意匠設計者の役割は多岐にわたり、お客様との打合せを重ね希望・要望などをくみ取り、実用的にあるいは美的にその建物をデザインすることに始まり、構造設計・設備設計のとりまとめ、建築確認などの申請業務、更には工事監理に至るまで、総合的に取りまとめて行く事を担います。
一戸建ての住宅などのお施主様がお会いになる設計者は、ほぼ意匠設計者です。それが呼称として「建築士」や「建築家」になったりするだけです。

意匠設計者は、お施主様のご希望などの情報を基に、設計する建築物の方向性を考え決定します。従いまして、その建築物の出来栄えは、構造設計者や設備設計者などの技術的な裏付けが有ってのことは当然ですが、意匠設計者の知識や経験あるいはマネージメント力で決まってしまうと言っても過言ではありませんので、とても重要なポジションです。

column014 四号建築物を考える

非常に残念なことですが、大地震が来る度に何かしらの建物被害が報告されます。それは、築何十年という耐震性の低い多くの住宅が今なお使われているので、ある所では致し方ないことかもしれませんが、その原因として「4号建築物」や「耐震等級」なる言葉が世間を賑やかせたりします。
ここで、簡単にそれらの言葉を説明します。

始めに「4号建築物」について。これは、建築基準法6条第1項第1~3号までの規模にならない建築物のことを指していまして、建築基準法(以下、建基法)には第4号を「前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画~(以下続く。)」という表現で書かれていますが、この建基法の条文をとって4号建築物と呼びます。1つ例を上げると、延床面積500㎡以下の木造二階建ての建築物は4号建築物になります。要は、多くの2階建て木造住宅はそのカテゴリーに入ります。

次に「耐震等級」について。これは、品確法の性能表示基準の1つで「構造の安定に関すること」という評価で求められている「地震に対する構造躯体の強度レベル」のことを指しています。建基法に定めのある構造などの規定を満たしているものを「等級1」として、検討する地震力を1.25倍にしたものを「等級2」、1.5倍を「等級3」としています。要は、等級が上がるほど地震に強い建物になるということです。

ここまででは、何故それらの言葉が賑やかになるのか疑問だと思いますが、四号建築物に対する構造耐力の基準を知ると少し分かってきます。
まず四号建築物は、構造計算に依らないで建物を建築することが出来ます。これは「構造耐力を検討しない」ということではなく、建基法の「仕様規定」に適合させる必要があり、壁量設計により地震力や耐風力に対する必要壁量を計算し、耐力壁をバランス良く設置することによって構造の安全性を担保させることを指します。仕様規定自体は建基法に則っているので問題はありませんが、構造に疎い意匠設計者でも出来てしまうことに一抹の不安があります。それでも、構造的な問題が少ない真四角の総二階建てなどなら良いでしょうが、実際はそのような建物ばかりではなく、以前とある雑誌に設計者の知識不足が起因と思われる記事が載っていました。
その記事では、関東地方の地場工務店がプレカット工場に渡した4号建築物の図面から、100件を無作為抽出して構造計算(許容応力度計算)を実施したところ、設計応力が許容応力を上回る「エラー」が全ての事例に発生していた、とのことでした。全てにエラーがあったということに驚いたのですが、その主たる原因が、柱直下率(梁上耐力壁率※梁下に柱がない状態を含む)の低さと吹抜けなどによる水平剛性不足です。これは、仕様規定による設計では対応出来ない項目で、設計者の知識と経験が如実に表れます。

話しをまとめると「四号建築物は構造計算による検討が行われていない(可能性がある)ので、構造的に問題が起きることがあるし、更にそれが原因と疑われることで地震により建物が倒壊することがある」ということです。また、仕様規定による建物のことを「耐震等級1」と表現していることが多く(詳細は違うが、ここでの説明は割愛)これらの言葉が大地震の度に世間を賑やかすことになります。
ちなみに、耐震等級が上がると水平構面の検討が必要になり、構造計算に依らないものだとしても先の懸念事項が低減されることになります。
建基法は、あくまで最低限の基準です。それを遵守することは当然ですが、その先の構造耐力を一建築士としてどう考えて行くのか?が非常に重要になると思っています。
弊社の場合は、全棟を構造設計者による構造計算(許容応力度計算)を最低限の検討としていますが、皆さんは如何でしょうか。